訪問看護システム編

◆連載◆ 教えて! ICT&ロボットのギモン <第3回> 
【訪問看護システム編(1)】 

Q 訪問看護のICT化の状況は?

2019-8-21

訪問看護システム編


Q 訪問看護のICT化の状況は?

回答者・東京医療保健大学医療情報学科 瀬戸僚馬先生

A 訪問看護事業所のICT化は、近年急速に進んでいます。

●電子カルテの普及を上回る勢いで訪問看護のICT化が進行中
●在宅医療の裾野が広がるこれからはICTが不可欠
●補助金も活用してICT化を検討してみよう!

詳しく解説!

●電子カルテの普及を上回る勢いで訪問看護のICT化が進行中

訪問看護事業所のICT化が急速に進んでいます。全国訪問看護事業協会が2018年に調査した「訪問看護ステーションにおけるICTの普及状況に関するアンケート調査」では、日々の記録である訪問看護記録書Ⅱを電子化している(一部電子化を含む、以下同じ)事業所は43.1%に達しました。2015年の調査では24.6%に過ぎなかったので、わずか3年で20ポイント近く上昇したことになります。
ちなみに厚生労働省の医療施設調査によると、病院で診療録の電子化が進んでいるのは2017年に46.6%で、2011年は21.9%でした(精神科病床等のみの施設を除く)。つまり、訪問看護事業所は、病院の2倍のスピードでICT化が進んでいるということになります。筆者はこの傾向は、さらに加速していくと考えています。

●在宅医療の裾野が広がるこれからはICTが不可欠

病床機能分化が進む中で、超急性期を担う病院と、いわゆるケアミックスを担う病院の役割が明確になりつつあります。後者の病院は、同一グループ内に、介護医療院や特別養護老人ホーム、訪問看護事業所などを有している場合も多くあります。そうすると、一人の患者・利用者をグループ内の施設をまたがってケアしていくことになるため、いわゆるPatient Flow Management(PFM)を行うためには施設横断的なICT基盤は不可欠です。前述の医療施設調査でも病床規模の小さな病院の方がクラウド型の電子カルテを積極的に用いる傾向が示されていますが(図1)、これはICT資源管理の効率性もありつつ、むしろPFM上の必要性と理解する方が自然です。

その背景には、在宅医療環境の激化があります。2018年度の診療報酬改定では「裾野の拡大」をキーワードとして、在宅医療支援診療所以外の医療機関による訪問診療が評価されました。同時に、機能強化型訪問看護ステーションのさらなる充実も図られています。そこでは、重症な患者・利用者の受け入れや、休日を含めた24時間対応が増えることは不可避ですし、もちろん看取りも多くなるでしょう。ちなみに、機能強化型訪問看護管理療養費3の届出基準では「訪問看護ステーションと同一開設者である保険医療機関が同一敷地内に設置されている場合は、営業時間外の利用者又はその家族等からの電話等による看護に関する相談への対応は、当該保険医療機関の看護師が行うことができること」とあります。夜間・休日に病院で患者や家族からの相談に対応するには、電話を受ける看護師がその場で訪問看護の記録を読めることが大前提となります。こうした体制を整えようとすれば、紙媒体による記録では立ち行かなくなってきます。

図1 病床数別の診療録電子化率と、そのうちのクラウド型利用率 病院規模が小さい病院ほど、クラウド型の利用率が高い傾向にあります。 厚生労働省 平成29(2017)年度医療施設調査 

図1 病床数別の診療録電子化率と、そのうちのクラウド型利用率
病院規模が小さい病院ほど、クラウド型の利用率が高い傾向にあります。
厚生労働省 平成29(2017)年度医療施設調査 

 

●補助金も活用してICT化を検討してみよう!

筆者が委員長を務めた平成30年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)「訪問看護の情報標準化のための『訪問看護記録書Ⅱ』の記録・共有のあり方に関する調査研究」では、進化する訪問看護ニーズに対応した訪問看護記録書Ⅱの様式例を提示しました(図2)。あくまで「様式」なので紙媒体でも対応できるように設計されていますが、在宅医療の現場で迅速に記載するためには定型的なチェック項目が中心となりますし、これはICT化された記録との相性がきわめて良いものです。
特に法人全体としての規模が小さい訪問看護ステーションの場合は、経済産業省が行っている平成30年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業(7月17日から二次公募開始。詳細はhttps://www.it-hojo.jp/ )などの支援事業もありますので、この機会に訪問看護記録のICT化を検討してはどうでしょうか。

図2 訪問看護記録書Ⅱの様式例 実施内容をチェック項目にすることで、ICT化と相性の良い様式となっています。 出典:平成30年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)「訪問看護の情報標準化のための『訪問看護記録書Ⅱ』の記録・共有のあり方に関する調査研究報告書」 (http://neighborhoodcare.jp/wp-content/uploads/2019/04/190331nc_vfn_report.pdf )

図2 訪問看護記録書Ⅱの様式例
実施内容をチェック項目にすることで、ICT化と相性の良い様式となっています。
出典:平成30年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)「訪問看護の情報標準化のための『訪問看護記録書Ⅱ』の記録・共有のあり方に関する調査研究報告書」
http://neighborhoodcare.jp/wp-content/uploads/2019/04/190331nc_vfn_report.pdf

 

*今回教えてくれたのは*
瀬戸 僚馬(せと りょうま) 東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科、大学情報マネジメント室
2001年国際医療福祉大学保健学部卒業。津久井赤十字病院(現・相模原赤十字病院)にて臨床、杏林大学医学部付属病院にて情報システム担当の後、2009年に東京医療保健大学に赴任。現在、同大学医療保健学部医療情報学科准教授、大学情報マネジメント室室長補佐。博士(医療福祉経営学)。2012年に第13回日本医療情報学会看護学術大会長、2018年に日本医療マネジメント学会東京支部学術集会長を歴任。2016年から日本医療情報学会看護部会病棟デバイスワーキンググループ長、2017年から一般財団法人医療情報システム開発センターにて看護実践用語標準マスター普及推進作業班主査。

*「教えて! ICT&ロボットのギモン」とは?*
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