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AR-Ex尾山台整形外科 
整形外科専門クリニックグループのセンター施設にECHELON OVALを導入し2台体制で診療を展開
ワイドボアを生かし肩・肘などの関節を高画質に撮像

2017-9-25


AR-Ex尾山台整形外科

AR-Ex尾山台整形外科は,長野県と首都圏で整形外科専門クリニックを展開する医療法人アレックスの6番目の施設として,2012年に開設された。同クリニックでは,2017年4月に2台目のMRIとして超電導型1.5T MRI「ECHELON OVAL」が導入された。グループ内の“手術センター”として,また専門外来の開設などでトップアスリートの治療までカバーする同クリニックのMRIの運用を,綿貫 誠院長と放射線科の飯塚康彦部長にお話をうかがった。

整形外科専門クリニックをグループで展開

医療法人アレックス(林 英俊理事長)は,整形外科専門クリニックグループとして,長野県と首都圏で7施設(2017年秋にさいたま市に8つ目の施設が開設予定)を展開する。法人名のアレックス(AR-Ex)は,A=Arthroscopy(関節鏡視下手術),R=Rehabilitation(リハビリテーション),Ex=Exercise(運動療法)の頭文字を取ったもので,スポーツ外傷や関節障害に対して,この3つの治療を中心にグループ全体で連携しながら,専門性を持ったスタッフがチームとしてサポートする体制を構築して診療を展開している。
AR-Ex尾山台整形外科はグループの6番目の施設となるが,通常の外来機能に加え,“東京関節鏡センター”として手術施設と病床(19床)を備えて,AR-Exグループの“手術センター”としての役割を担っている。綿貫院長は,「当グループでは,主治医が外来から手術まで一貫して担当する方式をとっています。グループの各施設で手術が必要になった場合に,当施設に入院して主治医が手術を行い,退院後はもとのクリニックに戻ってケアをするスタイルです」と説明する。関節鏡センターでは年間約650件の手術が行われているが,約9割が関節鏡下手術となっている。綿貫院長は,「手術は最小の侵襲で患者さんに負担の少ない手技を提供して,短期間の入院で早期復帰をサポートすることを心掛けています」と説明する。
外来診療では,整形外科一般に加えて,四肢の関節疾患を中心とした専門外来を設けている。外来患者数は1日平均250人で,世田谷区など地域からの受診が6〜7割を占めるが,綿貫院長がプロスポーツのチームドクターを務めていることもあり,アマチュアからトッププロまでアスリートの受診も多い。綿貫院長は,「患者さんのパーソナリティを重視して,個別の要望にそった治療を提供できる体制をとっています。専門性を持った医師と理学療法士が連携して,患者さんのレベルに応じた復帰をサポートしています」と述べる。

綿貫 誠 院長

綿貫 誠 院長

飯塚康彦 放射線科部長

飯塚康彦
放射線科部長

 

 

2台目としてワイドボアのECHELON OVALを導入

同クリニックでは,2012年の開院と同時に「ECHELON RX」を導入した。首都圏のグループ施設からの依頼検査を含め1日14件前後の検査を行っていたが,プロスポーツ選手の診療では緊急検査の依頼もあり,多い時には20件を超えフル回転している状態だった。そこで,2017年4月,隣接してオープンした脊椎疾患専門の「アレックス脊椎クリニック」の1階部分に診療スペースを拡張し,2台目のMRIとしてECHELON OVALを導入した。拡張した1階には,4階にあったリハビリテーション室を移設,パーソナルコンディショニングセンターと連携してリハビリ内容の充実も図った。綿貫院長は,「脊椎クリニックのオープンで,MRIの検査件数がさらに増えることが予想され,診療体制の充実のために増設しました。スポーツ選手など体格の良い患者さんを撮像することの多い当クリニックの特性を考え,ワイドボアのECHELON OVALを選定しました」と経緯を説明する。

ECHELON OVALの撮像コイル。足関節用(左)と手首用(右)

ECHELON OVALの撮像コイル。
足関節用(左)と手首用(右)

ECHELON RXとの2台体制で運用

ECHELON RXとの2台体制で運用

 

74cmの楕円形ボアで肩や肘関節の画質が向上

ECHELON OVALは,縦65cm×幅74cmの楕円形ボアで,左右の空間が広く患者さんに快適な検査環境を提供する。綿貫院長は,「体重100kgを超えるような大柄なスポーツ選手では,ガントリ内に入れなかったり,入ってもFOVの中心から外れるため十分な画質が得られないことがありました。患部の状態のより正確な把握が求められるアスリートの診断では,ワイドボアのメリットは大きいと感じています」と評価する。飯塚部長は検査の際の実感として,「ECHELON RXに比べて左右に6.5cmの余裕があるので,体格の良い患者さんでも肩関節や肘の検査の際により中心に近いポジショニングが可能になり,画質も向上しています」と述べる。
また,同クリニックには,膝用,足首用,手首用などの“WIT RF Coil System”の撮像コイルがフルラインアップで導入されている。中でも足首用コイルについて飯塚部長は,「膝用コイルなどを代用して撮像した画像と比較して,専用コイルでは基本肢位で撮影できるため画像診断もしやすく再現性も高いですね」と評価する。
撮像シーケンスとしては,脂肪抑制プロトン密度強調画像をベースに,T1強調画像やT2強調画像などを疾患によって組み合わせている。また,肩関節や股関節の関節腔内に造影剤を注入して撮像を行うMR Arthrographyでは,3Dシーケンスを使用する。飯塚部長は,「導入当初は,ECHELON RXの撮像シーケンスをそのまま適用し,ECHELON OVALに合うよう調整しながら撮像していましたが,さらに今後はECHELON OVALならではの開口径の大きさ,新たなシーケンスやアプリケーションを利用した検査を行い,その特長を生かしていきたいと考えています」と述べる。
MRI検査は,上肢下肢の関節や腰などの脊椎を中心に,追加撮像や特殊撮像にも対応できるよう40分枠としている。検査件数は2台で1日 20件前後となっている。

MR画像を関節鏡手術の術前シミュレーションに活用

整形外科領域のMRIの役割について綿貫院長は,「MRIの画質の向上で,肉離れの損傷度や腰椎分離症の診断においても画像をベースにした診断によって予後を含めてより適切な治療方針の決定が可能になっています」と述べる。
さらに,関節鏡手術では術前にほぼ全例でMRIを撮像しているが,1〜4mm径の内視鏡カメラの視野で手技を行う関節鏡手術では,術前のMR画像の役割が大きいと綿貫院長は次のように語る。
「視野の限られた鏡視下手術では,患部の位置をピンポイントで正確に把握することが求められます。MRIの画像は,術前のシミュレーションや実際の手技の際のガイドラインとして欠かせない情報を提供してくれます。今では術前のMR画像どおりのことがほとんどで,手術の際に想定外の事態に遭遇することはありません。また,患者さんへのインフォームド・コンセントにおいても,正確な情報を提供できるようになっています」

■症例1:内外側靭帯損傷

■症例1:内外側靭帯損傷

 

■症例2:右前方部股関節唇損傷

症例2:右前方部股関節唇損傷

 

静音機構などECHELON OVALの機能に期待

綿貫院長はECHELON OVALの開口径の広さを利用した検査が可能になるのではと,次のように語る。
「これまでの関節の撮像では,伸展した状態でしか検査できませんでしたが,症状がある曲げた状態で撮像できれば新たな病態が明らかになるのではと期待しています。今後,広い開口径を持つECHELON OVALならではの撮像法やポジショニングを追究していきたいと思います」
また,飯塚部長は,ECHELON OVALの特殊シーケンスである“ADAGE(ADditive Arrangement Gradient Echo)”を利用したT2*mappingによる肩や股関節の関節唇の損傷度の評価や,静音化技術である“SoftSound Suite”を適用したシーケンスにも取り組んでいきたいと期待する。
グループとしての安全で侵襲の少ない医療の提供に取り組む同クリニックで,ECHELON OVALのさまざまな機能を生かした今後の展開が期待される。

(2017年8月3日取材)

AR-Ex尾山台整形外科

〒158-0082
東京都世田谷区等々力4-13-1
TEL 0267-88-7850(法人インフォメーションセンター)
http://ar-ex.jp

 

 

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