セミナーレポート(富士フイルムヘルスケア)

日本超音波医学会第93回学術集会が,2020年12月1日(火)〜3日(木)にWeb開催された。株式会社日立製作所共催のランチョンセミナーL2-04では,順天堂大学医学部附属練馬病院消化器内科科長の大久保裕直氏を座長に,大阪医科大学内科学(Ⅱ)診療准教授の朝井章氏,札幌医科大学放射線医学講座准教授の廣川直樹氏が,「診断・治療への新たなアプローチ─新型プローブを実臨床に活かす─」をテーマに講演した。

2021年3月号

日本超音波医学会第93回学術集会ランチョンセミナーL2-04 診断・治療への新たなアプローチ─新型プローブを実臨床に活かす─

診断から治療まで可能な新型マイクロコンベックスの開発

朝井  章(大阪医科大学内科学(Ⅱ))

腹部超音波検査に用いられるプローブは,診療時には高画質および十分な視野幅が求められ,治療時にはさらに操作性も重要となる。特にラジオ波焼灼療法(RFA)では,穿刺ルートの確保のために,自由度の高い操作性と保持のしやすさが期待される。
日立の新開発の腹部用マイクロコンベックスプローブ「C23RV/C23」は,高画質を実現するとともに,視野幅と操作性を徹底的に追究し,診断から治療まで幅広く対応可能となっている。本講演では,従来型マイクロコンベックスプローブの課題を解決し,幅広い用途に使用可能なC23RV/C23の特長を紹介する。

診療時における有用性

1.性能および画質の特長
診療時にプローブに求められる画質,操作性,視野幅について,標準型コンベックスプローブ(以下,標準型),従来型マイクロコンベックスプローブ(以下,従来型),C23RV/C23を比較した。
診療においては,画質に優れ,視野幅の広い標準型が多用されるが,サイズが大きいため肋間などの走査に制限がある。従来型は,形状が小型でハンドリングが容易であり,肋間走査に優れるが,音響口径の制約により標準型よりも空間分解能が低く,視野幅が狭いことから,これまで診療ではあまり使用されなかった。一方,C23RV/C23は,圧電単結晶の採用と,新しい超音波送受信技術である“eFocusing”により空間分解能が改善。また,小型かつハンドリングが容易な従来型の利点を有しながら,“Wide Scanning”により視野幅が拡大したことで,診療にも使用可能である。
実際の画像(図1)を見ると,従来型(a,c)と比較しC23RV/C23(b,d)の方が浅部から深部まで均一性の高い画像を描出可能であり,空間分解能も向上している。これにより,診療時には深部の病変も容易に判別できると思われる。また,標準型と比較しても同等の画質を有していた。

図1 診療時における画像の比較

図1 診療時における画像の比較

 

2.技術的特長

1)高画質化の実現
C23RV/C23で高画質化を実現した技術の1つが,圧電単結晶である。単結晶は,従来の圧電セラミックスと比べ内部の結晶構造が均一であり,エネルギーロスの非常に少ない素材である。そのため,超音波を効率良く発生でき,深部まで感度の良い均一な画像が取得可能となった。
2つ目は,eFocusingである。従来の送受信方法は,1回の送信ビームに対して1つの受信ビームを形成し,この送受信を複数回繰り返すことで1枚の画像を形成していた。一方,eFocusingでは,1回の送信ビームに対して多数の受信ビームを形成し,複数回の送受信を繰り返して多数の受信ビームを合成処理することで1枚の画像を生成する(図2)。超音波診断装置の演算処理能力の向上によって,このような処理がリアルタイムに可能となり,浅部から深部までフォーカスの合ったクリアな画像が得られるようになった。

図2 eFocusingによる分解能の向上

図2 eFocusingによる分解能の向上

 

2)操作性の向上
従来型と比較し,C23RV/C23ではプローブの全長が短く,肋間走査を考慮して幅も狭くなっているほか,グリップにくぼみがあり握りやすい形状となっている(図3 左)。さらに,曲面が大きくなったことで体表への接触性が向上している(図3 右)。

図3 C23RV/C23の形状の特長

図3 C23RV/C23の形状の特長

 

3)視野幅の改善
C23RV/C23では,Wide Scanningにより超音波を送受信する際の中心点(原点)を体表側にずらすことで,画質の劣化を抑えつつ従来型より広い視野を確保しているほか,深部でも空間分解能の低下は見られない(図4)。標準型と比較しても,遜色のない視野と同等の画質が得られている。

図4 C23RV/C23における視野幅の改善

図4 C23RV/C23における視野幅の改善

 

治療時における有用性

1.画質と操作性
治療においては,診療に用いる一般的な画質に加えて,針の視認性と造影性能が重要である。また,操作性として,ナビゲーションやニードルガイドが簡便かつ正確であることが求められる。
C23RV/C23では,深部まで均一な画像が得られるため,従来型と比較して腫瘤と組織の境界が明瞭となり,針の視認性も改善した。また,十分な空間分解能と染影能により造影性能が向上している。ナビゲーションにおいては,C23RV/C23ではセンサが内蔵化され,着脱の手間を省いている。さらに,ニードルガイドは,新型ブラケットの採用によりプローブとカバーのフィット感が向上し,画質の低下が起こらない。

2.画像提示
実際の治療時の画像(図5)を見ると,従来型(b)と比較し,C23RV/C23(c)では腫瘤の境界や内部性状が明瞭であり,標準型(a)と同等の画質が得られている。これは,深部病変においても同様であった。
次に,針の視認性である。RFAやマイクロ波凝固療法(MCT)(図6)においては,垂直に近い角度の穿刺でも穿刺針の視認性が十分に確保され(a),造影時には腫瘤に造影剤が流入する様子や周囲の血管を明瞭に描出できる(b)。後期相においても,組織と腫瘤のコントラストが高く,腫瘤の境界が明瞭であった。

図5 治療時における画像比較

図5 治療時における画像比較

 

図6 穿刺針の視認性および造影性能の向上

図6 穿刺針の視認性および造影性能の向上

 

3.新型ニードルガイドの特長
新型ニードルガイド(シブコ社製「シブコBX2ニードルガイド」)の特長として,(1) 感染防御を考慮したディスポーザブルタイプであること,(2) プローブとカバーがフィットすることで隙間に気泡が入ることなく画質の低下が回避できること,(3) ブラケットとアタッチメントが一体型であり構成パーツが少ないため,穿刺ガイドのズレが軽減できること,(4) プローブに装着しても操作性を妨げない形状であること,(5) 穿刺時の死角が小さく正確な針刺入が可能なことが挙げられる。また,穿刺角度は25°と5°があり,死角距離は現行ブラケットの標準視野角での9mmに対し,新型ニードルガイドでは4mmにまで短縮されている。さらに,Wide Scanningを併用することで,死角距離は半分の2mmとなり,より安全な穿刺が可能となる。

4.磁気位置センサの内蔵化
従来,日立の超音波フュージョン技術である“Real-time Virtual Sonography(RVS)”を行うためには,RVSセンサをホルダーに取り付け,さらにそれをプローブに取り付けるという2段階の作業が必要であった。C23RV/C23では磁気位置センサを内蔵化することで,この一連の作業が不要となった。また,センサケーブルの断線もなく,高い耐久能が期待される。

まとめ

新型マイクロコンベックスプローブであるC23RV/C23は,圧電単結晶とeFocusingにより高画質を実現し,新型ニードルガイドと磁気位置センサの内蔵化により操作性が改善された。さらに,Wide Scanningにより十分な視野幅を有することで,診断から治療まで幅広く対応することが可能である。

 

朝井  章(大阪医科大学内科学(Ⅱ))

朝井  章(Asai Akira)
2000年 大阪医科大学医学部卒業。2010年 同大学院医学研究科博士課程修了。大阪医科大学附属病院,The University of Texas Medical Branch  Fellowなどを経て,2019年〜大阪医科大学内科学(Ⅱ)診療准教授。2021年〜The University of Texas Medical Branch 客員教授。

 

 

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