がん対策推進企業アクションがメディアセミナー「仕事と治療の両立を可能にする放射線治療」を開催

2019-7-29

放射線治療


パネルとともに,がん検診推進への取り組みを表明する参加者。左から大門正博氏,中川恵一氏,藤田聖子氏。

パネルとともに,がん検診推進への取り組みを
表明する参加者。
左から大門正博氏,中川恵一氏,藤田聖子氏。

企業などにおけるがん検診の受診率向上などをめざす「がん対策推進企業アクション」は,2019年7月24日(水),東京大学医学部附属病院(東京都文京区)でメディアセミナー「仕事と治療の両立を可能にする放射線治療」を開催した。がん対策推進企業アクションは,がんになっても働き続けられる社会の構築をめざす国家プロジェクトとして,2009年の事業開始以来,企業や団体などにおけるがん検診受診率の向上やがんになっても働き続けられる環境の整備に取り組んできた。趣旨に賛同し,アクションに取り組む“パートナー企業”は2019年7月時点で3000社,登録従業員数が750万人を超え,国内就業者数の1割以上が推進パートナーとなっている。今回のメディアセミナーは,定年延長などによる労働者の高齢化により,身体への負担が少なく,仕事を治療を両立できる放射線治療への正しい理解と関心を深めることを目的に開催された。

「がんは放射線治療の時代へ」を講演した東京大学医学部附属病院放射線科の中川恵一氏は,がん対策推進企業アクションのアドバイザリーボード議長を務め,自身も2018年に膀胱がんに罹患したがんサバイバーでもある。日本では,新規がん患者の1/3は15〜64歳の働く世代が占め,がん死亡数も増加している。しかし,がん検診受診率や放射線治療(併用を含む)を受けた患者の割合は欧米に比べて低く,中川氏はこれらの要因の一つに日本人のヘルスリテラシーの低さがあると指摘した。また放射線治療は,幅広い種類のがんに有効性が認められ,痛みや出血などがんに伴う症状の緩和にも有用な治療法だが,一般には副作用や費用,有効性についてまだ誤解が多いと述べた。

中川氏がこのように現状をまとめた上で,がんサバイバーである大門正博氏と藤田聖子氏が加わり,「患者に寄り添うがん治療」をテーマに,ディスカッションが行われた。在職中に前立腺がんに罹患した大門氏は,全摘手術を勧められたが,セカンドオピニオンを経て放射線治療を受けた経験を持つ。その過程を振り返り,自分が納得できる治療を受けることが重要とした。また,乳がん罹患時にがん対策推進企業アクション事務局に在籍していた藤田氏は,部分切除後に放射線治療を受けたが,放射線治療について,体への負担も少なく,選択して良かったとの感想を述べた。

ディスカッション後,再び中川氏が登壇し,2018年に行われたがん患者を対象とした意識調査の結果を報告した。同調査では,放射線治療を受けた患者は自ら治療方針の決定に関与する傾向が強く,セカンドオピニオン受診率も高いことが示されている。他方で,全体の7割の患者が複数の治療法を知りたいと考えているのに対し,実際に医師から説明を受けた患者は4割にとどまった。また,放射線治療を受けた患者は治療満足度が高いという結果が得られた半面,手術などと比べ再発率に大きな差がないにもかかわらず,再発リスクが高いというイメージを持たれていることが示された。中川氏は,患者自身が受けたい治療にたどり着けるようにすることの重要性を重ねて指摘し,患者や市民ががんの治療法に対する情報を持ち,主体的に選択・行動することが重要だと締めくくった。

猪股研次 氏(厚生労働省健康局がん・疾病対策課)

猪股研次 氏
(厚生労働省健康局がん・疾病対策課)

大石健司 氏(がん対策推進企業アクション事務局)

大石健司 氏
(がん対策推進企業アクション事務局)

中川恵一 氏(東京大学)

中川恵一 氏
(東京大学)

 

●問い合わせ先
がん対策推進企業アクション事務局
TEL 03-6441-6574
http://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/

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