INNERVISION

 

 

 

 

 

 

 


Ferenc Jolesz, M.D.
(ハーバード大学Brigham
and Woman's Hospital)

 


難波 清 院長
(ブレストピアなんば病院)

 


古澤秀実 乳腺科部長
(ブレストピアなんば病院)


ブレストピアなんば病院が
乳がんのMRガイド下集束超音波手術
(FUS)最終臨床試験を開始

 

 乳腺疾患専門医療機関のブレストピアなんば病院(難波 清院長)は5月20日(木),都内で記者発表会を行い,乳がんにおけるMRガイド下集束超音波手術の最終段階の臨床試験を開始することを明らかにした。この臨床試験は,国際間共同多施設臨床試験となっており,日本国内からは唯一,同院が参加することになる。
 MRガイド下集束超音波手術(MR guided Focus Ulltrasound Surgery:FUS(ファス))は,超音波を一点に集束してがん病巣に照射し,温度を上昇させ,焼灼凝固させるというもの。集束超音波装置としてイスラエルに本社があるあるインサイテック社の「ExAblate2000」を使用する。手術は,MRIの画像を見ながら行われ,位置,治療の状態,病巣の温度変化をリアルタイムで確認し,進めることができる。正確に照射できるため,安全で,乳房に傷をつけない,非侵襲的な手術とされている。実際の手術では,まずMRI検査を実施し,乳房内のがんの位置を確認して手術計画を立てる。手術計画の作成には1時間弱かかる。手術では,超音波の照射ごとにMRI画像が作成され,計画どおり進んでいるかを確認しながら進められる。照射は1か所約20秒行われ,照射後は90秒間冷却。それを30〜40回繰り返し,病巣を焼灼する。手術時間は2時間半程度としており,術後,患者は30〜60分ほど安静にし,医師から手術結果の説明を受けることになる。ブレストピアなんば病院では,腫瘍の大きさが2cm以内ならば,ほとんどの乳がんに適用できるとしている。
 ブレストピアなんば病院が行う臨床試験は,2001年にFDA(米国食品医薬品局)の認可を受けて開始され,浸潤性乳がんの国際間共同多施設臨床試験として,ハーバード大学Brigham and Woman's Hospitalなど米国,カナダ,ドイツ,イスラエルから7施設が参加。BC001,BC002が行われてきた。
 BC001では,通常の手術ができない患者に対し,MRガイド下集束超音波手術を行い,その後に生検で効果を検討した。これに続くBC002では,造影剤を使用せずにFUSを施術後,確認のための切除手術を行い,病理組織学的に治療効果を検討してきた。2004年4月からは,造影剤を使用したFUS施術後に,確認のための切除手術を行うBC003がスタート。これに,ブレストピアなんば病院も参加することになった。民間病院がこのような臨床試験に参加するケースはまれであるという。術後放射線照射をしない温存手術約500例で,切除断端からの再発例がないこと,1800例の乳がん患者のMRIなどの画像データを豊富に持っており,MRI画像と乳房内の実際の広がりとの対比を行ってきたこと,乳腺専門病院として最高レベルの診療体制を築いていることなどの理由から,同院の参加が決まった。
 すでに,4月19日には,新設した専用の手術室において,第1例目のMRガイド下集束超音波手術が行われた。その後の切除手術で効果を確認したところ,がん細胞は見つからず,効果があったことが確認された。今後,BC003において,計20症例を行う予定としており,さらに,2004年秋から開始されるBC004にも参加が決まっている。このBC004では,切除手術は行わず,経過観察でこの治療法の効果を評価することになっている。同院では,BC004開始に向け,プロトコールの作成を任されており,現在,その作業を進めているという。
 記者発表会には,難波 清院長,古澤秀実乳腺科部長のほか,MRガイド下集束超音波手術の開発に携わったハーバード大学Brigham and Woman's HospitalのFerenc Jolesz, M.D.も出席。この臨床試験に取り組む意気込みが感じられるものであった。日帰り手術も可能で,患者の肉体的,精神的負担の少ない治療法として注目を集めるだけに,長年にわたり乳がん治療に取り組んできたにブレストピアなんば病院が行う臨床試験の成果には大きな期待が寄せられている。

 

●問い合わせ先
ブレストピアなんば病院
〒880-0052 崎県宮崎市丸山2-112-1
TEL 0985-32-7177 FAX 0985-20-1319
URL http://www.breastpia.or.jp