緊急インタビュー 地域医療の崩壊をどう救う?ITと地域連携 ベンダー編
NTT NGNの安心・安全なネットワークを活用して地域連携システム,サービスを共通基盤で利用できる環境をめざす 藤野 雄一 日本電信電話株式会社研究企画部門プロデュース担当プロデューサ,主幹研究員 岸本 文明 東日本電信電話株式会社ビジネスユーザ事業推進本部ビジネス営業部医療ビジネス担当部長
NTTはNGN(Next Generation Network)による安心・安全なネットワークを用いた地域連携システムの開発に取り組んでおり,現在,フレッツフォンを活用した在宅ヘルスケアサービスを提供しています。今後は,1つの基盤上で複数のシステム・サービスが利用できる仕組みを開発していきます。
安心・安全なネットワークを提供

─これまでの地域連携における取り組みについてお聞かせください。

岸本氏:NTTには社内病院が14施設ありますが,そのICT(Information Communication Technology)化をNTTの東西会社が行っています。NTT東日本は,その中でまずNTT東日本関東病院において,総合医療情報システムを稼働させており,そこで培ったノウハウをベースに各地の中核病院のICT化に取り組んできました。NTT東日本は電気通信事業の企業ですから,例えばNTT東日本関東病院と周辺の医療機関とをネットワークで結ぶように,NGNの安心・安全なネットワーク技術を用いて,地域連携を提供してきたいと考えています。また,診療所向けの電子カルテシステムを提供しているので,中核病院と診療所のそれぞれのシステムのデータを共有できる地域連携ネットワークの構想も進めています。
  一方で,より簡単な仕組みの地域連携ネットワークの構築にも取り組んでいます。その1つがNGNとフレッツフォンを活用した在宅ヘルスケアサービスです。これは自治体などにサーバを設置し,NGNで病院,公民館との間をネットワークで結び,地域住民が体重計などの専用端末からUSB経由でフレッツフォンを使ってバイタルデータを記録して,そのデータに基づいて住民と医師などの間で,健康指導・相談を行うというものです。現在,岩手県遠野市で展開されています。

複数のシステムやサービスを1つの基盤上で

─開発体制はどのようになっているのでしょうか。

藤野氏:持株会社である日本電信電話では,ネットワーク基盤と一部のアプリケーションの開発を行っています。その技術を基に,グループ会社がサービスを展開する形になっています。医療分野において,われわれはNGNのような安心・安全なネットワークを用いて医療情報を流通させるための基盤の実現をめざしています。例えば,現状では在宅ヘルスケアサービスや地域連携パスなどが個々のシステムとして運用されていますが,これをHPKIなどの仕組みを用い,患者さんや医師それぞれが1つのIDで各システム,サービスの認証が得られ,データ交換や情報共有ができるようなパブリックな基盤です。

簡単な仕組みで始められる地域連携情報共有のメリットを念頭に導入を

─地域連携でのICT活用の拡大に向けてメッセージをお願いします。

岸本氏:技術的に地域連携の仕組みはでき上がっているのに,普及していないというのが現状だと思います。ですからNGNのような安心・安全なネットワークを生かして,在宅ヘルスケアサービスのように簡単な仕組みで始められること,例えばフレッツフォンを使ったテレビ会議システムのようなことから,第一歩を踏み出していただければと思います。それがいずれ大きな一歩になるのではないでしょうか。

藤野氏:病院での電子カルテシステムの利用が進む一方で,診療所における普及が遅れていると思います。現在は,Webを使った初期投資の少ない製品も出ているので導入の壁は低くなっていますし,病院とのシステム連携の仕組みもできています。また,レセプトのオンライン化など,医療のICT化は必然の流れです。NTTは,幅広いニーズに応えるソリューションを提供できる技術がありますので,ぜひご相談ください。そして,情報共有できることのメリットを念頭に置いて,ICTの導入に取り組んでいただければと思います。

(「ITvision」No.19(2009年10月25日発行)「特集 地域連携はどこまで進んだか」より転載)

緊急インタビュートップへ インナビネット トップへ