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取材報告

2010
第1回 消化管CT技術研究会 開催

■ 消化管CT技術研究会
■ 機器展示

会場風景
会場風景

代表世話人:平野雄士氏(小樽掖済会病院)
代表世話人:平野雄士氏
(小樽掖済会病院)

【教育講演】

司会:山葡ハ尋氏(医療法人山下病院)
司会:山葡ハ尋氏
(医療法人山下病院)

富松英人氏(岐阜大学)
富松英人氏
(岐阜大学)

【一般演題】

座長:鈴木雅裕氏((独)国立がん研究センターがん予防・検診研究センター)
座長:鈴木雅裕氏
((独)国立がん研究センター
がん予防・検診研究センター)

松田勝彦氏(済生会熊本病院健診センター)
松田勝彦氏
(済生会熊本病院健診センター)

赤井亮太氏(医療法人豊田会刈谷豊田総合病院)
赤井亮太氏
(医療法人豊田会刈谷豊田総合病院)

松本徹也氏(大腸肛門病センター高野病院)
松本徹也氏
(大腸肛門病センター高野病院)

上釜健作氏((財)慈愛会今村病院画像診断センター)
上釜健作氏
((財)慈愛会今村病院画像診断センター)

北野浩一氏(メディックサイト(株))
北野浩一氏
(メディックサイト(株))

弓場孝治氏((株)根本杏林堂)
弓場孝治氏
((株)根本杏林堂)

【メーカーセッション】

座長:坂本 崇氏(済生会熊本病院健診センター)
座長:坂本 崇氏
(済生会熊本病院健診センター)

宮谷美行氏(東芝メディカルシステムズ(株))
宮谷美行氏
(東芝メディカルシステムズ(株))

仲野孝一氏(GEヘルスケア・ジャパン(株))
仲野孝一氏
(GEヘルスケア・ジャパン(株))

【スポンサードセッション:エーザイ(株)】

司会:坂本 崇氏
(済生会熊本病院健診センター)

森本 毅氏(聖マリアンナ医科大学)
森本 毅氏
(聖マリアンナ医科大学)

司会:平野雄士氏
(小樽掖済会病院)

森山紀之氏((独)国立がん研究センターがん予防・検診研究センター)
森山紀之氏
((独)国立がん研究センター
がん予防・検診研究センター)

  第1回「消化管CT技術研究会」〔共催:エーザイ(株),GEヘルスケア・ジャパン(株),協賛:東芝メディカルシステムズ,(株)伏見製薬所,アミン(株),堀井薬品工業(株)〕が6月26日(土),国立がん研究センター国際研究交流会館国際会議場(中央区)において開催され, 160名が参加した。多列CTを用いた侵襲の少ない消化管CT(CT colonography:CTC)は,わが国における大腸がんの急増を背景に,注腸X線検査や内視鏡検査を補完しうる(あるいは置き換わりうる)検査法として注目されている。また,腹腔鏡下手術などへの手術支援として重要な情報を提供することが可能なため,術前精密検査として拡がりを見せるとともに,簡便で侵襲の少ないことからスクリーニング検査としても注目を集めている。

  本研究会は,すでにCTCを行う施設や今後導入予定の施設が抱える疑問や問題点,また,開発が急がれるfecal taggingやCADなどの新しい技術についてディスカッションできる場を提供し,CTCのさらなる発展に貢献することをねらいとしている。

  はじめに,代表世話人の平野雄士氏(小樽掖済会病院)が開会の挨拶に立ち,「本研究会はCTCに関わる診療放射線技師の意見交換とレベルアップを目的としているが,将来的には医師,研究者,看護師などCTCに関わるすべての方々の意見交換・レベルアップを図る研究会にしていきたい」と会の主旨と抱負を述べた。また,CTCの3D画像の利用は,手術目的(術前診断,術前シミュレーション)と病変検索目的(病変を疑って行うスクリーニング検査,検診目的)があり,会を重ねるごとにそれぞれに必要な画像の区別をしっかりつけていきたいと述べた。

  プログラム1題目は,医療法人山下病院の山葡ハ尋氏が司会を務め,岐阜大学医学部附属病院放射線科の富松英人氏が「大腸癌の成り立ちと形態分類」と題して講演した。富松氏は,大腸がんの世界と日本の現状や発生過程などを述べた上で,検査法を説明した。大腸がんの一次スクリーニングとして行われる便潜血反応検査について,一次スクリーニングに必要な多くの要件を満たしており,大腸がんの死亡率を下げることができるが,がんが見落とされる可能性があるなどのデメリットもあると述べた。さらに,便潜血反応陽性者の精密検査を内視鏡検査だけではカバーしきれない現状があるとし,CTCによるスクリーニングへの期待が高まっていると述べた。また,原発巣を評価する画像診断検査として,注腸造影,大腸内視鏡,CTC,カプセル内視鏡を挙げ,それぞれのメリットとデメリットを説明。CTCについては,客観性がある,内視鏡や注腸造影検査と比べて比較的簡便で侵襲が少なく,撮影手技に習熟の必要がないとメリットを述べた。一方,微細な病変の拾い上げ(特に表面平坦型)が困難なことがあるなどの問題点にも言及した。またCTCは,仮想内視鏡,Air image,MPR像といったさまざまな表示が可能であり,大腸がんの存在・局在・質的・深達度・転移診断を広くカバーできると評価した。富松氏はこのほか,大腸がんの形態分類,治療法と予後などについて説明した。

  続いて,国立がん研究センターがん予防・検診研究センターの鈴木雅裕氏が座長を務め,6題の一般演題が発表された。

  済生会熊本病院健診センターの松田勝彦氏は「スクリーニングCT-colonographyにおける前処置法の違いによる精度評価」と題して,前処置方法(当日PEG法と前日PEG法)の違いによる腸管内残液量および診断能を評価した結果を報告した。その結果,前日PEG法は当日PEG法に比べ腸管内残液によるブラインドが少なく,有用性が高いと説明。しかし,治療対象となる6mm以上の病変の拾い上げについては,ともに100%の感度が得られたため,検診の一次スクリーニングとしては当日PEG法も使用可能だと思われると述べた。

  医療法人豊田会刈谷豊田総合病院の赤井亮太氏は「CT Colonographyにおける撮影条件の検討」と題して講演。大腸模擬ファントムを撮影した結果,視覚的な評価において画質を維持したままCTDIvolを約50%低減でき,ノイズ低減フィルタを使用すると約63%の低減が可能になったと述べた。臨床症例についても診断能が担保され,2体位でのCTDIvolは,腹部ルーチン検査と同等またはそれ以下となったと報告した。

  大腸肛門病センター高野病院の松本徹也氏は「内視鏡挿入困難例におけるCT colonographyの同日施行の検討」をテーマに発表した。松本氏は,全大腸内視鏡検査(Total colonoscopy:以下,TCS)で内視鏡挿入が困難であった症例に対し,その補完として同日に行うCTCの有用性を検討した結果を述べた。松本氏は,大腸がんのスクリーニング検査は,限られた時間内で安全に行われることが求められるため,侵襲の少ないCTCはTCSの補完として有用な方法だとまとめた。

  (財)慈愛会今村病院画像診断センターの上釜健作氏は「大腸癌の外科的シミュレーションにおける3DCT Angiographyの有用性」と題して講演した。上釜氏は,臨床例を示した上で,慎重な血管処理が必要となる腹腔鏡下手術で術前に3DCT Angiographyを作成することで,血管の分岐状況および分岐部までの距離を把握することができ,腹腔鏡下手術における血管処理に非常に有用であったと説明した。

  メディックサイト(株)の北野浩一氏は「最新のCT colonography用CADについて−実用的なCADを目指して」と題して, CT画像をベースとした大腸用CADソフトウエア「Colon CAD」の最新アルゴリズムについて発表。新アルゴリズムでは,高い検出感度を維持しながら偽陽性数を減少させることができ,また,隆起型病変だけでなく,平坦型病変においても7割以上の検出感度を実現したと説明した。

  (株)根本杏林堂の弓場孝治氏は「国産炭酸ガス自動注入機の開発」と題して,薬事申請中の炭酸ガス自動注入機の開発経緯や製品の特徴を説明した。

  次に,済生会熊本病院健診センターの坂本 崇氏が座長を務め,メーカーセッションとして,2題の講演が行われた。

  東芝メディカルシステムズ(株)の宮谷美行氏は「東芝におけるCT Colonographyの技術」と題して講演。CTCをより臨床に生かすためには,画質の高精度化,低被ばく化,ルーチン化を高いレベルで実現する必要があると述べ,より微細な粘膜変化を描出するための技術,病変の検出能を維持した低被ばく化技術,より正確かつ効率的に読影するための技術を紹介した。

  GEヘルスケア・ジャパン(株)の仲野孝一氏は 「CT Colonographyの低被ばく撮影に向けて−逐次近似法を応用したCT画像再構成法(ASiR)の紹介」をテーマに発表した。ASiRは,逐次近似法を応用し,分解能を損なわず画像ノイズを大幅に軽減できるCT画像再構成法。施設によってノイズの低減率を任意に設定できるが,仲野氏は, ASiR60%を使用したことで,線量を50%以上低減しても密度分解能は,同等以上の識別能力があることが確認できたファントムの結果などを示した上で,ASiRを用いて被ばく低減を図った臨床例を紹介した。

  最後に,エーザイ(株)共催のスポンサードセッションが行われ,2題の講演が行われた。

  まず,メーカーセッションで座長を務めた坂本氏の司会の下,聖マリアンナ医科大学の森本 毅氏が「CTC症例の実際」をテーマに講演した。注腸X線検査および内視鏡検査とCTCの画像の違いを臨床画像を提示しながら説明した。森本氏は,CTCは,内視鏡の挿入が困難な患者や注腸X線検査での体位変換が難しい患者にも検査を行うことが可能であることや,一度の検査でさまざまな画像が作成でき多角的な評価ができることなどをメリットとして挙げた。一方で,仮想内視鏡画像や仮想注腸X線画像は,内視鏡画像および注腸X線画像と比べると描出能が劣る部分があるため,CTCで得られるさまざまな画像を駆使して総合的な判断が必要であると述べた。また, 今後CTCが普及するにつれて診療放射線技師が病変の洗い出しを行うなど,その役割が重要になってくるとし,その際には,病変や内視鏡・注腸X線検査所見に対する知識が必要になると述べた。

  2題目は,代表世話人の平野氏が司会を務め,国立がん研究センターがん予防・検診研究センターの森山紀之氏が「CTCの現状と未来」と題して講演した。森山氏は,仮想内視鏡画像による大腸がん検査は, 被ばく線量が注腸X線検査の1/3〜1/5,内視鏡検査と比較して低侵襲,便潜血反応と比較して高い検出率などのメリットがあると説明。また,内視鏡検査と競合する検査法ではなく,使いわけるものだと述べた。仮想内視鏡画像で大腸がんスクリーニング検査を行うにあたり,今後,検査方法の確立,陥凹型病変への対応,ユーザーの視点に立ったワークステーションやCADの開発などが必要だと話した。

  なお,第2回消化管CT技術研究会は,11月13日(土),済生会熊本病院外来がん治療センターコンベンションホールで開催される予定である。


機器展示

(株)AZE「AZE VirtualPlace」
(株)AZE
「AZE VirtualPlace」
  アミン(株)「ZIOSTATION2」(ザイオソフト社)
アミン(株)
「ZIOSTATION2」(ザイオソフト社)
  GEヘルスケア・ジャパン(株)「AWVS4(Colon VCAR EC)」
GEヘルスケア・ジャパン(株)
「AWVS4(Colon VCAR EC)」
 
東芝メディカルシステムズ(株)16列以上のCTにアプリケーションとして搭載できる大腸CT専用解析ソフト“コロンビューイングソフトウエア”などを紹介。
東芝メディカルシステムズ(株)
16列以上のCTにアプリケーションとして搭載できる大腸CT専用解析ソフト“コロンビューイングソフトウエア”などを紹介。
  メディックサイト(株)炭酸ガス自動注入器(薬事未承認)
メディックサイト(株)
炭酸ガス自動注入器(薬事未承認)
  エーザイ(株)
エーザイ(株)

●問い合わせ先
(事務局)
国立がん研究センター
がん予防・検診研究センター内
(消化管CT技術研究会HP)
http://gict-tec.com