“エビデンス”は,証拠あるいは根拠と訳され,診療医療分野では科学的根拠あるいは臨床結果に基づく医療という意味で,EBM(evidence-based medicine)という略語が活用されている。ここで扱われる科学的根拠あるいは臨床結果とは,良心的に,明確かつ思慮深く活用する最新最良の医学知見を示している。
“ガイドライン”は,指標・指針・誘導指標・指導目標と訳され,一般的には,組織・団体における個人または全体の行動(政府における政策など)に関して,守るのが好ましいとされる規範(ルール,マナー)やめざすべき目標などを明文化し,その行動に具体的な方向性を与えたり,時には何らかの“縛り”を与えたりするものである。診療におけるガイドラインとは,適切かつレベルの高い医療をバラツキなく広く行っていくための指針を示す。この指針は,網羅的かつ包括的に収集された文献を各分野の専門家が十分に吟味して整理し,意見交換を経た後に推奨が得られた科学的根拠に基づく体系的なものでなければならない。さらに,この指針は一般に公開され,広く臨床家の意見を集約し改善を重ねていくのもので,さらには,時々刻々と変遷していく科学的根拠にも対応したものでなければならない。 本稿では,2007年6月に2004〜2006年度日本医学放射線学会および日本放射線科専門医会・医会合同ガイドライン委員会(JRS/JCR合同ガイドライン委員会:興梠征典委員長)によって作成され,公開されている『エビデンスに基づく画像診断ガイドライン-2007』1)の,特に磁気共鳴画像法(MRI)に関するものについて概説していく。