INNERVISION


各施設からの電子カルテシステム導入後の評価や問題解決策などの報告に対し,多くの質疑があがった。


休憩室では電子カルテや画像ビューワを展示
出展企業(50音順):
(株)島津製作所,
東芝メディカルシステムズ(株),
富士フイルムメディカル(株),
横河電機(株)


「第10回電子医療情報フォーラム」開催
―― 大規模電子カルテ:その構築と成果

 

 「第10回電子医療情報フォーラム(Computerized Medical Information Forum:CMIF,会長:石垣武男・名古屋大学医学部放射線医学教室教授)」が2月7日,第一製薬(株)名古屋支店において開催された。医療情報システムを実用化するための研究・開発を目的とした本フォーラムは,1999年7月に第1回が開催されてから,年2回ずつ行われ,今回で節目の10回を数える。フォーラムの冒頭,石垣会長が「(第1回が開催された)5年前は医療情報システムそのものが成熟していなかったが,最近は開発も進み,かなり浸透してきている」と挨拶した。今回は,「大規模電子カルテ:その構築と成果」をテーマとし,システムを導入している各施設からの稼働状況の報告や評価の発表を中心に,活発な意見交換がなされた。
 はじめに「大学病院の電子カルテ」として石口恒男氏(愛知医科大学医学部放射線医学教室教授)を座長に迎え,4大学からの現状が報告された。はじめに,木村通男氏が「浜松医大病院と電子カルテ」として,電子カルテ導入施設の調査から得られた導入成功例の特徴と,大学病院とを比較し,導入の際に問題となる事項などを提示した。一方で,電子カルテに必要とされる基本的な機能的条件や考え方を段階的に示し,浜松医科大学の現行システムについて報告。システム導入に際しては,専門家を迎えるなどの段階的な準備を整える必要があるとまとめた。また,2004年6月に新病院がオープンする岐阜大学からは,紀ノ定保臣氏が,「岐阜大学病院の電子カルテ ― インテリジェントホスピタルの構想」について,附属病院における新総合医療情報システム構想を発表した。紀ノ定氏はまず,新病院のコンセプトを提示した上で,ネットワークインフラの整備状況や,従来までの診療部門配置との比較による業務の変化(効率化)などを解説。特に,HPKIを利用したセキュアなネットワークシステムを構築し,さらに,シネアンギオといった動画像や心電図などをリアルタイムに,同時に閲覧するためベッドサイドをはじめ,施設内に光ファイバーをはりめぐらせるなど,ほぼ完全にフィルムレス・ペーパーレスが実現できるという。次世代の理想的な病院情報システムを有する複合型病院が開院することとなる。
 特別講演では蜂谷裕道氏(医療法人蜂友会はちや整形外科病院院長)が座長を務め,「医療情報の電子化と今後の方向性」と題して,システム開発の経験者と国会議員という2つの立場から,医療情報の電子化について大塚耕平氏(参議院議員)が講演した。大塚氏は,医療情報の電子化の動向はトレンドに沿っているのか,政治や行政の政策対応は適切になされているのか,その実状について解説。その上で,医師側からの意見を行政に提案していくことが重要であると述べた。
 最後に,宮地 眞氏(名古屋市立大学病院医療情報部助教授)を座長として,「電子カルテの効果」について4氏が発表した。はちや整形外科病院の例では,病院長である蜂谷氏が「電子カルテ導入における効果と問題点」について,システム開発のコンセプトやペーパーレス・フィルムレスへの課題,電子カルテ導入後の現状を報告。導入により得られた業務の効率化などの効果を挙げつつ,入力時の問題といった今後の課題について示した。また,3番目の講演として「病院経営における民間企業的経営システムの導入」と題し,北原康冨氏(日本インテグラート(株))がシステム開発を手掛ける民間企業的観点からの病院経営について述べた。
 当日は,臨時に席が増やされるなど予想を上回る参加者で,質疑応答の際にはさまざまな意見が出され,終了予定の時間も1時間近く延長された。

問い合わせ先
電子医療情報フォーラム事務局
名古屋大学部放射線医学教室
TEL 052-751-8229(はちや整形外科病院・担当:成田)
FAX 052-751-8178
URL:http://www.cmif.gr.jp
E-mail:info@cmif.gr.jp



「第10回電子医療情報フォーラム」プログラム


 ◆ 大学病院の電子カルテ
  座長:石口恒男(愛知医科大学医学部放射線医学教室教授)
   1.浜松医科大学
    「浜松医大病院と電子カルテ」
     木村通男 氏(浜松医科大学附属病院医療情報部教授)
   2.藤田保健衛生大学
    「大規模病院オーダーシステムの問題点とIHEへの期待」
     江本 豊 氏(藤田保健衛生大学病院医療情報部副部長,
               同大学医学部放射線医学教室講師)
   3.岐阜大学
    「岐阜大学病院の電子カルテ ―― インテリジェントホスピタルの構想」
     紀ノ定保臣 氏(岐阜大学医学部附属病院医療情報部教授)
   4.名古屋大学
    「大学病院の電子カルテ:名古屋大学」
     池田 充 氏(名古屋大学医学部附属病院医療経営管理部助教授)

 ◆ 特別講演
  座長:蜂谷裕道氏(医療法人蜂友会 はちや整形外科病院病院長)
  「医療情報の電子化と今後の方向性」
   大塚耕平 氏(参議院議員)

 ◆ 電子カルテの効果
  座長:宮地 眞 氏(名古屋市立大学病院医療情報部助教授)
   1.はちや整形外科病院の例
    「電子カルテ導入おける効果と問題点」
     蜂谷裕道 氏(医療法人蜂友会 はちや整形外科病院病院長)
   2.済生会松阪総合病院の例
    「電子カルテ導入の効果」
     細  忍 氏(社会福祉法人恩賜財団済生会松阪総合病院電算係)
   3.「病院経営における民間企業的経営システムの導入」
     北原康冨 氏(日本インテグラート株式会社)
   4.「医療情報システムと病院運営」
     岡崎宣夫 氏(アリゾナ大学)

 

石垣武男 会長
(名古屋大学)
石口恒男 氏
(愛知医科大学)
木村通男 氏
(浜松医科大学)
江本 豊 氏
(藤田保健衛生大学)

 

紀ノ定保臣 氏
(岐阜大学)
池田 充 氏
(名古屋大学)
蜂谷裕道 氏
(はちや整形外科病院)
大塚耕平 氏
(参議院議員)

 

宮地 眞 氏
(名古屋市立大学)
細  忍 氏
(松阪総合病院)
北原康冨 氏
(日本インテグラート(株))
岡崎宣夫 氏
(アリゾナ大学)