ITEM2017 富士フイルム ブースレポート 
小型・軽量化を実現した「CALNEO AQRO」などモダリティからITソリューションまで高い技術力が結実した多数の製品を展示


2017-5-1

富士フイルム


富士フイルムメディカルブース

富士フイルムメディカルブース

富士フイルムメディカルは,2016年と同じく「Value from Innovation 医療のいちばん近くから,次代を見つめる。」をテーマにして,コア技術であるセンシング技術や画像認識技術を投入したデジタルX線を中心とするモダリティソリューションと,「SYNAPSE 5」や「SYNAPSE VINCENT」などITソリューションで展示を構成した。富士フイルムメディカルは,独自の画像技術を生かし,カセッテDRの「CALNEO Smart」や「Virtual Grid」,「Dynamic VisualizationⅡ」などのX線静止画領域だけでなく,トモシンセシスやマンモグラフィ,X線動画像領域,PACSや3D画像解析といった領域へ拡大している。展示では,画像技術によって開発された新製品や,新たに可能になった新機能を中心に数多くの製品やソリューションを紹介した。また,携帯型超音波診断装置「FC1」の次バージョンやPET検査用放射性医薬品など,近く発売予定の最新の製品やサービスについても一足早くアナウンスした。

●軽量,小型で病棟や緊急検査のX線撮影をサポートする「CALNEO AQRO」

2016年11月に発売された軽量移動型デジタルX線撮影装置「FUJIFILM DR CALNEO AQRO」はITEM2017では初出展となった。CALNEO AQROは,同社のカセッテDR「FUJIFILM DR CALNEO Smart」と,グリッドレス撮影を可能にする画像処理技術である「Virtual Grid処理」を搭載した移動型X線撮影装置である。両技術の搭載で低いX線出力でも高画質画像が得られるようになり,X線管球から発生器,バッテリー系を一から見直すことで,従来装置に比べて総重量が1/5の90kgという大幅な軽量化と小型化を実現した。これによって,パワーアシストなしでの取り回しが可能になり,ロックせずに自由な角度で止められるフリクションアーム機構などとあわせて,狭い病棟での移動や撮影を支援する。また,リチウムイオンバッテリーを採用してフル充電で12時間連続稼働でき,充電しながらの撮影も可能になっている。そのほか,カセッテDRを収納するSmartスロットは,CALNEO Smartの充電ができるほか,挿入することで接続コンソールの切り替えも可能で,フレキシブルな運用が可能になる。使用しない時にはカセッテDRを挿入したまま鍵をかけられるSmartロック機能を搭載する。会場では,CALNEO AQROを実際に操作して,その軽さや操作性を確かめる来場者で賑わっていた。

総重量90kgと小型・軽量化を実現したCALNEO AQRO

総重量90kgと小型・軽量化を実現した
CALNEO AQRO

ロックせずに自由に動かせるフリクションアーム機構を搭載

ロックせずに自由に動かせるフリクションアーム機構を搭載

   
X線撮影とFPD制御を統合した操作パネル

X線撮影とFPD制御を統合した操作パネル

カセッテDRを挿入したまま鍵をかけられるSmartロック機能

カセッテDRを挿入したまま鍵をかけられる
Smartロック機能

 

●“写損カンファレンス”などで放射線部門の業務を支援するASSISTA Management

「ASSISTA Management」は,富士フイルムメディカルのクラウドサービス「ASSISTA Portal」のサービスとして,2016年4月からスタートした放射線検査部門管理支援サービスで昨年のITEM2016で発表された。各施設の撮影情報をクラウドで管理し,撮影線量やEI(Exposure Index)値といったデータの解析やグラフ化を自動で行い提供するサービスだが,ITEM2017ではASSISTA Managementに新たに追加された機能を中心に紹介した。その一つが“写損カンファレンス”で,院内の各撮影装置で写損=再撮影が必要となった検査について画像を含め情報を一元管理し,撮影担当者や部位ごとといった分析を可能にし,写損と正規画像を比較しながら検討を行えるカンファレンス機能などを備える。写損部位の集計結果をグラフで表示し,その中で一番多い部位のグラフから,写損カンファレンスを起動して検討するといった運用が可能で,業務終了後や定期的な研修会などでの院内精度向上活動などで効果的に利用できる。ASSISTA Managementのコーナーでは,写損カンファレンスを導入している東海大学医学部附属病院での運用をビデオで紹介した。富士フイルムメディカルでは,ASSISTA Managementを撮影業務を行う放射線部門の質を向上するためのツールとして,今後もさまざまなアプリケーションの提供を予定している。

撮影室ごと,担当者ごとといった統計や解析が可能

撮影室ごと,担当者ごとといった統計や解析が可能

写損画像と正規画像を比較してさまざまな検討が行える写損カンファレンス機能

写損画像と正規画像を比較してさまざまな検討が
行える写損カンファレンス機能

 

●X線動画像の画質を改善する新技術と“NEXT GENERATION FPD”を参考展示

富士フイルムメディカルは,ITEM直前の4月10日に医療用X線動画技術の開発に関するリリースを発表した。展示ブースでは,その内容について,“NEXT GENERATION FPD”として新しい動画技術を液晶パネルで紹介すると同時に,新技術を搭載し今後登場予定のCアーム型外科用イメージを参考展示し,同社がこれまでX線画像で培ってきた画像処理技術を動画に生かしてX線動画領域へ参入することをアピールした。
一般的な時間フィルタでは動画像の粒状性は改善するものの,観察対象部位も同様に平滑化されてしまい,観察部位のみの強調表示とはトレードオフの関係になっていた。新技術では,動画の1フレームを1枚の画像ととらえ,それに対してノイズ処理やコントラスト処理を行う。これによって観察部位の鮮鋭性を保ったままノイズの低減が可能になった。これには膨大なデータの高速処理が必要になるが,動画像処理を行う画像処理エンジンを新たに開発し,医療用X線動画像のリアルタイム表示を可能にした。

“NEXT GENERATION FPD”としてX線動画像領域への参入をアピール

“NEXT GENERATION FPD”としてX線動画像領域への参入をアピール

鮮鋭性を保ったまま動画像のノイズを低減する新技術(中央)を参考展示

鮮鋭性を保ったまま動画像のノイズを低減する新技術(中央)を参考展示

 

●低線量・高画質のトモシンセシス撮影を可能にするAMULET Innovalityの“Excellent-m 3D”

マンモグラフィでは「AMULET Innovality」と,新しい画像処理技術“Excellent-m 2D”“Excellent-m 3D”を中心に紹介した。富士フイルムメディカルのデジタルマンモグラフィ「AMULET」シリーズは,高画質と低線量撮影を実現しトモシンセシスにも対応したデジタルマンモグラフィとして評価を受け,現在,累積導入台数でも国内ではトップシェアとなっている。
AMULET InnovalityのExcellent-m 2Dとトモシンセシス対応のExcellent-m 3Dは,同社独自の画像認識技術を用いたISC(線質補正技術),FSC(微細構造鮮明化処理),ISR(逐次近似超解像再構成)などで低線量と高い鮮鋭度の撮影を両立する画像処理技術として,昨年のITEM2016で発表され製品へ搭載されている。トモシンセシス対応のExcellent-m 3Dでは,従来のFBP法からISR法による処理を行うことで,撮影線量を約30%低減し,2Dとトモシンセシス(STモード)で2mGy以下での撮影が可能になった。HRモードでも1mGy以下で撮影が可能であり,ISR法によってノイズが低減したことで石灰化によるアーチファクトが低減し,背後にある乳腺の情報を消すことなく観察が可能になった。

Excellent-m 3Dで低線量・高画質のトモシンセシス撮影を可能にする。

Excellent-m 3Dで低線量・高画質の
トモシンセシス撮影を可能にする。

 

 

●「BENEO-Fx」のトモシンセシス撮影の臨床例を画像で紹介

一般撮影コーナーでは,トモシンセシス機能やエネルギーサブトラクション撮影機能などを搭載したデジタルX線画像診断システム「FUJIFILM DR BENEO-Fx」,ロングサイズパネル「CALNEO GL」と電動式立臥位撮影台「FM-PL1」を組み合わせた長尺撮影システムなどを展示した。
BENEO-Fxのトモシンセシス機能では,振り角は30°(15°×2),撮影時間は8秒で40枚の撮影を行う。再構成によって断層画像を生成してボリュームで観察できる。通常の一般撮影に連続して撮影でき,臥位だけでなく立位での撮影も可能で,低被ばくで患者の負担も少なく新たな診断情報が得られることが期待される。BENEO-Fxのコーナーでは,トモシンセシスの症例画像として“仙骨不顕性骨折(骨粗鬆症による脆弱性骨折)”“腰椎骨折”“播種による癌性胸膜炎”などの画像を提示し胸腹部領域でのトモシンセシスの有用性を紹介した。
播種による癌性胸膜炎の症例では,心臓裏の腫瘤が明瞭に描出されている。CTでは臥位で撮影するため胸水が貯留している場合に腫瘤部分にかぶり辺縁が不明瞭になる場合があるが,BENEO-Fxのトモシンセシス撮影では,立位撮影によって胸水がかぶることなく明瞭に描出でき,撮影線量も低いことからフォローアップなどで有効に利用できることが期待される。

トモシンセシス機能などを搭載したデジタルX線画像診断システム「FUJIFILM DR BENEO-Fx」

トモシンセシス機能などを搭載したデジタルX線画像診断システム「FUJIFILM DR BENEO-Fx」

トモシンセシスの症例画像:仙骨不顕性骨折(骨粗鬆症による脆弱性骨折)

トモシンセシスの症例画像:仙骨不顕性骨折
(骨粗鬆症による脆弱性骨折)

   
トモシンセシスの症例画像:腰椎骨折

トモシンセシスの症例画像:腰椎骨折

トモシンセシスの症例画像:播種による癌性胸膜炎

トモシンセシスの症例画像:播種による癌性胸膜炎

 

●携帯型超音波診断装置「FC1」の次バージョンを先行展示

富士フイルムメディカルの携帯型超音波診断装置「FC1」は,2011年に買収したSonoSite,Inc.(当時,現在は富士フイルムメディカルに統合)とのシナジーを生かした最初の製品として2014年に発売された。FC1は,堅牢かつ高解像度画像を提供する携帯型超音波装置として評価を受けているが,ITEM2017ではその次バージョンを一足先に紹介した。新バージョンのFC1では,同社がこれまで培ってきた高い画像処理技術を生かし,日本の医師との密接な連携を背景にして超音波画像としての画質を追究した。さらに,より使いやすくユーザーインターフェイスを一新した。また,富士フイルムが開発した超音波検査用ゼリー「F JELLY PLUS(エフ ジェリー プラス)」は,“HydroAg”による抗菌対応などが図られており好評を得ていることも紹介した。

画質,プローブ,インターフェイスを一新したFC1の新バージョン

画質,プローブ,インターフェイスを一新した
FC1の新バージョン

 

 

●IVRや再生医療など治療を支援する新機能を搭載した「SYNAPSE VINCENT」の新機能をアピール

ITソリューションコーナーでは,アーキテクチャを一新した新世代PACSとして昨年のITEM2016で紹介された「SYNAPSE 5(ファイブ)」や3Dワークステーションの「SYNAPSE VINCENT」の次バージョン(version 5)の新機能を中心に展示を構成した。
SYNAPSE 5は,システムのアーキテクチャから一新してサーバサイドレンダリング方式を採用し,大容量の画像データを扱うためにさらなる高速化を図り,PC端末だけでなくタブレット端末などマルチプラットフォームの運用が可能なシステムとなっている。今年のブースでは,SYNAPSE VINCENTとの親和性を高めPACSビューワのフレーム内に画面を表示できることなど,さらに機能を強化したことをアピールした。
そのSYNAPSE VINCENTは,近く登場予定の次バージョンであるversion5に搭載予定の新しい機能を中心に,多くの端末を用意して来場者に紹介した。
その一つが,救急などにおける外傷の緊急止血として行われるけ塞栓術をサポートする“IVRシミュレーター”である。搬送時に撮影された全身CTのデータを基に,カテーテルの経路をシミュレーションして短時間で正確な手技を支援する。SYNAPSE VINCENTでは,画像認識技術によって大血管から末梢血管までを自動で抽出し,さらに血管分岐の方向(角度)を色分けで示し,2次元でのモニタ上でもカテーテルを進める方向をわかりやすく示すことができる。
また,RSNA2016でW.I.P.として紹介された“変形性膝関節症の診断・治療支援アプリケーション(膝関節解析)”も製品版として搭載される。膝関節解析では,MRのプロトン密度強調画像,T2*画像を使って,大腿骨,頸骨,軟骨,半月板を画像認識技術で自動的に抽出する。外傷性軟骨欠損症などの治療では,再生医療を利用した自家培養軟骨の移植が保険適用となっているが,算定条件の一つに軟骨の欠損面積が4cm2以上という条件がある。膝関節解析では,画面上でROIを取ることで簡単に面積を計測できる。そのほか,半月板の体積や厚みなどの計測や逸脱状況などの解析,過去データとの比較なども可能になっており,変形性膝関節症などの経過観察のためのさまざまなツールを提供する。

SYNAPSE 5ではSYNAPSE VINCENTとの連携などを強化

SYNAPSE 5ではSYNAPSE VINCENTとの連携などを強化

 
   
SYNAPSE VINCENT v5の新機能“IVRシミュレーター”

SYNAPSE VINCENT v5の新機能“IVRシミュレーター”

SYNAPSE VINCENT v5の新機能“変形性膝関節症の診断・治療支援アプリケーション”

SYNAPSE VINCENT v5の新機能“変形性膝関節症の
診断・治療支援アプリケーション”

 

●PET検査用放射性医薬品のデリバリー開始をアナウンス

富士フイルムは,2014年にPET検査用の放射性医薬品市場への参入を発表して研究開発拠点の整備を進めてきたが,FDG製剤(フルデオキシグルコース静注FRI)について子会社の富士フイルムRIファーマを通じた発売の準備体制が整ったことから,ITEM2017のブース内で紹介した。神奈川県川崎市(殿町地区)と大阪府茨木市(彩都西部地区)の東西2か所のラボで全国をカバーし,年内には供給開始の予定だ。

富士フイルムRIファーマからPET検査用放射性医薬品の供給をスタート

富士フイルムRIファーマからPET検査用放射性医薬品の供給をスタート

 

 

●お問い合わせ先
富士フイルムメディカル株式会社 販売統括本部マーケティング部
住所:〒106-0031 東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル
TEL:03-6419-8033
URL:http://fms.fujifilm.co.jp/

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