Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2021年9月号

Respiratory Solution No.1[MRI]

Vantage Centurianによる呼吸器画像診断の新たな臨床、研究を展開 〜Compressed SPEEDERやUltra short TEなど胸部領域における有用性を検証〜

藤田医科大学病院

藤田医科大学病院

 

藤田医科大学病院(湯澤由紀夫病院長)では、2020年1月のバージョンアップと4月の新規導入によって、キヤノンメディカルシステムズの3T MRI「Vantage Centurian」が2台稼働している。高い傾斜磁場強度(Gmax)と設計段階でディープラーニングを用いたSNR向上再構成(DLR)技術である“Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)”を搭載し、“Compressed SPEEDER”やUltra short TE imaging(UTE-MRI)といった先進の撮像法を利用できる3T装置である。同院の放射線科および先端画像診断共同研究講座で進められている共同研究を含めて、3T MRIを用いた呼吸器領域の画像診断について大野良治臨床教授に取材した。

大野良治 臨床教授

大野良治 臨床教授

 

低侵襲画像診断・治療センターに放射線診療を集約

同院の放射線診療は、2012年に開設された低侵襲画像診断・治療センター(放射線棟)が中心となる。地上5階、地下1階の同センターには、MRI、CT、PET-CTなど核医学、血管撮影装置などのほか、高精度放射線治療装置も設置され、同院の放射線診療が集約された施設となっている。スタッフは、放射線部部長の外山 宏主任教授以下、医師23名、診療放射線技師103名などとなっている。MRIは、同センターの2階フロアに集約され、Vantage Centurianのほか3T MRI「Vantage Titan 3T / SGO」など4台が稼働する。もう1台のVantage Centurianは救急部門に設置され、MRIの検査件数は5台で年間約2万5000件に上る。

High Power Gradientや高速撮像技術を搭載した3T MRI

Vantage Centurianは、キヤノンメディカルシステムズのフラッグシップ機として開発された3T MRIである。Gmax100mT/mのHigh Power Gradient、DLR技術であるAiCEを搭載し、新たに開発した圧縮センシング技術のCompressed SPEEDERなどの組み合わせによって高速化と高画質化を両立する。Vantage Centurianについて大野臨床教授は、「Vantage Titanの時から基本的な設計思想は同じですが、ボア径が小さいこともあって臨床だけでなく研究を念頭に置いた装置です。高いグラディエントシステムで海外メーカーに引けを取らないパワーを引き出すことができ、設計段階で人工知能(AI)技術を応用したデノイズ技術や高速撮像技術を臨床機として利用できます。また、国産メーカーであり研究レベルの撮像法や技術をいち早く共有して開発を進められることもメリットです」と語る。

MRI、CT、AIなど多くの共同研究を展開

神戸大学から2019年に赴任した大野臨床教授は、2011年からキヤノンメディカルシステムズの最初の3T MRI「Vantage Titan」で共同研究を行ってきた。現在はMRIのほか、コンピュータ支援診断とAI、CTの3領域で共同研究を進めている。大野臨床教授は、「キヤノンメディカルシステムズとの共同研究のきっかけは、現在のAI開発につながるコンピュータ支援診断装置の開発および製品化や、CTの面検出器による検査法の再定義を行ったことです。その後、新しい3T MRIの導入を機に主に体幹部領域で新たな画像診断法の開発や臨床への応用など、臨床研究を中心に取り組むことになりました」と説明する。
MRIの共同研究に関しては現在、Compressed SPEEDER、Exspanded SPEEDER(Exsper)といった新しい撮像法やUTE-MRIなどについて、各領域での有用性の検証に取り組んでいる。大野臨床教授は同院での研究の方向性について、「1376床という日本で最大の病床数があり、多くの検査が行われる中で検査件数を落とさず質の高い診療を提供することが放射線科に求められることです。その中で、日々の臨床での疑問や発見を発展させる臨床研究を中心に取り組んでいます。その意味でもVantage Centurianは高い装置性能と検査効率の向上を両立でき、臨床、研究のみならず病院経営の観点でも優れた技術を搭載していると評価しています」と言う。
胸部(呼吸器)のMRIについては、世界の有力な呼吸器専門医で構成される“Fleischner Society”が2020年にPosition Paperを発表し、MRIの技術や撮像法が進化し低侵襲検査が可能になっているとして対象領域の再評価を提案した1)。Position Paperの作成にかかわった大野臨床教授は、「Fleischner Societyは、肺のMRIについて30年前に当時の技術レベルでは、肺がんなどの診断にはCTに加えて行うメリットがないとしました。今回はそれを見直し、MRIの技術的な進歩を考慮して、胸部疾患を扱う放射線科医や臨床医に最新のMRIの状況を知ってもらうために作成したものです。今後はこれが肺のMRIのスタンダードになっていくと考えています」と述べる。

Vantage Centurianの臨床的な評価

●UTE-MRI
UTE-MRIは、通常よりも極端に短いecho time(TE)によって従来の撮像法では描出が難しかったT2*値の短い組織を観察する撮像法である。肺は、空気を多く含みプロトン密度が低く、また組織と空気の境界で起こる磁化率効果で信号減衰が速いためMRIでの画像化が困難だった。UTE-MRIでは100μs以下のTEで高分解能MRIが撮像でき、大野臨床教授は胸部領域で肺実質の血管や気管支などの構造や疾患の診断が可能なことを報告してきた2)。また、UTE-MRIは動きの影響を受けづらいことから自由呼吸下での撮像が可能になる。大野臨床教授は、「図1では、右中葉に長径19mm大のpleural indentation、notchおよびspiculaを伴った結節を認め、肺腺癌を疑います。UTE-MRIは、被ばくなしに薄層CT(Thin-section CT: TSCT)と同等の描出能があり、肺実質の評価を含めた各種の肺疾患の診断が可能です。さらに、MRIでは、拡散強調画像や造影、CESTなどさまざまな情報を合わせた、multi parametricな診断の可能性が広がります」と述べる。

●Compressed SPEEDER
Compressed SPEEDERは、高速撮像技術であるparallel imaging(PI)と圧縮センシング(CS)を組み合わせて画質の劣化を防ぎ、高速撮像を実現する。AiCEとの併用によって画質を担保しながらさらなる撮像時間の短縮も期待できる。大野臨床教授は、「図2は、図1と同結節の造影前後のspoiled fast 3D T1-weighted imagingである“Quick 3D imaging(Quick 3D)”ですが、Compressed SPEEDERを使用することでTSCTやUTE-MRIと同等の分解能を有する画像を取得するとともに、AiCEを使用して良好な画質を担保することができます。Compressed SPEEDERは、PIとCSを融合させた高速撮像技術で、wavelet変換における閾値の低減を行うことで画質劣化を抑えた高速撮像が可能であり、時間分解能の向上にも有用です。本症例では、空間分解能を増加させているためSNRが低下する傾向にありましたが、AiCEを使用することで、空間分解能を向上した場合の画質劣化を改善できています。Compressed SPEEDERとAiCEの併用によって、時間分解能と空間分解能の向上を同時に行うことが期待できます」と評価する。さらに、Compressed SPEEDERとAiCE の組み合わせについては、「当院の研究でもAiCE はPIよりもCompressed SPEEDERとの相性が良いという結果が報告されており3)、併用することでさらに画質の改善と検査効率の向上が可能です」(大野臨床教授)と期待する。

●CEST imaging
Chemical Exchange Saturation Transfer (CEST)imagingは、MRIを用いた新たな機能・代謝診断法として期待されている。大野臨床教授はその一つであるアミド基を有する代謝物を対象にした“amid proton transfer weighted(APTw) image”で胸部腫瘍性疾患に対する臨床的有用性について検討し報告してきた4)。同院では、FASE法による2D CEST imagingに加えて、FFE法を用いた3D CEST imagingでも臨床研究を進めている。大野臨床教授は、「CEST imagingは、これまでPETでしかできなかった代謝の情報を加えることで、生化学の情報を載せた画像対比により、これまでとは違う新たなMRIを用いた診断領域が開けることが期待されます。現在はアミド基が中心ですが、今後の技術開発によって、水酸基やアミノ基などを有するさまざまな代謝物のCEST効果の観察も可能になることが期待されるので、将来的な展開が楽しみです」と述べる。

■Vantage Centurianによる臨床画像

図1 UTE(Ultra short TE)

図1 UTE(Ultra short TE)

 

図2 Compressed SPEEDER+AiCE

図2 Compressed SPEEDER+AiCE

 

藤田医科大学の病院群の検査環境を統合

同大学関連病院のばんたね病院(名古屋市中川区、370床)と岡崎医療センター(愛知県岡崎市、400床)では、1.5Tの「Vantage Orian」が稼働しているが、新たに「Vantage Galan 3T / Focus Edition」が両病院に導入される予定だ。大野臨床教授は、「2000床を超える藤田医科大学の病院群で、同じ装置、プロトコールでデータが収集できることは、検査データの質の担保という意味でMRIはもちろんAIの開発などでも質の高い臨床および研究開発が可能になります。また、検査のクオリティの担保やスタッフの教育という意味でも期待しています」と述べる。
大野臨床教授は今後の方向性について、「MRIでは、メーカーと大学が連携して研究・開発を進めるスタイルが世界の潮流です。われわれも、技術の開発と臨床でのエビデンスづくりを両輪として成果を積み重ねて、日本から世界に発信していくことがキヤノンメディカルシステムズと共同研究を行っている藤田医科大学の使命の一つだと考えています。その上で、日本発のMRIの製品や技術がより多くの施設で使われて評価されることが、最終的には患者さんの利益につながると確信しています」と述べる。
日本発のMRIの先進的な研究をVantage Centurianが支える。

(2021年6月14日取材)

[参考文献]
1)Hatabu, H., Ohno, Y., et al., Radiology, 297(2): 286-301, 2020. 
2)Ohno, Y., Koyama, H., et al., J. Magn. Reson. Imaging, 43 : 512-532, 2016.
3)Ueda, T., Ohno, Y., et. al., Eur. J. Radiol. , 134 : 109430, 2021.
4)Ohno, Y., Yui, M., et al., Radiology, 279(2): 578-589, 2016.

 

藤田医科大学病院

藤田医科大学病院
愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98
TEL 0562-93-2111
https://hospital.fujita-hu.ac.jp

 

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