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取材報告

2011
「患者の視点に立った医療データ分析に関する研究シンポジウム」が開催

約250人が参加した会場
約250人が参加した会場

本多正幸 氏(長崎大学)
本多正幸 氏
(長崎大学)

植松裕史 氏(インターシステムズジャパン)
植松裕史 氏
(インターシステムズジャパン)

紀ノ定保臣 氏(岐阜大学)
紀ノ定保臣 氏
(岐阜大学)

田上信介 氏(インテル)
田上信介 氏
(インテル)

前田隆浩 氏(長崎大学)
前田隆浩 氏
(長崎大学)

舟橋 毅 氏(富士フイルム)
舟橋 毅 氏
(富士フイルム)

鈴木隆弘氏(千葉大学)
鈴木隆弘氏
(千葉大学)

安藤文彦 氏(京都大学)
安藤文彦 氏
(京都大学)

ダン・オドーネル 氏(インターシステムズ)
ダン・オドーネル 氏
(インターシステムズ)

長澤 亨 氏(高崎健康福祉大学)
長澤 亨 氏
(高崎健康福祉大学)

奥原義保 氏(高知大学)
奥原義保 氏
(高知大学)

横井英人 氏(香川大学)
横井英人 氏
(香川大学)

藍原雅一 氏(自治医科大学)
藍原雅一 氏
(自治医科大学)

里村洋一 氏(千葉大学)
里村洋一 氏
(千葉大学)

  2011年7月12日(火),コクヨホール(東京都港区)において「患者の視点に立った医療データ分析に関する研究シンポジウム」が開催された。主催は日本医療情報学会課題研究会「患者視点に立った医療データ分析に関する研究」。この研究会は,今年4月に発足したもので,3年間の予定で活動していくことになっている。その前身である日本医療情報学会課題研究会「医療情報の2次利用に関する研究」では,昨年7月に「患者データの2次利用とDWHに関する研究シンポジウム」が行い,データウエアハウスの構築や地域連携でのデータ活用などについて検討した。今回は,「医療情報分析におけるニーズと課題」をテーマにして,国内事例,海外事例,パネルディスカッションの3部構成のプログラムが用意された。

  研究会の幹事である長崎大学病院医療情報部の本多正幸氏の挨拶に続き行われた第一部の国内事例の発表では,本多氏を座長に,まずインテル(株)事業開発本部の田上信介氏が「ICTを活用した健康データ標準化—コンティニュア・ヘルス・アライアンス」をテーマに登壇した。田上氏は,同社が中心となって世界で進められているコンティニュア・ヘルス・アライアンスの取り組みについて触れ,ホームヘルスケアの必要性やコンティニュア設計ガイドラインに基づく,アライアンス企業の対応製品を紹介した。さらに,日本での活動の現状を報告。イベントなどでの啓発や宮城県の南三陸町で行われている循環器疾患抑制プロジェクトなどを説明した。

  続いて登壇した長崎大学保健・医療推進センターの前田隆浩氏は,「離島での地域連携の取り組み」をテーマに発表した。前田氏は,五島市の人口動態などを説明した上で,文部科学省の事業として構築した予防・在宅医療システム「suisui NURSE」の仕組みと運用を紹介。訪問看護での入力作業の省力化などにより効果を上げていると,その成果を解説した。3番目の発表では,富士フイルム(株)ヘルスケア統括事業本部の舟橋 毅氏が,「医療連携サービスの実際とデータ利活用への期待」と題して発表した。舟橋氏は,米国,欧州のヘルスケアIT政策を取り上げてから,同社が国内で展開する検査・画像診断のASP型地域連携サービスである「C@RNA Connect」や遠隔画像診断の仕組みなどを紹介した。さらに,これらのサービスを利用したことによる検査予約の増加などのメリットを説明した。

  次に「類似症例検索のためのテキストデータベース構築」と題して,千葉大学医学部附属病院企画情報部の鈴木隆弘氏が,文書などのテキストデータから類似症例を検索するシステムを構築した事例について紹介した。鈴木氏は,同院や聖路加国際病院など3病院で行った退院時サマリーからの検索について施設間比較の結果などを提示した。引き続き,第一部の最後として,京都大学病院医療情報部の安藤文彦氏が「大規模医療統計情報データベースの構築」をテーマに発表した。安藤氏は,大学病院が参加する医療統計情報プラットフォーム(CISA)について,データの収集方法やデータベースの仕組みについて説明を行った。さらにこれを引き受けて,本多氏が手術症例における在院日数のベンチマーク分析といったデータ活用事例を紹介した。

  午後に行われた第二部では,インターシステムズジャパン(株)代表取締役社長の植松裕史氏が座長を務め,米国インターシステムズ社のダン・オドーネル氏が,「Innovation in Healthcare Analytics—Global Activities by InterSystems」を演題に講演した。オドーネル氏は,インターシステムズ社の医療分野における世界での事業展開について説明し,同社の主力製品の1つである超高速のオブジェクトデータベースである「Caché」などの紹介をした。さらに,米国のHIEでのデータ活用の仕組みについて解説を行った。また,フリーテキスト検索のための「iKnow」などの技術を説明した。このほか,オドーネル氏は,ブラジル,イタリア,タイ,中国,インドなどでの同社のシステム導入事例を紹介した。

  パネルディスカッションとなった第三部では,研究会の幹事でもある岐阜大学病院医療情報部の紀ノ定保臣氏が座長を務めた。「求められる技術・人材とスキルの育成」をテーマにしたこのパネルディスカッションでは,はじめに高崎健康福祉大学医療福祉情報学科の長澤 亨氏が「健康福祉分野における人材育成の目的とその重要性」について発表した。長澤氏は,日本医療情報学会の医療情報技師育成の取り組みについて説明したほか,大学での医療情報教育について言及し,医療現場の協力や卒業後の就職先などを課題に挙げた。続いて行われた高知大学医学部附属医学情報センターの奥原義保氏の発表は,「今後の医療データ解析に求められる医療情報学の役割と人材育成」がテーマ。奥原氏は大学教育の中で,医療データのデータウエアハウスの活用方法や,同大学における医療情報教育の実際について解説を行った。

  次いで登壇した香川大学医学部附属病院の横井英人氏は「医療データマイニングに期待することと人材育成」をテーマに発表した。横井氏はデータマイニングの手法についてそのノウハウを解説した上で,データの標準化が十分ではなく,テキストデータと定型データが混在しているといった,医療分野特有の問題を指摘した。その上で,横井氏は基本的なマイニング技術を習得し,マイニングに耐えうるデータベースを構築できる人材が必要と述べた。この後自治医科大学地域医療学センターの藍原雅一氏が「医療・介護分野におけるデータの分析とGISの役割」をテーマに発表した。藍原氏は,「場所情報コードの利用技術に関する共同研究」の結果について述べ,受診者の移動距離などを分析し,地域医療へ生かすための方策を解説した。

  これらの発表の後,総合討論となり,紀ノ定氏の進行により,人材育成の課題や方策について意見交換が行われた。また,指定発言として千葉大学名誉教授の里村洋一氏が,データ分析のためにより高度な人材育成が求められていると,医療現場の現状について課題を指摘した。これを受けて,紀ノ定氏が研究会の活動を通じて,人材育成に貢献できるようにしていきたいと述べ,シンポジウムは終了した。


●問い合わせ先
患者の視点に立った医療データ分析に関する研究シンポジウム事務局
長崎大学病院医療情報部
TEL 095-819-7536


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