Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2021年2月号

新世代ADCTの導入で低侵襲かつ質の高い画像診断とIVRを展開 〜“Spectral Imaging System”を用いたDual Energy撮影と新CT透視システムによるCTガイド下手技を活用〜

東海大学医学部付属八王子病院

東海大学医学部付属八王子病院

 

東海大学医学部付属八王子病院(山田俊介院長、病床数500床)は、東海大学の付属病院として2002年に開院。“地域に根ざした大学病院”として、地域の医療機関と連携して高度医療を展開している。2020年1月、同院にキヤノンメディカルシステムズの新世代320列Area Detector CT(ADCT)である「Aquilion ONE / PRISM Edition」が導入された。ディープラーニングを応用した画像再構成技術“Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)”やDual Energy(DE)技術である“Spectral Imaging System”、新しい“CT透視システム”の活用を画像診断科の長谷部光泉教授、松本知博准教授、放射線技術科の遠藤和之技師に取材した。

長谷部光泉 教授

長谷部光泉 教授

松本知博 准教授

松本知博 准教授

放射線技術科・遠藤和之 技師

放射線技術科・
遠藤和之 技師

 

IVRなど低侵襲治療に積極的に取り組む

同院は診療科30科、地域がん診療連携拠点病院としてがんに対する集学的治療の提供や、地域医療支援病院として地域医療機関との連携強化に取り組み、地域に根ざした大学病院として急性期医療を展開している。
放射線診療は、画像診断科と放射線治療科に分かれており、画像診断科は10名でCT、MRI、単純X線写真の読影業務に加え、IVR(血管内治療、画像下治療)にも積極的に取り組み、IVR専門医による低侵襲治療を行っている。病院としても低侵襲治療の提供には重点を置いており、2020年4月には血管内治療センターが開設された。長谷部教授がセンター長、松本准教授が副センター長を務め、画像診断科のほか循環器内科(森田典成准教授:副センター長)、脳神経外科、心臓血管外科などの血管内治療を行う診療科が連携して高度かつ安全な血管内治療の提供を行う。長谷部教授は、「当科では、カテーテルによる血管内治療からCTや超音波などの画像ガイド下の生検やドレナージ、リンパ管IVRまで提供し、外来から入院診療までをカバーしています。IVR専門医も多数所属し、画像診断プラス画像下治療(IVR)で低侵襲治療を提供しています」と説明する。
モダリティはCT3台、1.5T MRI2台、血管撮影装置は手術室と同じフロアに3台導入されている。検査件数(月間)は、CT2500件、MRI1000件、血管造影(診断、治療)200件、一般撮影1万3000件。放射線技術科の診療放射線技師は32名。

AI技術を応用した低被ばく、高画質の最新ADCTを導入

2020年1月から稼働するAquilion ONE / PRISMは、最新のADCTであり、ディープラーニングを用いて設計した画像再構成技術のAiCEや、新しいDE撮影技術であるSpectral Imaging Systemを搭載している。同院ではAquilion 64からのリプレイスで導入されたが、Aquilion ONE / PRISMの導入について長谷部教授は、「最新技術による低被ばくで高画質の撮影が可能なこと、新しいDE撮影が可能になったこと、また、循環器内科では冠動脈CTを活用しており、心臓撮影の画質や安定性を評価しました。さらに、当院ではCT透視下での生検やドレナージを数多く手掛けているため、ガントリチルト機構の有無やCTガイド下の操作性なども検討し、診断とIVRの両面で高いレベルでバランスが取れた装置であることを評価して選定しました」と述べる。
同院では、ほかにAquilion ONE / ViSION Edition、Aquilion Prime SPが稼働している。CT検査は、Aquilion Prime SPで非造影検査を中心に全体の6〜7割の検査を行い、それ以外の造影検査を2台のADCTで行う。Aquilion ONE / PRISMでは、AiCEによる低管電圧撮影、低線量の肺がんCT撮影、小児の撮影などを行っている。長谷部教授は、「低線量撮影が求められる検査については、AiCEを利用できるAquilion ONE / PRISMで行っています。腎機能が悪い患者さんに対する、低管電圧で造影剤量を低減したプロトコールも採用しています」と述べる。

Spectral Imaging SystemによるDual Energy撮影

Aquilion ONE / PRISMの新しいDE撮影であるSpectral Imaging Systemは、rapid kV switching方式を採用し、ディープラーニングを応用した画像再構成法を組み合わせることで、高いエネルギー弁別能とノイズ低減効果が得られ、高品質なDEデータの収集が可能になる。
同院のDE撮影は1日4、5件で、体幹部の外傷CT、肺血栓塞栓症、脊椎の圧迫骨折などの症例に、仮想単色X線画像(virtual monochromatic image:VMI)やヨードマップ、物質弁別画像(virtual non calcium image)を用いている。2020年12月にSpectral Imaging SystemがPhase2にバージョンアップし、低keV画像のノイズの改善や心臓撮影への対応などが可能になった。長谷部教授はSpectral Imaging Systemについて、「Single Energy CTと比べて画質を心配していましたが、70keVのVMIで通常のCTと遜色ない画像を得られています。被ばく線量を増やすことなく、さまざまな解析が可能な画像データを得られる意味は大きいと感じています」と述べる。

■Aquilion ONE / PRISM Editionによる臨床画像

図1 Virtual non calcium Image(VNCa) virtual non calcium imageや電子密度画像で、MRIのSTIRと同様に新規圧迫骨折(◀)が高信号で描出されている。 a:VMI(70keV) b:virtual non calcium c:virtual non calcium(Color map) d:STIR(MRI) e:Effective Z f:電子密度画像

図1 Virtual non calcium Image(VNCa)
virtual non calcium imageや電子密度画像で、MRIのSTIRと同様に新規圧迫骨折()が高信号で描出されている。
a:VMI(70keV) b:virtual non calcium c:virtual non calcium(Color map)
d:STIR(MRI) e:Effective Z f:電子密度画像

 

低被ばくと新CT透視システムによるIVR

画像診断科で行われるCTガイド下手技は、生検やドレナージが中心で肝臓のラジオ波焼灼術(RFA)などを含めて年間100件程度行っている。生検では、胸部(肺)、腹部の傍大動脈リンパ節、骨軟部など、ドレナージは腹部が多く、腹腔内の脾臓周囲や骨盤内膿瘍、椎間板の椎間板炎などで、対象領域に空気が多く超音波では見えにくい場合や、複雑な構造でより正確な手技が必要な場合にCT透視が選択されている。
ADCTによるCTガイド下IVRは、Aquilion ONE / ViSIONでも行われていたが、Aquilion ONE / PRISMでは手技の際の患者被ばく線量が半分以下に低減された。手技の際には、穿刺位置の確認のための撮影、CT透視、終了後の合併症の確認のための撮影がセットで行われる。Aquilion ONE / PRISMでは、X線光学系技術“PUREViSION Optics”とAiCEによって、画質を担保しながら被ばく線量を抑えた撮影が可能になった。松本准教授は、「Aquilion ONE / PRISMによって低被ばく撮影が可能になったことで、画質を担保し手技の成功率を落とすことなく、被ばくを半減できたのは大きなインパクトでした」と評価する。
CT透視では、撮影モードとしては、Continuous、One Shot、Volume One Shotを選択できる。リアルタイムに表示される透視画像に対してAIDR 3Dでノイズやストリークアーチファクト低減処理を行う“Real time AIDR 3D”で、画質を担保しながら被ばくを低減している。
Aquilion ONE / PRISMでは、CT透視下手技のための新しいシステムが利用できる(オプション)。新CT透視システムは、タッチパネル式の操作卓を採用し、画面やボタンなどのユーザーインターフェイスも一新された。タッチパネルは術者が自ら操作して穿刺を行えるよう設計されているが、同院では医師は穿刺の手技に専念するため、技師が検査室内で寝台や撮影モードの切り替えなどの操作を行っている。遠藤技師は「新CT透視システムでは、寝台脇でほとんどの操作が可能で検査室の中で完結できます。以前は、撮影モードの変更などは操作室のコンソールでしか操作できなかったので技師2名が必要でしたが、1名で対応可能となりワークフローも向上しました」と評価する。長谷部教授は、CTガイド下手技について、「病理から遺伝子へ診断技術が高度化することで、生検にはより細かく複雑な手技が求められています。正確な診断を行うためにもCTガイド下手技はこれからますます重要性が高まるでしょう。それに対応するためにも、正確な手技をより低被ばくで行うことが重要で、Aquilion ONE / PRISMへの期待は大きいですね」と述べる。

■Aquilion ONE / PRISM Editionの新CT透視システム

検査室内でCT操作が可能な新CT透視システム(左)、タッチパネル画面(右上)、“Real time AIDR 3D”によるノイズ・ストリークアーチファクト低減処理で視認性が向上(右下)

検査室内でCT操作が可能な新CT透視システム(左)、タッチパネル画面(右上)、“Real time AIDR 3D”によるノイズ・ストリークアーチファクト低減処理で視認性が向上(右下)

 

CT透視のさらなる被ばく低減に期待

松本准教授はCTガイド下の治療について、「患者被ばくはかなり低減されてきましたが、これからは術者被ばくの低減も必要です。AI技術を用いた散乱線の制御など技術開発にも取り組んでいきたいですね」と言う。また、遠藤技師は、「Phase2で全身にSpectral Imaging Systemが使えるようになったので、今後は実効原子番号や電子密度画像などで質的診断にも取り組んでいきたいです」と述べる。長谷部教授は、「治療技術が進化する中で、精度の高い診断へのニーズが高まっており、CTガイド下の手技はさらに増えていくと考えられます。低被ばくで精度の高い診断、治療が可能な装置とともに、高い技術を持ったIVR専門医の育成も重要だと考えています」と今後を展望している。
同院が取り組む診断からIVRまで、Aquilion ONE / PRISMの最新の技術が臨床の中で活用されることが期待される。

(2021年1月6日オンラインにて取材)

 

東海大学医学部付属八王子病院

東海大学医学部付属八王子病院
東京都八王子市石川町1838
TEL 042-639-1111
http://www.hachioji-hosp.tokai.ac.jp

 

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