2007 年末,MRI 用肝特異性造影剤としてEOB・プリモビスト(以下,プリモビスト:バイエル薬品)が上市され,MRI による肝診断に血流診断と肝機能診断,および胆汁産生能診断が可能というユニークな造影MRI が出現することとなった。このプリモビスト造影MRI により,従来の肝特異性造影剤であるSPIO(superparamagnetic iron oxide:超常磁性酸化鉄)造影MRI は不要になるとの議論も耳にするようになった。また,内科の先生方からは,ソナゾイド造影超音波検査でほぼSPIO 造影MRI と同等の画像を得られることから,やはりSPIO 造影MRIは不要との意見も承る。
  しかしながら,現在SPIO 造影MRI に唯一使用可能であるリゾビスト(日本シエーリング:現バイエル薬品)は,もともとわが国で開発された薬剤であり,わが国が育ててきた造影剤である1)。プリモビスト造影MRIの出現による不要論に関しては,核医学の世界でも従来から網内系造影剤と肝胆道系造影剤とは立派に併存していることから,SPIO は当然必要であると考えられる。また,ソナゾイド造影超音波検査による不要論に対しては,超音波とMRI では相補的な役割を果たすことが多いことから,完全に不要とは結論し難いと考えている。さらに,リゾビストのクラスタリングを観察することにより,Kupff er細胞機能に関し,SPIO造影MRIはユニークな観点からの診断が可能であり,ソナゾイド造影超音波が完全に置き換われるかどうかは疑問が残る。これらに加えて,血液プール造影剤としてのSPIO の有用性は,他のプリモビストやソナゾイドには類を見ない効用であるし,オフラベルでの使用とはなるが,脾臓や骨髄の造影剤としての魅力も捨て難く,定量的評価への希望も残されている。
  本稿では,これらに対する考え方を整理し,現時点でのSPIO 造影MRIを有効に活用する方法を考えるとともに,最もSPIO造影MRIの情報を多く得られ,かつ,最短の時間で検査を終了できる撮像法を考えてみたい。

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