日本IVR学会が第51回総会の注目ポイントなどを紹介するプレスセミナーを開催
海外学会との合同セッションや市民公開講座などをハイブリッド方式で予定

2022-5-12


オンラインで行われたプレスセミナーの様子

オンラインで行われたプレスセミナーの様子

日本インターベンショナルラジオロジー(IVR)学会は,2022年6月4日(土)~6日(月)に開催予定の第51回日本IVR学会総会に先立ち,報道関係者を対象としたオンラインプレスセミナーを2022年5月10日(火)に開催した。第51回総会は,「Make it standard」をテーマに掲げ,神戸国際展示場(兵庫県神戸市)での現地開催とLIVE配信,会期後のオンデマンド配信のハイブリッド方式で行われる。また,第16回アジア環太平洋IVR学会(APSCVIR)総会や第14回国際IVR学会(ISIR)総会との合同開催で,各国学会とのJoint Sessionや合同シンポジウムなども予定されている。プレスセミナーでは,同学会広報・渉外委員会委員長の掛田伸吾氏(弘前大学大学院医学研究科放射線診断学講座教授)が司会を務め,総会のテーマや注目ポイントの解説が行われ,関連するセッションなどが紹介された。

同学会理事長で第51回総会の大会長を務める山門亨一郎氏(兵庫医科大学病院放射線科主任教授)は,第51回総会の注目ポイントとして,(1) RFA(ラジオ波焼灼療法)の適応拡大,(2) 産科出血に対する子宮動脈塞栓術,(3) 市民公開講座,(4) 海外学会との合同シンポジウム,(5) 委員会セッション,(6) アジア環太平洋地域の若手IVR医に対する教育セミナー,の6点を挙げ,それぞれの概略を紹介した。そのうちの(3) 市民公開講座については,「がん診療とIVR:RFAの適応拡大を含めて」と「がんの苦痛を緩和するIVR」をテーマにZoomによるLIVE配信とオンデマンド配信が行われることが紹介された。また,2022年4月に「放射線カテーテル治療領域」が日本専門医機構からサブスペシャルティ領域として認定されたことを報告し,IVRの普及に努力していくと述べた。

続いて,第51回総会の注目ポイントに挙げられたテーマなどについて解説が行われた。まず,高木治行氏(兵庫医科大学病院放射線科准教授)が「新しいがん治療(RFAの適応拡大について)」と題して,RFAについて解説した。現在,RFAは小型肝がんに対する標準治療となっているが,2021年12月に腎がんや肺悪性腫瘍,類骨骨腫,骨盤内腫瘍,骨軟部腫瘍に対する適応拡大が承認され,近日中の保険収載が見込まれている。高木氏は,RFAの利点として局所麻酔で施行可能なため患者負担が少なく,治療効果が高くかつ臓器機能を温存できる点などを挙げ,RFA適応拡大によるがん治療の幅が大きく広がると期待を示した。

次に,小野澤志郎氏(杏林大学医学部付属病院放射線科講師)が「女性のためのIVR①:子宮筋腫」と題して,子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(UAE)について解説した。UAEは,子宮を栄養する動脈から小さなビーズを流して子宮筋腫の栄養血管を詰める治療で,治療が短時間ですみ,入院期間も短く社会復帰が早いという利点がある。「産婦人科診療ガイドライン−婦人科外来編2020」(日本産科婦人科学会/日本産科医会編)では子宮筋腫に対する手術の代替治療として推奨されているが,日本国内でのUAE施行数は米国などと比較して少ないのが現状である。小野澤氏は,これらの概要を説明した上で,産婦人科医・IVR医の認識調査や産婦人科・IVR両学会でのJoint Sessionの開催,解説動画の制作などの広報活動といった,UAE施行数の向上のための日本IVR学会の取り組みを紹介した。

小野澤氏に続いて,「女性のためのIVR②:お産の時の大量出血」と題して,ウッドハムス玲子氏(北里大学病院放射線診断科講師/IVR主任)がIVRによる産科出血の止血について解説した。日本は世界的に見ても「お産安全国」と言えるが,2010〜2019年に死亡した妊産婦429人の最大の死因は出血死である。分娩時の大量出血に対しては,通常,子宮収縮薬の投与や輸血,裂傷部縫合などの保存的治療を行い,それらが無効な場合は高次医療施設に搬送され,子宮摘出が行われる。しかし,カテーテルを子宮の血管に挿入し,塞栓物質を注入する動脈塞栓術(TAE)や動脈バルーン閉塞術を行うことで迅速かつ低侵襲に止血でき,妊孕性の温存も可能となる。ウッドハムス氏は,IVRは産科出血の止血や救命における最後の砦であり,産科出血時に適切にIVRを施行するためには,産科医や麻酔科医,助産師のIVRの有効性に対する認識を深め,IVR医のマンパワーの充実や技術向上が必要であると述べた。

最後に,「コロナ患者のIVR」と題して,昆 祐理氏(聖マリアンナ医科大学病院救急医学助教)がコロナ禍におけるIVRの実情や救急診療におけるIVRの重要性などについて解説した。重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では凝固機能障害が生じやすく,ヘパリンなどの抗凝固剤が投与されるほか,体外式膜型人工肺(ECMO)使用時は回路内凝固予防に抗凝固剤を使用するため,出血合併症のリスクが生じる。それに対し,演者の所属する聖マリアンナ医科大学病院では,感染予防や急変対応に努めつつ,出血合併症を伴う重症COVID-19患者3例に対し,合計8回のIVRによる止血を施行したことを紹介した。また,救急診療の現場,特に外傷出血への対応におけるIVRの重要性が急速に高まっているが,IVR診療の偏在により適切な治療が行き届いていない可能性を指摘し,解決方法の一つとしてDXの発達による遠隔IVRを挙げた。

 

●問い合わせ先
一般社団法人日本インターベンショナルラジオロジー学会(日本IVR学会)
https://www.jsir.or.jp/

第51回日本IVR学会総会
https://www.congre.co.jp/jsir2022/


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