はじめに
大腸は小腸に連続する結腸と,その続きで仙骨上端から肛門までの直腸とで構成される。2007年の死亡数では大腸がんは肺・胃に次いで3位で,2003年の罹患数では約10万人と,胃に次いで2 位であった。
大腸がんの術後再発率を検討すると,結腸がんと比較して直腸がんの方が高くなっている。特に直腸がんでは,局所再発の割合が結腸がんに比べて3倍以上高率であった。直腸がんの骨盤内局所再発率は近年,術式や手術操作の改良により低下してきているが,現在でも手術後5〜20%に再発は見られている。
これらの再発病巣に対する治療は外科的切除が第一選択であるが,治癒切除不能となることが多く,さらに治癒切除を施行するためには,骨盤内臓全摘術など大きい侵襲の手術が必要となることが多かった。そのため,X 線治療等の放射線治療が選択されることが多かったが,従来のX線照射では50%生存期間が12か月,3年生存率10%前後とする報告が多く,さらに最近では,抗がん剤である5-FU などを中心とする放射線化学療法が行われるようになってきたが,それでも局所制御効果は20%程度と,満足すべき数字ではない。放射線抵抗性である腺癌系に対して,抗腫瘍効果が高い重粒子線を直腸がん術後再発に応用し,再発病巣に線量を集中して照射を行えば,患者に過大な負担をかけることなく治療成績を向上させることができる可能性があると考えられた。