島津製作所が「第99回レントゲン祭・記念講演会」をオンラインで開催

2022-2-14

島津製作所


祭詞・献花を行う上田輝久代表取締役社長

祭詞・献花を行う上田輝久代表取締役社長

(株)島津製作所は,2022年2月10日(木)に「第99回レントゲン祭・記念講演会」を開催した。レントゲン祭は,X線を発見したレントゲン博士の遺徳を偲ぶとともに,新しい技術の発展に向かって決意を新たにすることを目的に,レントゲン博士の命日である2月10日に同社が毎年開催している。99回目となる今回は,昨年に続くオンラインでの開催となった。

式典では,同社常務執行役員医用機器事業部長の青山功基氏が式辞を述べた。青山氏は,同社のX線撮影技術の開発の歴史などについて述べた後,近年の人工知能(AI)活用への取り組み事例を2点紹介した。1点目として,手術用ガーゼなどの遺残リスクを低減する遺残確認支援ソフトウエアを挙げ,2021年12月に薬機法の認可を取得し,回診用X線撮影装置への実装をめざして開発中であるとした。また,AI技術を活用したトモシンセシス再構成処理の最適化などにより,人工関節置換術などをはじめとする整形領域での検査の省力化にも取り組んでおり,今後もAIの活用を進めていきたいと述べた。

青山功基 氏(常務執行役員医用機器事業部長)

青山功基 氏(常務執行役員医用機器事業部長)

 

続いて,代表取締役社長の上田輝久氏が,壇上のレントゲン博士の写真に祭詞・献花を行った。

式典に続き,「AIに見る未来に向けたRadiologyのパラダイムシフト」をテーマに記念講演会が行われた。まず,「AIがみせる未来の放射線医療 その時診療放射線技師は」と題して,小倉記念病院放射線技師部主任の佐保辰典氏が技術講演を行った。佐保氏は,式典で青山氏が紹介した島津製作所のAI開発事例に触れつつ,診療放射線技師の観点から見たAIがもたらす臨床への恩恵として,効率化によるスループットの向上や操作者間の差異を排除する再現性,再構成パラメータの最適化やノイズ低減処理による画質の改善などを挙げた。半面,AIが内包する課題として,学習データの不足や偏り,ラベリングの正確度を挙げ,アルゴリズムの利用法や構造の検証の必要性を指摘した。さらに今後の展望として,臨床現場ですでに実装化されているAIの大半は単独のタスクのみをこなす“弱いAI”だが,将来はさまざまなタスクを実行可能な“強いAI”の実用化が予想されるとした上で,AIの特性を学ぶことでAIと人の棲み分けは可能であると述べた。最後に,診療放射線技師は,医学と情報工学の橋渡し的な役割を果たすべくAIについて学んでいく必要があると重ねて強調し,講演を締めくくった。

佐保辰典 氏(小倉記念病院)

佐保辰典 氏(小倉記念病院)

 

次に,「医療におけるAIの現状と未来〜医療の中で正しく活用していくために〜」と題して,東北大学大学院医学系研究科画像診断学分野教授/東北大学病院AI Labディレクター/病院長特別補佐の植田琢也氏が臨床講演を行った。植田氏は,従来はアルゴリズム考案やプログラム製作など,データサイエンス上の課題が医療AI開発の主体であったが,医療的側面からAI技術を見直す時期に来ているのではないかと提起し,理論・技術を離れ,人間を中心に見据えたイノベーション創出のアプローチである“デザイン思考”に基づく医療的価値の評価が,今後の医療AI推進のカギになるとした。そして,東北大学病院が推進するスマートホスピタルプロジェクトの一環として院内に設置されたAI Labでの研究開発の取り組みや,医療ニーズの探索や医療AI開発を行える人材を育成する「医療AI人材育成拠点プログラム」などについて紹介した。

植田琢也 氏(東北大学画像診断学分野教授/東北大学病院AI Labディレクター)

植田琢也 氏(東北大学画像診断学分野教授/東北大学病院AI Labディレクター)

 

●問い合わせ先
(株)島津製作所
https://www.med.shimadzu.co.jp/

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