ホーム の中の取材報告の中の 2012の中のNEC医療セミナー2012東京 “シームレスな地域連携医療”の実証事業の成果を中心にした講演を展開

取材報告

2012
NEC医療セミナー2012東京
“シームレスな地域連携医療”の実証事業の成果を中心にした講演を展開

山口琢也氏
山口琢也氏

井上美樹代氏
井上美樹代氏

近藤克幸氏
近藤克幸氏

軸屋智昭氏
軸屋智昭氏

市川邦男氏
市川邦男氏

展示でのプレゼンテーションの様子。手前のPaPeRo(パペロ)が司会を務めた。
展示でのプレゼンテーションの様子。
手前のPaPeRo(パペロ)が司会を務めた。

  NECは,「NEC医療セミナー2012東京」を,2月24日(金),東京都港区の同社本社ビルで開催した。NEC医療セミナーは,ITソリューションの診療や病院運営への活用を中心とした講演と,同社および関連企業のシステム展示を中心に毎年行われており,2月17日には大阪でも開催した。

  講演会の冒頭で挨拶した医療ソリューション事業部の山口琢也事業部長は,NECでは第2世代の電子カルテ,データの2次利用が可能なシステムの開発に力を入れていくのと同時に,政府が進めているシームレスな地域連携医療,どこでもMY病院構想などにも対応していくと述べた。次世代の電子カルテの開発では,クリニカルパスの有効利用,“指示”などに重点を置いた病棟ワークフローの支援,タブレットPCなど新デバイスの活用に取り組んでいきたいとした。また,病診連携,病病連携などの病院外でのデータ連携では,地域医療再生基金による導入などでIDーLinkは20都道府県866施設で稼働しているが,政府の施策や実証事業に積極的に参画し基盤づくりや標準化にも取り組んでいきたいと述べた。

  また,今回の講演では,政府のIT新改革戦略に基づいて,経済産業省が実施している2010年度の実証事業「医療情報化促進事業」が主題となることから,経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課課長補佐の井上美樹代氏が挨拶し,経産省が進める“シームレスな地域連携医療”では,地域でひとつの疾患を治癒までフォローする体制をつくり,住民が安心して受診でき,医療機関側も情報入力などの負担が少ないシステムの構築を課題として,疾患をテーマにして実証事業を進めていることを紹介した。また,どこでもMY病院は,個人の医療・健康情報管理を進めるものだが,この2つの事業は表裏一体で両輪として機能していくことで,日本の医療に貢献することを期待しているとコメントした。

  講演1では,秋田大学医学部附属病院医療情報部教授の近藤克幸氏が,「ITが切り拓く地域連携医療のこれから」と題して講演した。近藤氏は,医療情報化促進事業の中の「シームレスな地域連携医療ワーキンググループ(WG)」の委員(座長)として,採択事業での運用の評価や課題の検討を行ってきた。シームレスな地域連携医療では,“小児がん長期ケア”,“小児疾患連携医療”,“i-MATCH”,“メンタルヘルスネット”,“疾病管理事業カルナ”の5つが実証フィールドとなっている。近藤氏は,実証事業の評価については,臨床面と事業面について定性と定量の両面から行い,5つのフィールドとも情報共有だけでなく疾病管理のコンセプトに基づいた実証が行えたことを報告した。

  講演2では,医療情報化促進事業のひとつである「つくば小児アレルギー情報ネットワーク・コンソーシアム 〜シームレスな地域連携医療の実現に向けた実証事業」について,2名が講演した。

  最初に,筑波メディカルセンター病院病院長の軸屋智昭氏が「シームレスな地域連携医療における本事業の位置づけと実施概要」と題して事業のねらいと全体像を中心に,続いて同病院小児科診療部長の市川邦男氏が,「実際の運用状況と今後の展開」として具体的な運用をビデオを交えて紹介した。つくば小児アレルギー情報ネットワーク・コンソーシアム(Tsukuba Pediatric Allergy information Network:T-PAN)は,つくば二次医療圏における小児アレルギー患者を対象に携帯電話とタブレット端末を活用して,患者とその家族,かかりつけ医,専門医が連携し,疾病経過や治療情報などを共有するネットワークを構築した。小児アレルギー疾患は病態の長期管理が重要で,従来はノートタイプの“健康手帳”に必要な情報を記載して患者と医師が情報共有を行っていた。しかし,ノートのサイズや記載の手間などの理由で利用率が上がっていなかった。この部分の情報共有のための仕組みとして,患者やその家族が携帯電話を利用して情報を入力してサーバに登録し,医師側はiPadを使って情報の参照を行えるシステムを構築した。実証事業は,つくばメディカルセンター病院を基幹病院として,2病院,28診療所,患者73名が参加し,2011年12月5日〜2012年2月29日まで行われている。

  市川氏は,T-PANによってこれまで難しかった医師と患者の情報共有が可能になり,よりきめの細かい疾病管理が行えることを期待していると総括した。軸屋氏は事業としての継続性について,「ひとつの疾病に特化すると対象患者が限られる。今後はT-PANを小児アレルギー疾患だけでなく,より大きな地域連携のインフラとして構築,発展させていき,事業として成立させることが必要だ」と述べた。

  システム展示では,電子カルテシステムの「MegaOakHR」をはじめ,シーエスアイの「MegaOak-MI・RA・Isシリーズ」や,地域医療連携サービス「ID-Link」のほか,スマートフォンやタブレット端末を使ったソリューションを展示していた。また,プレゼンテーションでは,テルモがNECと協力して展開している,バーコードリーダーを搭載し計測したデータを電子カルテに転送できる血糖測定器「メディセーフフィットプロ」を利用した病棟での新しいワークフローについて紹介した。


●問い合わせ先
NEC 医療ソリューション事業部
TEL 03-3798-6756
http://www.nec.co.jp/medsq/


【関連記事】

NEC医療セミナー2011東京 マネジメントサイクルと医療情報学の課題を取り上げたセミナーを開催