訪問看護システム編

◆連載◆ 教えて! ICT&ロボットのギモン <第18回> 
【訪問看護システム編(6)】 

Q オンライン診療におけるD to P with Nって何?

2020-7-8

訪問看護システム編


Q オンライン診療におけるD to P with Nって何?

回答者・東京医療保健大学医療情報学科 瀬戸僚馬先生

A 「看護師が訪問中の患者に対して、医師が遠隔診療を行うこと」です。対応できれば、訪問看護事業所の強みになります。

●訪問看護の場でもオンライン診療
●D to P with Nで、慢性疾患の増悪を早期発見!
●オンライン診療に対応できるかが問われる時代に

詳しく解説!

新型コロナウイルス感染症の影響により、オンライン診療が関心を集めています。オンライン診療が訪問看護にどのように影響するかを、本稿では概説していきます。

●訪問看護の場でもオンライン診療

オンライン診療を含む遠隔医療で用いられる用語に、「D to P with N」というものがあります。Doctor to Patient with Nurseの略で、つまり「看護師が訪問中の患者に対して、医師が遠隔診療を行うこと」を指します。
オンライン診療の基本的なイメージは、初診を対面で診察したぜんそくなど慢性疾患を有する患者に対して、あらかじめ作成した診療計画に基づいてオンラインで診察を行うというものです。このたびの新型コロナウイルス感染症の対応で時限的に対象が拡大しているものの、初診でオンライン診療を行うのは今でも「例外」とされています。
ですから、慢性疾患を有する患者がオンラインで医師の診察を受け、その患者が訪問看護を利用する場合にも、基本的には診療計画が存在します。訪問看護師は、その診療計画に沿った「訪問看護指示書」を受け取り、この指示に基づいて注射や点滴などを行うわけですから、オンライン診療の場に患者宅で立ち会う場面はこれまで想定外でした。

●D to P with Nで、慢性疾患の増悪を早期発見!

しかし、訪問看護を必要とする患者には、病態が不安定な方も少なくありません。ですので、オンライン診療を行った際に、予測されていない新たな症状を医師が確認する可能性もあります。そこに看護師がいれば、その場で診断の補助となりうる追加的な検査(血液検査や尿検査など)を医師が指示し、この指示に基づいて看護師が検体採取を行えます。慢性疾患の増悪を早期に発見するなど、「D to P with N」には大きな期待が寄せられています。
そこで厚生労働省では、2019年7月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」1)を改訂し、そこに「D to P with N」を加筆しました。これを行う場合は、オンライン診療に係る診療計画のほか、訪問看護指示書に基づいて診療の補助行為を行うと定められています。また、訪問看護指示書の「特記すべき留意事項」には、オンライン診療の診療計画において予測された範囲内で、看護師が行う診療の補助行為(採血・採尿など)を記載することが求められています。

●オンライン診療に対応できるかが問われる時代に

ところでD to P with Nには、医療機関側のメリットがあります。オンライン診療を経営戦略として重視しているような一部を除き、多くの医療機関では「片手間」でオンライン診療を試してみているのが現状です。実際にオンライン診療を行うためには、医師との時間調整、接続環境の調整、セキュリティの確保などやるべきことが多々あります。特にセキュリティの確保は、前述の指針1)で細かい要件が定められており、患者側で行うべき手順も少なくありません。そこで、居宅に看護師がいて接続している場面に立ち会えることは、医療機関にとっては大きな安心材料になるでしょう。
これを訪問看護の立場に裏返すと、D to P with Nに対応できる訪問看護事業所なのか、このような取り扱いがきわめて苦手な事業所なのかは、大きな分岐点になると言えます。むしろ訪問看護事業所側から医療機関に対し、積極的にD to P with Nを提案していくような働きかけも今後増えていくと思われます。

●参考URL
1)厚生労働省
オンライン診療の適切な実施に関する指針〔平成30年3月(令和元年7月一部改定)〕
https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf

 

オンライン診療における「D to P with N」のイメージ

オンライン診療における「D to P with N」のイメージ

 

*今回教えてくれたのは*
瀬戸 僚馬(せと りょうま) 東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科、大学情報マネジメント室
2001年国際医療福祉大学保健学部卒業。津久井赤十字病院(現・相模原赤十字病院)にて臨床、杏林大学医学部付属病院にて情報システム担当の後、2009年に東京医療保健大学に赴任。現在、同大学医療保健学部医療情報学科教授、大学情報マネジメント室室長補佐。博士(医療福祉経営学)。2012年に第13回日本医療情報学会看護学術大会長、2018年に日本医療マネジメント学会東京支部学術集会長を歴任。2016年から日本医療情報学会看護部会病棟デバイスワーキンググループ長、2017年から一般財団法人医療情報システム開発センターにて看護実践用語標準マスター普及推進作業班主査。

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