Dixon 法は,水,脂肪分離画像を得る方法として1980年代半ばに提唱され,脂肪信号抑制画像を得る手段とされた1)。原法は2 つの異なるTE を用いたスピンエコー(SE)法で,撮像時間が長く,磁場均一性の影響を受けやすいため脂肪抑制法の第一選択とはなりにくかった。そのほかの脂肪抑制法として,周波数選択励起による脂肪信号抑制法,脂肪のT1値に基づくshort tau inversion recovery(STIR),水周波数選択励起による方法やこれらの組み合わせがあり,脂肪の存在診断や造影剤併用の際のコントラスト増強のために選択使用されてきた2)〜 4)。い
ずれも,パラレルイメージングなど高速撮像法の併用により,撮像時間は短縮されている。
  近年,3D-T1強調像であるLiver Acceleration Volume Acquisition(LAVA)法が.幹部を中心に使用され,SNRも十分高く,static imageとして2 D-FSPGR法に置き換わるレベルにある5),6)。現在,この方法にDixon 法を取り入れ,水画像,脂肪画像の再構成に対応できる撮像法が臨床機で使用可能となっている〔Multi-Echo with 2-point Dixon Reconstruction for Decomposition of Aqua/Lipid(MEDAL),あるいはLAVA-Flex〕7)。また,3 point Dixon法であるIterative Decomposition of water/fat using Echo Asymmetry and Least-squares estimation(IDEAL)を使用すると,磁場の不均一性が目立つ領域でも良好な脂肪抑制画像を得ることができる8)〜 10)。現在では,グラディエントエコー(GRE)法,SE 法の両者に適用可能で,フェイズドアレイコイルやボディコイルなど使用コイルにも依存しない自由度の高い方法となっている。
  本稿では,2 point Dixon法のMEDAL,3 point Dixon 法のIDEAL に基づく水,脂肪分離画像法の原理,臨床応用について述べる。なお,本稿で提示するシーケンスはGE 社製1.5T MRI装置を用いている。

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