INNERVISION

 


「VectorVision」
ブレインラボでは,FireWireを利用して「VectorVision」と接続することができるプローブの開発に成功した。このプローブを用いれば「VectorVision」を超音波診断装置としても使用することが可能だという。

 


Helmut Bertalanffy, M.D.
(Philipps University of Marburg
脳神経外科教授兼主任)


ブレインラボ,
超音波画像を利用した脳神経外科用
ナビゲーションシステムの開発に着手
日本頭蓋底外科学会に出展

 

 ブレインラボ(株)は7月1,2日,横浜ベイシェラトンホテルにおいて開催された日本頭蓋底外科学会に出展し,超音波画像を利用した新しい脳神経外科用ナビゲーションシステムを開発中であることを明らかにした。
 近年,画像誘導手術におけるナビゲーションシステムは,その能力とともに臨床的有用性が向上し,外科領域での役割が非常に重要になってきている。小さな切開で特定部位にダイレクトに到達できるため,患者の肉体的,精神的負担を軽減し,さらには医療費削減効果も高く,低侵襲な手術が可能になるとして世界的にも高い評価を受けている。
 ドイツのミュンヘンに本社を置くブレインラボ(株)は,1989年に設立されて以来,CTやMRI画像を利用した脳神経外科治療に力を注いでいる。同社のナビゲーションシステムのプラットフォーム「VectorVision」は,CT,MRI,fMRI,PET,SPECT,CT Angioといった,さまざまな診断画像を統合し,モニタ上に表示できる。現在,脳神経外科手術,膝・股間節置換手術,脊椎手術,耳鼻咽喉科用のソフトウエアが搭載可能だ。赤外線追尾技術と独自のパッシブマーカー技術により,鉗子などの手術器具に取り付けたポインターを感知し,器具の位置や角度を正確かつ容易に把握することができる。
 特に脳神経外科領域でのナビゲーションシステムでは先端的な機能を追究しており,現在はPhilipps University of Marburg(ドイツ)のHelmut Bertalanffy氏(脳神経外科教授兼主任)と共同で,3D画像を使用できる超音波ガイド下のナビゲーションシステムの研究を行っている。
 Bertalanffy氏は,慶應義塾大学脳神経外科と共同で,早くから日本においてナビゲーションシステムを利用した脳神経外科手術を行い,多くの症例を経験している。
 同学会での講演のため来日したBertalanffy教授に,新しい超音波ガイド下のナビゲーションシステムについて聞いた。

● Helmut Bertalanffy教授インタビュー ●

―― 超音波ガイド下のニューロナビゲーションシステム研究の目的は?
 Bertalanffy教授:脳の深い部分の腫瘍は,たとえCTなどの実際の画像が確認できたとしても,到達するのは容易ではない。一方で,腫瘍に到達する過程で正常な部分へ損傷を与えないことも重要だ。開頭し,脳に直接プローブを当てる超音波では,術中にリアルタイム画像を確認できるため,これらの問題に対応できる。また,超音波では,多方向から確認できることや,深い部分の血管を正確に把握することができる。特に,血管は術前のAngiographyやMRIで確認しても迷ったり,手間取ることが多い。これらを解決するのが,超音波を利用したナビゲーションシステムだ。「VectorVision」と超音波のコンビネーションの研究を始めて1〜2年だが,非常に高い有用性を示している。

―― 超音波とのコンビネーションのメリットは?
 Bertalanffy教授:頭蓋を開くと脳が少し動いて,形が変化する“ブレインシフト”という現象が起きる。これが原因で,術前のMRIなどの画像と,術中での実際の見た目にズレが生じる。これに対し,超音波はリアルタイムに画像を表示するため,脳神経外科手術では非常に有用だ。さらに,CTやMRIとのフュージョン画像としても表示できるため,非常に正確な空間把握と腫瘍の位置決めが可能になる。一方で,CTやMRIは高額であるために,多くの施設ではそれらを利用したナビゲーションシステムの実現は困難であり,現実的ではない。超音波診断装置であれば比較的安価であるため,経済的なメリットは大きい。

●問い合わせ先
ブレインラボ(株)
TEL 03-5733-6275(代)
http://www.brainlab.com