肺がんは全世界での悪性腫瘍による死亡原因のうち最も多い疾患であり,なお増加しつつある1)。多くの肺がんは進行した状態で発見され,診断後の5年生存率は10%未満となっている2),3)。約1/4が早期に発見され手術が検討される4)。一方で,肺は肝に次いで2番目に転移性腫瘍が生じる臓器である2),5)。肺転移を来す悪性腫瘍としては,乳がん,大腸がん,腎がん,子宮がん,前立腺がん,頭頸部がん,肉腫などがよく知られている。手術と化学療法が一般的な治療であるが,すべての患者で可能なわけではない。そのほかの局所治療としては,放射線療法,化学塞栓療法,熱凝固療法などがある。
  ラジオ波焼灼療法(RFA)は,最近では原発性,転移性肺腫瘍の両者に対する治療として多くの施設で認められつつある6)〜8)。しかし,本治療は健康保険未収載の手技であり,薬事法上の適応外使用に該当する。これまでは大学病院などの限られた施設で高度先進医療に認められていたが,それ以外の施設では原則自費診療で行われてきたようである。われわれも原則,自費診療として十分なインフォームド・コンセントのもとに治療を施行してきた。高度先進医療が認められていた施設でも,時限的先進医療としての保険診療との併用が2008年3月をもって終了し,厚生労働省医政局研究開発振興課から臨床的な使用確認試験を行う旨の通達が出され(2007年8月),がん治療におけるインターベンショナル・ラジオロジー(IVR)の多施設臨床試験組織JIVROSG(Japan Interventional Radiology in Oncology Study Group:グループ代表者・国立がんセンター中央病院 荒井保明)により臨床試験を行うこととなった9)。欧米では,多施設共同研究による臨床試験"The RUPTURE study"が行われ,すでに報告されている。
  肺腫瘍に対するRFAについては,2004年ごろまでには数例の報告や初期段階での報告10)が主体であったが,最近になって,多症例での中長期成績を検討した論文が多く発表されるようになっている6)〜8),11)〜13)。
  われわれの施設では,2003年から肺腫瘍に対してRFAを行ってきており,総患者数は61人で治療した腫瘍数は延べ103病変である。本稿では,これらの経験をもとに文献的考察を加え,実際の方法,成績,今後の問題点などについて述べたい。

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