inNavi IT最前線リポート
名古屋掖済会病院 名古屋掖済会病院
愛知県名古屋市中川区松年町4-66
TEL 052-652-7711
http://nagoya-ekisaikaihosp.jp/

大画面汎用モニタのDICOM化により救命救急医療をサポート
低コストでモニタを整備し,救命救急センターのフィルムレス化を推進

662床の大規模病院である名古屋掖済会病院は,2006年に,新しい救命救急センターを開設。
三次救急医療機関の重責を担うための設備として,リアルビジョンのFVT250と45型大画面汎用モニタを導入。
高精細モニタに匹敵する画像参照環境をつくり,搬送から処置までの大幅な時間短縮に成功するなど,救急医療の質の向上につなげている。

(インナービジョン2009年2月号 別冊付録 ITvision No17より転載)

●年間3万4000人を受け入れる東海地方初の救命救急センター

 1948年の開院以来,地域の中核病院としての役割を担う名古屋掖済会病院は,救急医療の充実にも力を注いできた。1978年,東海地方初となる救命救急センターを発足させ,名古屋市南西部を中心に,心筋梗塞,脳卒中,外傷などの救急患者に対応。年間約30機の救急ドクターヘリも受け入れている。2006年には,56床を持つセンターを新築して新たなスタートを切った。

 現在,同センターでは常勤の救急専門医7名,看護師4名と診療放射線技師3名,臨床検査技師1名,事務員4名という陣容で,月に3000人弱,年間3万4000人以上の患者さんを受け入れている。設備面でも,16列のCTをはじめとするモダリティが用意され,その画像はPACSによってセンターのどこからでも参照することができるようになっている。

 センター内には,ウォークインの患者さん用に5つの診察室が設けられており,それぞれに3Mの高精細モニタが配備され,その場で診断が行われる。放射線部の肥後隆之技師長は,「センター内では,いつでもフィルムレス運用が可能な状態だ」と説明する。

 

肥後隆之 技師長
肥後隆之 技師長

松崎俊二 副技師長
松崎俊二 副技師長

●救命救急医療に適した画像表示環境の整備

 一方,救命救急センターに4部屋設けられた処置室すべてには,天井懸垂式45インチ大画面汎用モニタが設置されており,これに汎用モニタのガンマカーブをDICOMに対応させる装置であるリアルビジョンのFVT250を組み合わせ,PACSの参照画像を表示させている。処置までの時間を短縮するべく模索した結果,フィルムを出力せずにすむ方法として考案されたシステムだ。

 患者さんは,処置室に直接搬送され,その場でポータブルのX線撮影装置で撮影後,すぐ室内の大画面汎用モニタに画像が表示される。松崎副技師長は,「CRの処理時間と合わせても,10〜15秒もあれば画像を出せる」と説明する。搬送から1分もあれば処置を開始できるようになり,センターにとってそのスピードは大きな武器となった。

 また,画像の切り替えなどの操作には,フットスイッチを採用。限られたスペースにフィルムを並べていたシャウカステンと比べ,無駄なく,速やかに検査画像を展開できるようにした。拡大や反転の操作も容易に足だけで行え,救命救急医療の現場において,威力を発揮している。さらに,天井懸垂式の大画面モニタならではの利点として,処置室にいるスタッフ全員が,その場で同時に画像を確認することがも可能だ。

 このように,処置を始めるまでの時間を大きく短縮し,使い勝手の良い環境を実現しているが,当初FVT250を導入していなかったため,モニタの画質に問題を抱えていた。「例えば胸部なら,肺全体が真っ黒に映るため,外傷患者さんが気胸になっているのかどうかがわからなかった」と,松崎副技師長は話す。

 そして,気胸のような生命にかかわる状態を診断するための改善法を考えたとき,「まず頭に浮かんだのが,学会の機器展示でのデモンストレーションを見たFVT250だった」と,森下主任は振り返る。

 

竹内愛朗 副技師長
竹内愛朗 副技師長

森下 泉 主任
森下 泉 主任

●優れたコストパフォーマンスで高精細モニタに近い画質を実現

 名古屋掖済会病院救命救急センターが2007年秋に導入したFVT250は,PCと大画面汎用モニタの間に接続することで,DICOM表示対応,キャリブレーションや輝度ムラ補正などのモニタ品質管理,8ビットの階調を10ビット相当に向上させて表示する機能を有する。

 DICOM規格に対応した高精細モニタは,高額な上に45インチクラスの大画面の製品がない。竹内愛朗副技師長は,「大画面汎用モニタにFVT250を組み合わせることが,最もコストパフォーマンスが優れている選択だった」と説明する。

 そのFVT250と接続した大画面汎用モニタの画質は,導入前の検討において,誰もが一様に高精細モニタに匹敵するレベルを実現していることに驚いたという。「単純X線撮影のフィルムに近い画質が得られている」と評価した医師もいた。時間短縮,大画面閲覧というメリットに加え,胸部のコントラストの問題がクリアされたことで,「救急で十分使える」と,松崎副技師長は確信を得て導入に至った。

 実際の救命救急の場では,肋骨の重なった部分や,腸管ガスなどが複雑に重なる領域である腸骨の骨折が観察できるなど,FVT250を導入することによりこれまで見えかったものが見えるようになったと,スタッフからは評価されている。

 さらに,松崎副技師長は,「重度外傷の患者さんの体を起こして動脈が破裂することを防ぐため,バックボードで運び,そのまま撮影するケースでも,頸椎の側面画像などが白飛びすることがない。気胸,骨盤での出血,頸椎損傷など,生命にかかわるポイントについて迅速にトリアージできることはきわめて重要で,FVT250がそれを可能にした」と,その有用性について説明する。また,肥後技師長は,「近くでフィルムを見るのではなく,遠くから大きな画面を見ることで,全体が把握できる」と,メリットを挙げている。

 このほか,センターでは,患者さんの関係者への説明にも,大画面汎用モニタが利用されている。3D画像を動かしながら,何人かを相手に説明するには,大画面モニタは好適である。

  救命救急センターの処置室。写真左上のモニタが45インチの大画面汎用モニタ。室内にはカートに乗せられた電子カルテシステム端末などが置かれている。
救命救急センターの処置室。写真左上のモニタが45インチの大画面汎用モニタ。室内にはカートに乗せられた電子カルテシステム端末などが置かれている。


3D画像を操作する松崎副技師長。処置室内で3D画像を作成し,大画面汎用モニタに表示することで,正確な処置を支援する。
3D画像を操作する松崎副技師長。処置室内で3D画像を作成し,大画面汎用モニタに表示することで,正確な処置を支援する。

●院内全体や地域連携でのフィルムレス運用をめざす

3D画像を操作する松崎副技師長。処置室内で3D画像を作成し,大画面汎用モニタに表示することで,正確な処置を支援する。
FVT250(左上)と処置室内のFVT250(右上),天井懸垂式の大画面汎用モニタ(右下),フットスイッチ(左下)。無駄なく負担のかからない操作ができるよう,松崎副技師長がフットスイッチを考案した。

 救命救急センターにおいて,FVT250と大画面汎用モニタにより,コストを抑えつつ,画像参照環境を構築した名古屋掖済会病院。今後は,院内全体でのフィルムレス化を進め,さらに同院と周辺診療所とを結んだエキサイネットにおいても,画像配信を行うことをめざしている。これら将来展望の中でも,FVTシリーズを用いることを検討しているという。同院の事例は,コストパフォーマンスに優れたフィルムレス環境を実現する手段として,大いに参考になるに違いない。

〈問い合わせ先〉
株式会社リアルビジョン
営業本部
TEL 045-473-7336
http://www.realvision.co.jp

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