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第14回 レセプトオンライン化はどうなるのか

●厚生労働省の緊急措置

 昨年4月の段階で400床以上の病院においてレセプトのオンライン化が実現した。そして本年4月には,さらにオンライン請求が拡大されるはずであった。ところが厚生労働省は,5月8日付で都道府県知事等にあてて,「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令の施行に関する通知」を発表。4月診療分からのレセプトオンライン請求ができない保険医療機関に配慮し,緊急に省令を改正した。

 本年4月診療分からオンライン請求に限定される保険医療機関等のうち,オンライン請求できないものは4月診療分から診療報酬等が支払われなくなる。特に零細な保険医療機関等について資金繰りの悪化,廃業という事態を引き起こし,ひいては地域医療に重大な影響を与えることも懸念される。そのため,これらの保険医療機関等が引き続き診療報酬等を請求できるよう,今般,緊急に請求省令を改正することとした。この趣旨にしたがって,付則第4条第3項を新設し,「平成21年4月診療分の請求からオンライン請求の義務化の期限が到来する保険医療機関等のうち,最初の請求期限が到来した日(5月10日)においてオンライン請求することができないものについて,平成22年3月31日までの間でオンライン請求を行える体制準備に必要な期間を勘案して厚生労働大臣が定める日までの間は,書面による請求又は光ディスク等を用いた請求を行うことができる」こととしたのである。

 ポイントとなるのは,省令改正はあくまでも“緊急措置”であり,オンライン化は速やかに実施すべきものと規定されていることである。その経過措置期間は「平成22年3月31日まで」とされており,それ以後もオンライン化されない医療機関は「診療報酬が支払われない」と通知には記載されている。厚生労働省にとっても苦肉の策であるが,対応しなければならない医療機関は“待ったなし”の状態となってしまった。そしてこの事態は,オンライン化スケジュール(図表1)に沿って,後に続く医療機関にもプレッシャーを与えることが想定されるのである。

図表1 レセプトオンライン化スケジュール
図表1 レセプトオンライン化スケジュール

 

●“やらずぼったくり”の電子化加算

 レセプトオンライン化の進んでいないことが明白になった現在,いくつかの点で見直しを図らなければならない。その一つは「電子化加算」である。06年診療報酬改定で新設された本加算は“レセプトオンライン化のための準備を進めるための措置”として誕生したものである。当時,個々の医療機関がオンライン化するための原資として考えられたものであり,完全オンライン化が実現する予定の2011年3月末までの点数として定められている。現時点では,原則すべての医療機関がオンライン化することを前提に,すでにオンライン化が実現した400床以上の病院を除く医療機関が本加算の対象となっていた。届出している医療機関数は「図表2」のとおりである。

図表2 電子化加算の届出状況
図表2 電子化加算の届出状況

 本年1月に全国保険医団体連合会は,このレセプトオンライン化撤回を求める訴訟を起こしている。訴状を読む限りでは,(1)保険診療の制限,(2)診療情報の漏えい,(3)診療情報が診療以外の目的で使用される,(4)対応できない医師の退職 − などを問題点としており,一考を要する内容であることは間違いない。とは言え,「オンライン化に反対する=オンライン化するつもりはない」ということであれば,電子化加算の(届出)辞退は当り前のことであろう。第三者からは“制度は気に食わないが,もらえるものはもらっておこう”という立場にしか見えないのである。裁判そのものを否定するつもりはない。さらに述べると「オンライン化を選択するか否かは,医療機関が判断・決定すべきもの」と思う。

 厚生労働省はオンライン化のメリットとデメリットを明らかにすべきであり,先進的な取り組みを行っている韓国の現状について,事実を周知することが必要だろう。全国保険医団体連合会が危惧するように,韓国ではオンライン化によって医療費の削減が行われた。その一方で請求から診療報酬の入金までは20日間前後であり,医療機関のキャッシュフローは大幅に改善している。我が国の診療報酬支払までの期間がどうなるかは不明であるが,少なくとも現行の支払サイトは短縮できるものと考えられる。

 重要なことは“制度による強制”ではなく,“メリットがあるから選択する”という形でオンライン化を推進することではないだろうか。そして電子化加算は「オンライン化の予定がある施設のみ届出可能」に変更してはいかがだろうか。本加算の届出要件とされている「患者の求めに応じた,詳細な請求明細の発行」は,すでに療養担当規則に盛り込まれており,電子化の有無によらず,全医療機関の義務となっている。いずれにしても「真面目に対応している施設がバカを見る」ような結果には,なって欲しくないものである。