INNERVISION



会場となった東京国際フォーラム

 


晝馬輝夫 氏
(浜松ホトニクス
代表取締役社長)

 


吉川弘之 氏
(産業技術総合研究所理事長)

 


小柴昌俊 氏
(東京大学名誉教授)

 


菅原寛孝 氏
(ハワイ大学物理学科
Dai Ho Chun Professor)

 


浜松ホトニクス
創立50周年記念展示会 
「PHOTON FAIR 2004」開催

 

 創立50周年を迎えた浜松ホトニクス株式会社が,次の50年に視点を据えた「創立50周年記念展示会 PHOTON FAIR 2004」を,2004年2月18日(水)〜20日(金)の3日間にわたり,東京国際フォーラムにて開催した。テーマは,「光技術による新産業の創成」。1953年の創設以来一貫して光電変換素子とその応用製品の開発,製造に携わり培ってきた同社の光技術が,これからの50年,どう社会に役立ち貢献していくことができるのかを,展示およびセミナーにて紹介するとともに,新産業の創成をともに目指していけるパートナーを広く募集した。さらに会期中には,同社代表取締役社長の晝馬輝夫氏をはじめ,各界の著名人らによる関連講演も行われた。
 初日の18日には,晝馬社長と,産業技術総合研究所理事長である吉川弘之氏による基調講演があった。晝馬社長は,「これからの50年 : 光技術による新産業の創成」と題する講演の中で,「粒子と波動という2つの性質を合わせ持ち,いまだ解明されていない部分の多い光には,人類の未来にとって大いなる可能性が隠されている」として,現在の光技術の延長線上でどのような青写真が描けるのかについて持論を展開した。
 とりわけ,高齢化社会における人類の「真の健康(精神的にも肉体的にも健全で,しかも社会的にも幸福な状態)」の追究という観点から,健康診断技術に焦点を当て,「健康なうちからの検診」の重要性と,がんや痴呆の早期発見,早期治療による健康長寿社会の実現というビジョンについて語った。2003年に竣工した浜松PET検診センターでは,浜松ホトニクス中央研究所で新たに開発された,高スループットで低価格型のPETが導入され,検診技術の普及と啓蒙を図っている。
 吉川氏は,「新産業創出に向けて」と題し,科学技術と社会のあり方について語り,持続可能な開発を可能にしていくために,これからの50年,産業技術は何をしていけばよいのかについて講演した。
 翌19日には,評論家の立花 隆氏が,「日本の課題とこれからの産業」について講演した。健康,資源・エネルギー,土地,食料,教育など,日本が抱える問題点と今後の進むべき道を考察し,その中で光技術に何を期待するかについて論説した。
 20日には,2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏(東京大学名誉教授)が,「光を掴まえたら何が見えたか」と題して講演を行った。周知のとおり,小柴氏がノーベル賞を受賞した研究に採用されたカミオカンデ/スーパーカミオカンデでは,浜松ホトニクスが開発した光電子増倍管がニュートリノ検出に大きく貢献した。小柴氏は,ニュートリノ天体物理学の誕生までの経緯と,次世代の育成のための平成基礎科学財団についての抱負を語った。
 続いて,ハワイ大学物理学者である菅原寛孝氏が「ニュートリノと世界平和」と題し,ニュートリノの平和利用の可能性のひとつとして,巨大加速器で生じさせたニュートリノを核兵器にぶつけて無力化するという興味深い話題を披露した。
 一方,展示会場では,浜松ホトニクスの光技術を「健康」「エネルギー・資源」「環境」「情報・通信」「インダストリー(要素技術)」の5つの分野に分類し,それぞれのシーズやポテンシャル,方向性などが紹介された。
 なかでも,浜松PET検診センターの設立に代表されるように,力が注がれている健康分野では,人類の共通の望みである「真の健康」の実現を目指して,「スポーツ」「メディカル」「バイオ」の3つの観点から機器やデバイスの紹介が行われた。特に,会場の中央に配され,入場者らの耳目を引いていたPET装置SHR-92000は,720個の新型光電子増倍管(フラットパネル型光電子増倍管)が使用され,短時間計測(同社従来比 : 1/5)や高精細画像,静粛性の高い検査などが特長であるという。
 エネルギー・資源,環境の分野では,将来のエネルギー問題を解決する手がかりとなりうるレーザー核融合技術と,同レーザーの応用による新産業の紹介が行われ,情報・通信分野では,光の特徴を最大限に生かした光コンピュータや量子コンピュータ,さらには複雑系の解明による「考えるコンピュータ」への展望が示された。スーパーカミオカンデに使われている直径約50センチという世界最大の光電子増倍管も展示されており,会場に一興を添えていた。
 入場者数は3日間を通じて延べ1万名にのぼり,盛況のうちに閉幕した。本会は,同社の光技術をいかにして人類社会に役立てていくかという晝馬社長の一貫した基本理念が強く打ち出されており,これからの光技術の発展が大いに期待できる内容であったと言える。

問い合わせ先
浜松ホトニクス株式会社
〒430-8587 静岡県浜松市砂山町325-6
電話:053-452-2141(代表)
http://www.hpk.co.jp



展示会場入り口では,大型スクリーンにより光技術の紹介が行われた。
最新のフラットパネル型光電子増倍管を720個搭載したPET装置SHR-92000
浜松PET検診センターの紹介は注目を集めた。

 

健康分野で展示された生体機能測定技術に関する機器や製品
次世代の画像診断装置として注目される光CTと光マンモグラフィ
スーパーカミオカンデで使用されている世界最大の光電子増倍管

 

受付前に設置されたスーパーカミオカンデ内部の模型

 

展示会 健康分野「メディカル」の展示内容
 ・浜松PET検診センター
 ・イムノクロマトリーダ
 ・テレパソロジー
 ・Nano Zoomer 超広視野デジタルナノスコープ
 ・PET装置SHR-92000
 ・PET用フラットパネルPMT&APDアレイ
 ・トライイリス(近見反応測定装置)
 ・NIROシリーズ(赤外線酸素モニタ)
 ・TRS/PMS
 ・光CT
 ・光マンモグラフィ
 ・次世代X線CT用デバイス技術(タイリング)
 ・歯科用CCDエリアイメージセンサ
 ・X線シンチレータ技術
 ・エキシマダイレーザPDT EDL-2
 ・スクリーニング(尿,呼気,固視微動)