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MRI  MRI

GEヘルスケア・ジャパン
国内初のMRエラストグラフィ技術 「MR Touch」を提供開始
〜「沈黙の臓器」の状態を患者負担少なく,高い精度で観察〜

(2012/8/30)

●希望小売価格
6,300万円(税込)
●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン(株)
コミュニケーション本部
ブランチャード美津子/松井亜起
TEL 0120-202-021 FAX 042-585-5360
Mail: mitsuko.blanchard@ge.com / aki.matsui@ge.com
www.gehealthcare.co.jp

 

医療課題の解決に取り組むヘルスケアカンパニー,GEヘルスケア・ジャパン(株)は8月30日(木),国内初となる,非侵襲的な肝疾患の進行度診断を可能にするMRI(磁気共鳴断層撮影装置)用の新技術「MR Touch(エムアール・タッチ)」を,全国の大学病院や地域基幹病院,研究機関,肝疾患診療連携拠点病院を主対象に提供開始する。

MR Touch本体 左:アクティブ・ドライバー/右:パッシブ・ドライバー

MR Touchは,外部から与えられた振動をもとに,MRIで体内組織の弾性(elasticity)を画像化するMRエラストグラフィの技術を応用して,組織の相対的な硬さを色分け表記できるのが最大の特長。得られた画像に設定したROI(関心領域)*1の測定値は肝臓の相対的な硬さ(弾性)を反映しており,臨床的には国内の高齢化に伴い罹患数が増加傾向にある肝疾患の進行度診断に高い有用性が期待されている。

非侵襲的に肝疾患の進行度を診断し,より的確な治療への貢献が見込まれるMR Touch
自覚症状がほとんどないまま進む肝疾患は,正常肝→肝炎→肝硬変と症状が悪化するのに伴い,組織が硬くなる線維化が進むのが特徴。線維化を調べるにはこれまで,針を刺して肝臓組織を取り出す肝生検や超音波診断装置を使用したエラストグラフィがあったが,侵襲的な生検は出血などの重篤な合併症の危険性もあり,また検査ごとに入院が必要なことから,患者負担が大きく,繰り返しの検査がしにくい環境にあった。また超音波のエラストグラフィは,肝生検と同様,肝臓の一部分の硬さしか分からないために,部分的に肝臓が硬くなっている場合には見逃してしまう可能性があった。
そのような中,MR Touchでは通常のMRI検査を2〜3分延長させることにより,非侵襲的に肝組織の相対的な硬さを広範囲にわたって観察できるため,完治まで長年にわたり何度も診療の必要があった肝疾患の進行度を,患者負担を減らしながらより高い精度で診断できると期待されている。肝疾患の進行度を把握できることで,インターフェロンによる肝炎の治療を的確なタイミングで開始できる可能性があるなど,MR Touchは肝疾患の治療への貢献も期待されている。

非侵襲的に肝臓の相対的な硬さを観察可能なMR Touch(通常のMRI画像に、MR Touchによる肝臓の相対的な硬さを色分けした画像を組み合わせて表示)

MR Touchの仕組み:肝臓領域に振動を与えながらMRIで組織の相対的な硬さを画像化
MR Touchは,アクティブ・ドライバーと呼ばれる振動を発生させる外部加振装置と,パッシブ・ドライバーと呼ばれる振動を人体に伝播させるためのデバイスから構成され,これらの2つの装置を用いて,肝臓領域に対して振動を与えながらMRIで組織の相対的な硬さ(弾性)を画像化する。
画像化する際は,まずパッシブ・ドライバーを患者の胸に当て,アクティブ・ドライバーで空気の振動を発生させる。空気振動はケーブルを伝わって患者の胸元に誘導され,円盤状のパッシブ・ドライバーが患者の胸壁を揺らす。胸壁から伝わった振動波が肝臓内を通過していく様子を,MRIの位相画像からWave Imageとして可視化。可視化した振動波の波長変化から相対的な硬さを算出することで,組織内を硬さによって色分けしたElastogram(弾性マップ)を得る。

MR Touchによる肝臓の相対的な「硬さ」 評価の流れ

MR Touchは,本年2月に発売した同社製MRI「Discovery MR750w 3.0T(ディスカバリー・エムアール750ダブリュー・3.0テスラ)」と「Optima MR450w 1.5T(オプティマ・エムアール450ダブリュー・1.5テスラ)」にオプション搭載できる。
MR Touchは米ゼネラル・エレクトリック(GE)が2009年5月に立ち上げた医療に関するビジネス戦略「ヘルシーマジネーション(healthymagination)」の厳しい認証審査をクリアした製品で,2009年の米国での発売を皮切りに,現在約30カ国で販売されており,世界中の顧客医療機関から高い評価を獲得している。
国内では本年7月に福岡大学に先行導入され,稼働を開始している。

国内の肝疾患の現状
現在の国内の慢性肝炎患者数は約200万人で,B型・C型ウイルス性肝炎が約8割を占める*2。このうち肝硬変に進むのは40万人で,B型・C型ウイルス性肝炎からの移行が7割を占める*3。肝硬変が進んだ肝がんの死亡者数は年3万5,000人で,がんによる死亡者数の第4位となっている*4
現在の肝炎治療方法の中で,ウイルス性肝炎を根治できるものとして期待されているのがインターフェロン治療だが,その治療効果を大きく左右するのが投与の開始時期だと言われている。
なお,肝疾患の罹患率は特にアジア人に多く,世界の肝がん患者の約8割はアジア人が占めている。また国内では肝炎罹患者の高齢化や生活習慣の変化などから,肝がんの発がん年齢の平均値が1986年〜1990年の62歳から,2001年〜2005年には69歳へと1割以上も高まるなど,肝がん患者の高齢化が進んでおり*5,より一段と低侵襲な診断・治療が求められている。

同社の中期戦略・肝疾患に対する取り組み
同社は現在,GEのヘルシーマジネーションにもとづき,国内で中期的に「Silver to Gold」(シルバー・トゥ・ゴールド)戦略を展開している。これは,世界に先駆けて日本が迎える超高齢社会を踏まえ,高齢化に伴う課題を解決するソリューションを総合的に開発・提供することで,高齢世代(シルバー)の生活の質(QOL)を高め,幸せな輝かしい人生(ゴールド)を送れるようにしようというもの。
このSilver to Goldの一環として,同社では現在,高齢化を受けて今後日本での罹患数が急速に高まると見込まれており,かつ画像診断に対するニーズが高い*6肝疾患を重点ケアエリアの1つに定め,診療に必要な製品群やサービスを組み合わせた総合的なソリューションを提案している。
肝疾患の診療の流れをみると,まず造影剤を使用した超音波診断装置やコンピューター断層撮影装置(CT),MRIで診断し早期発見や進行度の確定につなげ,発見後の治療の段階では,超音波診断装置によるガイド下のラジオ波焼灼治療(RFA)や血管造影撮影装置(アンギオ装置)撮影下の冠動脈科学塞栓術(TACE)を施す。そして治療後はCTやMRI,超音波装置などで経過観察を行うといったように,肝疾患の診療には複数の装置や薬剤を組み合わせて使用するケースが多くなっている。
そこで同社では,今回発売するMR Touchをはじめとする先進技術や製品を包括的に医療機関に提案することで,肝疾患の早期発見や治療精度向上への支援を強化し,国内の肝がん撲滅の一助となることを狙う。その上で,日本で肝疾患に最適なソリューションモデルを創り,世界に展開していくことも目指す。このように同社は,肝疾患をはじめとする超高齢社会に対応した優れた医療ソリューションの提供を図り,「人にやさしい,社会にやさしい」医療の実現に貢献することを目指す。

*1 ROI(ロイ)とはregion of interestの略。CTやMRI,核医学装置などの撮影画像上で,測定したい臓器や部位を取り囲むように線を引き,その領域の各種数値を計測したり,数値の時間変化を時間放射能曲線として表示したりする。この領域をROI(関心領域)という

*2 出典:肝炎対策推進室

*3 出典:日本肝臓学会2011

*4 出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター(2009)

*5 出典:矢倉道泰 et al (2007) “肝臓 48巻12号 598-603”

*6 臨床医師1,000名に対するアンケート(同社調査)