セミナーレポート(日立製作所)

日本超音波医学会第86回学術集会が2013年5月24日(金)〜26日(日)の3日間,グランキューブ大阪(大阪市)にて開催された。2日目に行われた日立アロカメディカル株式会社共催のランチョンセミナー15では,近畿大学医学部消化器内科学の工藤正俊氏と大阪赤十字病院消化器内科の大﨑往夫氏を座長に,東京医科大学消化器内科の今井康晴氏と,近畿大学医学部消化器内科学の矢田典久氏が講演した。

2013年8月号

日本超音波医学会第86回学術集会ランチョンセミナー15 肝疾患に対する超音波診断の現状〜今後の展望

肝癌治療におけるRVSの有用性と今後の展望

今井 康晴(東京医科大学消化器内科)

日立アロカメディカル社のReal-time Virtual Sonography(RVS)は,CT,MRI,USのボリュームデータを用いて,現在プローブをあてているUS画像と同じ断面の再構成画像(MPR)をリアルタイムに構築し,US像と並べて表示するアプリケーションである。プローブの位置情報は,磁気位置検出器,磁気発生器,磁気センサーからなる磁気位置検出ユニットを用いて認識する。
本講演では,RVSに新しく搭載された“レジストレーション機能”と,新しい穿刺用マイクロコンベックスプローブの使用経験,さらに造影超音波のRVSの自験例を紹介し,RVSの今後のさらなる展望について述べる。

■RVSにおける位置合わせ(画像同期)のアルゴリズム

従来のRVSでは,断面同期による位置合わせが行われていた。しかし,この方法は,操作者の習熟・工夫を要し,一定時間の患者の呼吸停止が必要だった。一方,軸同期のアルゴリズムを用いると,軸方向の登録とプローブ点の設定を正確に行えば,習熟を必要とせずに同期を行うことができる。
日立アロカメディカル社では今回,RVSで軸同期も可能となった。軸同期は,まず仮想画像の軸方向(X,Y,Z)を患者の体軸に合わせて登録する。そして,仮想画像とリアルタイムUSの同じ部位をポイントした直後に,三次元的に同期させることが可能となる。これを“シンプル・アジャスト”と呼ぶ(図1)。
ただし,人工胸水や体位変換,磁場の影響などにより,三次元的な軸が合わなくなると,プローブを扇動したときに同期がずれる。その場合には,最初の軸合わせからやり直すか,断面同期を用いることが望ましい。なお,3つの座標点を合わせる“3点補正”も可能だが,長い時間の呼吸停止が必要なため,あまり現実的とは言えない。

図1 シンプル・アジャスト

図1 シンプル・アジャスト
仮想画像とリアルタイムUSの同じ部位をポイントした瞬間の画像。
この直後に同期する。

 

■レジストレーション機能

画像同期のずれの発生は,磁場のひずみが関係すると考えられる。磁場の強さは距離の3乗に逆比例するため,離れるほど磁場はひずんでしまう。周辺の金属の影響も受けやすく,肋間を変えての観察や,プローブの角度を変えただけでも同期がずれることがある。
新しくRVSに搭載されたレジストレーション機能では,同一検査内で登録した位置情報を容易に呼び出すことが可能となった。液晶パネルのレジストレーション機能ボタンを選択すると,登録した過去画像のサムネイルが表示される。その中から,見たい部位の画像を選択するだけで,その部位での位置合わせが行われる(図2)。さらに,この機能はプローブを変更しても使用可能で,コンベックスプローブで位置合わせ後に,穿刺用マイクロコンベックスプローブに換えても,レジストレーション機能で同じ位置情報を呼び出して,簡単に位置合わせを行うことができる。
このようにレジストレーション機能は,複数病変の観察や肋間を変えて穿刺治療を行う場合,また,観察時と穿刺時でプローブの角度・種類を変える場合などに,非常に高い有用性を発揮する。

図2 RVSの“レジストレーション機能”

図2 RVSの“レジストレーション機能”

 

■穿刺用マイクロコンベックスプローブ「EUP-B712」

新しい穿刺用マイクロコンベックスプローブ「EUP-B712」を紹介する(図3)。形状は,穿刺しやすいように工夫されている。1つはアタッチメントを装着する面に切れ込みをつけることで,音響レンズ面のすぐ横から針を出すことができ,死角なく針を認識することができる。もう1つは,磁場センサ内蔵の持ち手を装着すると,握る手と針が触れる心配がなく,しっかりとプローブを固定することができる。

図3 穿刺用マイクロコンベックスプローブ EUP-B712

図3 穿刺用マイクロコンベックスプローブ EUP-B712

 

画質も優れており,Bモードでは約15cmの深さまで観察が可能である。10cmを超えると画像が流れはするものの,細い血管まで描出可能で,深部に非常に強い。造影超音波Kupffer相で肝癌の穿刺をすることが多いが,深部にフォーカスすることで高いコントラストが得られ,MI値を調節することで肝表面も明瞭に観察できる。Kupffer相における高音圧フラッシュの欠損像は,深部までしっかりと観察することができ(図4),Kupffer相でのストレスのない穿刺が行えると期待される。

図4 ソナゾイド造影超音波:Kupffer相

図4 ソナゾイド造影超音波:Kupffer相

 

■造影超音波の経験症例

高齢で呼吸停止困難の症例を,各画素の最大輝度値をフレームごとに重畳表示をすることで造影剤の走行の視認性を改善するMicrobubble Trace Imaging(MTI)モードで観察した。画像が少し流れるものの,体動補正機能があるため,呼吸下であっても観察可能な画像を得られる(図5)。

図5 MTIモードの体動補正機能

図5 MTIモードの体動補正機能
小さな呼吸をしているにもかかわらず,重畳表示が得られている。

 

この画像に対して,各画素の時間的な輝度変化を色付け表示するInflow Time Mapping(ITM)解析を行ったところ,動脈の後に,門脈と同じようなタイミングで腫瘍が濃染され,その後,肝実質が染まる様子が観察された。Time Intensity curveでも同様の造影効果が確認された(図6)。

図6 ITM解析

図6 ITM解析

 

■RVSの今後のさらなる展望

レジストレーション機能により簡便な位置合わせが可能になったが,患者が動いてしまった場合には,位置情報が少しずれてしまうことに注意が必要である。患者や磁気発生器の位置が変わっても,登録した位置情報を呼び出せるようになることが望まれる。
最近,わが国でも導入された対極板不要のBipolar RFAでは,腫瘍と電極針の位置を正確に把握する必要がある。RVSを用いることで,穿刺した1本目の電極を目安に,Bモード上や3Dボディマークで,2本目,3本目の穿刺位置を計画することができる。今後は,Bモードの線マーカーを太くしたり,3Dボディマークの回転や移動ができるようになると,三次元的な把握が可能となり,視認性や操作性が向上するだろう。
最後に,Fusion画像の同期の考え方について述べる。Fusion画像を完全に同期させるには,使用する過去画像と同じタイミングで呼吸停止をする必要があるが,現実的には不可能である。そこで,Fusion画像を用いる目的から,同期精度の程度を考えると良いだろう。例えば,病変の検出や確認には,厳密に同期しなくても肝内の構造物との相対的な位置関係がわかれば目的は達せられる。ただし,小さな病変は正確な同期が必要な場合もあるので,断面同期でしっかりと合わせることが重要となる。また,治療範囲の大きさだけを検討するのであれば,病変のみの同期だけでよく,周辺臓器損傷を回避しなければならない穿刺時や正確なsafety marginの判定が必要な際には,タイトな同期が必要であり断面同期が非常に有用であろう。

■まとめ

パワーアップしたRVSは,ビギナーからエキスパートまで幅広いユーザーのニーズに対応できるようになった。さらに,新開発のマイクロコンベックスプローブEUP-B712との組み合わせにより,ストレスの少ない穿刺治療が可能となった。RVSのさらなる進歩が,肝癌治療の発展に寄与することを期待する。

 

今井 康晴

今井 康晴(Imai Yasuharu)
1983年東京医科大学卒業。88年信州大学大学院医学研究科修了。国立東信病院,飯山赤十字病院,長野市民病院などを経て,2006年東京医科大学消化器内科講師,2010年より同科准教授。

 

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