訪問看護システム編

◆連載◆ 教えて! ICT&ロボットのギモン <第12回> 
【訪問看護システム編(4)】 

Q 訪問看護システムへの入力負荷を軽減するには?

2019-12-18

訪問看護システム編


Q 訪問看護システムへの入力負荷を軽減するには?

回答者・東京医療保健大学医療情報学科 瀬戸僚馬先生

A システムにはさまざまな入力支援技術も実装されています。上手な活用で、めざせ働き方改革!

●デジタルペン:紙に書いたものが、そのまま画像として電子データになる!
●OCR:手書きの帳票を読み取ってテキストデータにできる!
●音声認識:話すだけでテキスト入力!

詳しく解説!

前回〔訪問看護システム編(3)〕までは、訪問看護領域におけるICT活用の潮流や、導入プロセスについて紹介してきました。今回からは働き方改革を一つの切り口に、個別の機能に着目して訪問看護システムの積極的な活用を考えていきたいと思います。
さて、看護師の働き方改革といえば、積年の課題であった「記録」は避けて通れません。訪問看護システムを活用するに当たって、いかに入力負荷を削減するかが大きなテーマになってきます。もっとも、積年の課題なので、「簡潔な文章となるよう心掛ける」などの基本的対応だけで解決できないことは明らかです。多様な入力支援技術を、いかに実務とすり合わせるかが大きな課題となります。
訪問看護領域で商用化されている入力支援技術には、デジタルペン、OCR、音声認識などがあります。これらの技術をどう活用していくかは、訪問看護事業者の体制や環境によって異なります。技術ごとの強み・弱みを概観しつつ、いかにマッチングするか考えてみましょう。

●デジタルペン:紙に書いたものが、そのまま画像として電子データになる!

デジタルペンと聞くと、タブレットなどの液晶画面に専用ペンで書くことをイメージしそうですが、それとは別の技術です。デジタルペンとは、実際に紙にペンで記載しつつ、その内容を電子的に取り込む装置です。共通点は「紙に手書きする」ことですが、専用紙を必要とするか、どんな紙でもいいのかなどの細かい仕様は製品によって異なります。大まかに言えば、何らかの方法で書いたものをスキャン操作を行うことなく画像化し、システムに取り込むツールということになります。
手書き時代の運用を大きく変えることなく実装可能であること、訪問看護記録書Ⅱを居宅に置いてくることが可能になり、家族やケアチームと情報共有しやすくなることは、デジタルペンの利点とも言えます。
他方で、記載した訪問看護記録書Ⅱなどは基本的に画像ファイルとして保存されることになるので、レセプトコンピュータには別途入力を必要とすることになります。そこで、後述のOCRと組み合わせることにより、この画像ファイルをテキストデータに置き換えるような商品も開発されています。

●OCR:手書きの帳票を読み取ってテキストデータにできる!

OCRとはOptical Character Recognitionの略で、光学的文字認識を指します。すなわち手書きした帳票を、カメラやスキャナで読み取ることによって、テキストの電子データとして取り込む仕組みです。パスポートの申請書などで以前から使われている技術で、これを訪問看護記録書Ⅱなどに応用する例も存在します。
もっともこの場合、一般的にはOCRに対応した帳票を作る必要があります。また、居宅で記録を記載しても、その場でスキャンするかカーボン式の複写帳票を使用しないかぎり、その記録を居宅に置いてくる運用は難しいという課題もあります。
筆者が委員長を務めた平成30年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)「訪問看護の情報標準化のための『訪問看護記録書Ⅱ』の記録・共有のあり方に関する調査研究」の報告書でも、OCRは過渡期の技術と位置づけられています。紙媒体ありきの電子化手段なので、将来的にはほかの技術に取って代わられることになるでしょう。

●音声認識:話すだけでテキスト入力!

音声認識も目新しい技術とはいえませんが、スマートスピーカーの普及を見てもわかるように近年になって実装が急速に進んできました。音声入力の場合、文字を「(紙に)書く」「(システムに)打つ」操作がどちらも不要である一方、精度が悪いと修正の負荷が大きくなるという欠点もあります。機械学習が普及することで精度が著しく向上したことから、やっと音声認識が実用段階に入ってきました。
そこで訪問看護システムでも、訪問看護記録書Ⅱをはじめ、同計画書など多様な帳票をこの音声認識で入力できる製品が出てきています。専門用語を音声認識するには業務に応じた辞書が必要なので、市販の音声認識ソフトを買ってきて入れても容易に使えるものではありません。なので、訪問看護システム自体に、音声認識機能が搭載されたものを選択することになります。
ただし、デジタルペンやOCRのように「書く」という行為がなくなるので、頭の切り替えも必要です。「書き言葉」と「話し言葉」は異なるし、その「書き言葉」を音声で入力するというのは、訪問看護師にとっては経験のないことです。この点が従来と大きく変わるので、頭の中で記録すべき文章をまとめる訓練をしていく必要はあるでしょう。

今回は、入力負荷の軽減を目的に、訪問看護システムに実装されている入力支援技術をみてきました。いずれの技術にも長所短所はあるので、やはり自施設のスタッフ層(年齢や経験)、営業圏の広さや移動時間・手段などを考慮し、中長期的な視点でこれらの技術とのすり合わせを行うことが大切です。どんな訪問看護事業所でも入力負荷の軽減は重要なので、多様な技術を用いた製品群と自施設環境とのマッチングを行うことをお勧めします。

3つの入力支援技術の違い

 

*今回教えてくれたのは*
瀬戸 僚馬(せと りょうま) 東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科、大学情報マネジメント室
2001年国際医療福祉大学保健学部卒業。津久井赤十字病院(現・相模原赤十字病院)にて臨床、杏林大学医学部付属病院にて情報システム担当の後、2009年に東京医療保健大学に赴任。現在、同大学医療保健学部医療情報学科准教授、大学情報マネジメント室室長補佐。博士(医療福祉経営学)。2012年に第13回日本医療情報学会看護学術大会長、2018年に日本医療マネジメント学会東京支部学術集会長を歴任。2016年から日本医療情報学会看護部会病棟デバイスワーキンググループ長、2017年から一般財団法人医療情報システム開発センターにて看護実践用語標準マスター普及推進作業班主査。

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