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取材報告

2011
第20回日本脳ドック学会総会 開催
テーマは「脳ドックの20年とこれから─確かな診断と予防に向けて」

塩川芳昭 氏(杏林大学医学部脳神経外科/脳卒中センター)
塩川芳昭 氏
(杏林大学医学部脳神経外科/
脳卒中センター)

鳥羽研二 氏(国立長寿医療研究センター)
鳥羽研二 氏
(国立長寿医療研究センター)

佐々木真理 氏(岩手医科大学医歯薬総合研究所)
佐々木真理 氏
(岩手医科大学医歯薬総合研究所)

集中読影講座1の様子
集中読影講座1の様子

  7月8日(金),9日(土),京王プラザホテル(東京都新宿区)にて「第20回日本脳ドック学会総会」が開催された。「脳ドックの20年とこれから─確かな診断と予防に向けて」をテーマとし,杏林大学医学部脳神経外科教授/脳卒中センター長の塩川芳昭氏が会長を務めた。

  総会初日は脳ドックで現在中心的課題である未破裂脳動脈瘤と無症候性脳梗塞についての討議が行われた。

  総会2日目には,B会場にて集中読影講座1「脳ドックMRIの読影力を上げる」,集中読影講座2「脳ドックMRAの読影力を上げる 脳動脈瘤/狭窄性病変」が行われた。午前の集中読影講座1では,群馬大学大学院医学系研究科脳神経外科の好本裕平氏が座長を,岩手医科大学医歯薬総合研究所超高磁場MRI診断・病態研究部門の佐々木真理氏が講師を務めた。佐々木氏は,日本脳ドック学会が作成した『脳ドックのガイドライン2008』の検証・改訂委員会 無症候性脳梗塞,白質病変のMRI診断の標準化小委員会・委員長の立場から,まず脳ドックMRIの撮像法,判定法を概説し,後半では,ガイドラインに準拠した判定基準に基づいて約40症例の画像を受講者と供覧し判定のポイントを解説した。会場からは,中低磁場MRI装置使用における質問や症例の診断基準に対する質問などがあり,脳ドックMRIの読影への関心の高さがうかがえた。

  午後はメインとなるA会場にて,特別講演2「認知症の発症リスクの診断と予防,認知症の早期発見 脳ドックの可能性」,口演8「認知症 検査」,シンポジウム4「脳ドックと認知症」の順に認知症に関するプログラムが進行した。

  特別講演2では,日本医科大学付属病院脳神経外科の寺本 明氏が座長を務め,国立長寿医療研究センターもの忘れセンターの鳥羽研二氏が講演した。鳥羽氏は,最新の全国調査より認知症患者は400万〜500万人という結果が出,軽度認知障害(MCI)も同程度の400万〜500万人にのぼるという現状や,世界の物忘れ検査を紹介した後,画像診断と神経心理検査の組み合わせの可能性について言及した。認知症の脳ドックについては,認知症の主要疾患別に,早期診断に役立つ画像体系やMCIを診断する心理検査の確立,リスクの体系化と検査方法のパス化などの課題があるものの,将来的には発展が約束されている分野であるという見解を示した。

  シンポジウム4では,脳ドック実施施設より5名の演者が登壇した。順に,自治医科大学附属さいたま医療センターより「脳ドック検査値と認知機能検査の統計学的解析」,島根大学医学部附属病院より「健常中高年者における海馬萎縮と無症候性虚血性脳病変の関連」,済生会横浜市東部病院脳神経センターより「頭部MRI・VSRADで得られる海馬傍回萎縮の目安であるZスコアと認知機能の関連性の検討」,島根大学医学部内科学第三より「安静時functional MRIを利用した脳機能的結合における加齢の影響」,福井総合クリニックより「福井市物忘れ検診事業について」という演題で発表があった。脳ドック受診者は基本的に無症候であったり,健常者が多いため,認知機能検査等では判断が難しく,MR画像診断との有意な関連性や相乗効果などが示しづらいようであった。また,福井市物忘れ検診事業では,MCI,認知症の早期発見,かかりつけ医のかかわりや専門医および予防対策事業との連携の強化を目的とし,福井市医師会独自でMCIを定義して,郵送による自宅への質問票を一次検診と位置づけ,かかりつけ医での認知機能検査を二次検診にするという流れで行われているという。一次検診では本人または家族が返答し,その結果により診断されるが,二次検診になると受診率が低下してしまうことや,受診者の追跡調査の実施による早期発見の有効性の実証が課題だと報告された。

  閉会の挨拶では,塩川会長が,最近社会的に注目されている頭痛診療や認知症診断と,脳ドックの関連づけを重要視し,これらに関するプログラムが組めたことに一つの意義があったとした。また,集中読影講座が盛況だったことから,MRI,MRA読影への関心の高さを再認識させられたと述べた。

  次回の第21回総会では,広島大学大学院病態探究医科学講座脳神経内科学の松本昌泰氏が会長を務め,「脳を守る医療への貢献─エビデンスを活かす」をテーマに,2012年6月15日(金),16日(土)に広島国際会議場(広島県広島市)にて開催される。


●問い合わせ先
第20回日本脳ドック学会総会事務局
杏林大学医学部脳神経外科
TEL 0422-47-5511
E-mail jsbd2011-adm@umin.ac.jp
http://jsbd2011.umin.ne.jp