現在,世界一の長寿国であるわが国では,急速な高齢化により少なくとも180万人以上の認知症患者がいると考えられており,医学的のみならず社会的にも大きな問題となっている1)。この認知症を来す原因疾患として,1990年以前のわが国では脳血管性認知症が多いと言われてきたが,最近では欧米と同様にアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)が大半を占めるようになってきた。さらに,脳血管性認知症とADの二大原因と並んで,非アルツハイマー型変性認知症という疾患が提唱されている。この非アルツハイマー型変性認知症には,レビー小体型認知症(dementia with Lewy body:DLB),ピック病を含む前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD),皮質基底核変性症(corticobasal degenaeration:CBD)などさまざまなものがある2)。
近年,新たな治療薬が開発されるなど,アルツハイマー型認知症では早期診断が重要となり,そのためアルツハイマー型認知症に類似した症状を呈する各疾患との鑑別診断など精度の高い画像診断技術が必要となっている3)。これに対し,全脳領域を客観的に検索する方法としてstatistical parametric mapping(SPM)法4),three dimensional-stereotactic surface projections(3D-SSP)法5),easy Z-score imaging system(eZIS)法6)などの統計学的画像解析法が開発され,脳血流でのpositron emission computed tomography(PET)やsingle photon emission computed tomography(SPECT)の解析に利用されている。これらの解析は,被検者のSPECT,PET画像を標準脳図譜上に変換して脳の形を統一化し,正常データベースと同一ピクセル間で比較解析することで,脳血流の低下部位を客観的かつ統計学的に描出する方法である。これらの統計学的脳機能解析の開発によって,読影者の違いによる影響を減らすことが可能であり,病変部位の三次元的な広がりや程度の視覚的な評価が容易となった7)。
本稿では,この統計学的脳機能解析(3D-SSP法およびeZIS法)の基礎的な概念から,それぞれの技術的な課題および展望について述べる。
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