JAHISが2022年新春講演会をオンラインで開催

2022-1-27

保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)


岸氏,瀧口氏,山本氏による鼎談の様子

岸氏,瀧口氏,山本氏による鼎談の様子

一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)は,2022年1月19日(水),恒例の新春講演会をオンライン(Webex Events)にて開催した。JAHISでは,例年,年頭に講演会と賀詞交換会を開催していたが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染状況を考慮して,2021年に続いてオンラインでの開催となった。開会の挨拶に立った総務会長の下山赤城氏(日本アイ・ビー・エム)は,「COVID-19の感染拡大が続き先が見えない中で,医療や社会活動を止めることなく経済を回す“ウィズコロナ”の活動が重要になっている。そのカギとなる技術がICTであり,JAHISの会員企業にかかる期待も大きい。2022年も引き続き厳しい状況が続くがさらなる飛躍に期待したい」と述べた。

続いて,JAHIS会長の瀧口登志夫氏(キヤノンメディカルシステムズ)が挨拶した。政府のデジタル田園都市国家構想実現会議は,2021年末に“デジタル田園都市国家構想”の全体像を発表し,地域の課題をデジタル実装を通じて解決する施策に,今年度の補正予算と2022年度の当初予算を合わせて総額5.7兆円を投じることを決定した。施策の柱は,1) デジタル基盤の整備,2) デジタル人材の育成・確保,3) 地方の課題を解決するためのデジタル実装,4) 誰一人取り残されないための取り組みの4つである。瀧口氏は,この中でJAHISに関連する事業として,マイナンバーカードの普及促進,自治体システムの統一・標準化の推進,健康医療介護など準公共分野のデジタル化の推進,オンライン診療を含めた遠隔医療の推進などを挙げ,これらはJAHISが“2030ビジョン”で掲げた,「健康で安心して暮らせるデータ循環型社会の実現」をさらに加速させるものだとした。その上で,「データ循環型社会の前提は,データの精緻化・標準化であり,ヘルスケアDXの実現にとって不可欠なものである。JAHISとしては今後ともデータ利活用の提言や啓発活動,標準化などを通して2030ビジョンの実現に取り組んでいく」と述べた。
また,厚生労働省から医療情報技術推進室室長の田中彰子氏,経済産業省からヘルスケア産業課課長の稲邑拓馬氏,医療情報システム開発センター理事長の山本隆一氏の各氏が年頭に当たって政策動向を含めて挨拶した。

瀧口登志夫 JAHIS会長

瀧口登志夫 JAHIS会長

 

下山赤城 総務会長

下山赤城 総務会長

 

講演会は,最初にJAHIS運営会議議長の色紙義朗氏(キヤノンメディカルシステムズ)が「2022年の年頭にあたって」と題して,JAHISの活動について2021年の振り返りと2022年の活動概要を説明した。特別講演では,「データヘルスがもたらすビジネスグロース」を慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸 博幸氏が講演した。
岸氏の講演は,「工業会(JAHIS)はもっとがんばってほしい」という言葉で始まった。アフターコロナに向けて経済の回復が期待されているが,岸氏は,残念ながらパンデミック以前から世界で唯一低迷していたのが日本経済であり,その主な要因は生産性の低さだと述べた。これを克服するためには,デジタル化によるインプットの効率化や,健康・医療といったデジタル化でさらなる成長が期待できる領域の進展が欠かせない。100年に1度という今回のパンデミックは,急速なデジタル化や価値観の多様化といった大きな構造変化が期待でき,ヘルスケア領域のビジネスに取り組むJAHIS会員企業にとってもイノベーションを起こす絶好のチャンスだと述べた。
また,岸氏は各地で地域活性化プロジェクトに関わる中で,高齢化問題の解決のためには,カルテの電子化や遠隔医療の推進,Personal Health Record(PHR)などの実現が不可欠で,実験や実証ではなく現実的なシステムとして提供することが必要だと痛感したと述べた。しっかりとしたデータベース構築や標準化が必要なことには理解を示した上で,ヘルスケア産業に関わる企業には現実に提供可能なシステムをスピード感を持って開発することを求めた。
最後に,岸氏はデジタル化の本質は従来の体制や価値観を解体して再構築することであり,保健・医療・福祉が縦割りのままでよいのかとも述べ,デジタル化がもたらすヘルスケア産業のあるべき姿を見直し,JAHIS会員企業が大胆にスピード感を持って取り組むことで,日本経済の中に新たなフロンティアを生み出すことができるとエールを贈った。講演を受けて,岸氏に加え,瀧口JAHIS会長,山本MEDIS理事長による鼎談が行われ,JAHISの2030ビジョンを含めて今後のヘルスケアDXの方向性を討論した。
最後に総務会副会長の木戸須美子氏(キヤノンメディカルシステムズ)が,来年こそは対面での新春講演会,賀詞交換会が行えることを願っていると閉会の挨拶を述べて,2時間半のプログラムが終了した。

特別講演:岸 博幸 氏(慶應義塾大学)

特別講演:岸 博幸 氏(慶應義塾大学)

 

●問い合わせ先
一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会
総務部
TEL 03-3506-8010
https://www.jahis.jp/

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