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 横浜市立大学附属病院は1991年、横浜・八景島シーパラダイスに隣接する、金沢八景の海に面した自然豊かな環境の中に、医学部附属病院として開院した。2005年には、大学の独立行政法人化に伴い現運営体制・名称へと変更し、横浜市内で唯一の特定機能病院として、高度で安全な医療の提供と質の高い医療人の育成を行っている。診療科目27科、病床数623床、外来患者数は1日に約1800名という規模を誇り、特にがん診療においては、神奈川県内で初めてPET-CT検査を取り入れたほか、外来化学療法室を設置するなど、「市民が心から頼れる病院」という理念に基づいた診療体制の構築に力を注いでいる。また、放射線医学教室では“近未来の放射線医学のあり方”を追究し、放射線科専門医の育成を軸に、ゲノム医科学の研究とその臨床応用を目指すトランスレーショナルリサーチの研究者や、PET-CT、MRI/MRS、MDCTなどをバイオマーカーイメージングととらえたクリティカルパスリサーチおよび個別化医療の実践を目指す臨床研究者など、多彩な人材の育成を目指した取り組みを行っている。
 こうした状況のなか、放射線医学教室では研究体制のさらなる充実を目指し2006年4月、井上登美夫教授を取締役会長(現顧問)、助教の岡 卓志氏を代表取締役社長とする、横浜市立大学発のベンチャー企業、(株)ベイ・バイオ・イメージング(BBI)を設立した。BBIでは、放射線医学教室や産学連携講座と連携し、分子イメージングを1つのツールとして前臨床試験およびヒトを対象とするマイクロドーズ試験等を受注し、創薬研究を支援する事業を行う。大学が企業であるBBIと連携することで、大学からは人的資源や保有する装置などをBBIに提供し、またBBIが導入した小動物用のPET、CT、光イメージング装置を大学が活用して研究を行うという、理想的な研究環境が構築された。この取り組みは、独立行政法人化後の大学運営のあり方を示す1つのモデルケースと言えるだろう。臨床に役立つ成果が生み出される日を目指し、いよいよ本格的な分子イメージング研究が始まろうとしている。

BBIのスタッフ。後列左から松本和雄氏、岡 卓志 代表取締役社長、原 孝光氏、高田由貴氏、三浦大作氏、秋山幸生氏、前列左から熊谷友里氏、康 芸氏、松野裕紀子氏、吉田順子氏。


●横浜市立大学医学部
 〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9
 TEL 045-787-2511(代)
 URL http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~igaku/(医学部)
 URL http://www.fukuhp.yokohama-cu.ac.jp/(附属病院)
●(株)ベイ・バイオ・イメージング
 〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学医学部内
 TEL 045-789-2100(代)FAX 045-789-2277
 URL http://www.baybioimaging.com/


外観

 


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前臨床およびヒトを対象としたマイクロドーズ試験を受注し
より効率的な創薬開発を支援
(横浜市立大学大学院医学研究科放射線医学/
(株)ベイ・バイオ・イメージング)

●岡 卓志先生
(横浜市立大学大学院医学研究科放射線医学助教/
(株)ベイ・バイオ・イメージング代表取締役社長)

 (株)ベイ・バイオ・イメージング(BBI)は、研究に必要なさまざまなインフラを整備して前臨床およびヒトを対象とするマイクロドーズ試験を受注し、効率的な創薬開発を支援することを目的に、2006年4月に設立しました。スタッフは、9名の職員のほか、外部のサポートスタッフを含めると約15名になります。設立までに約1年半の準備期間を設けていますが、この間に、法律的にクリアしなければならないさまざまな問題にも徹底的に対応し、横浜市などとの折衝を重ねてきました。こうしたことは設立後も随時行う必要がありますので、専門的な事務スタッフを配備し、井上教授が公との折衝と全体的なアドバイスを担当し、私が陣頭指揮をとるという形で現在も進めています。また、この1年は、事業としては主に研究機器の導入・整備と、ご依頼いただいた研究内容の整理、機器がなくても行える小規模な研究などを行いました。設立当初は、本当に依頼が来るのだろうかという不安もありましたが、幸いにも昨年度は黒字を計上することができ、機器の導入もほぼ終了しておりますので、いよいよこれから本格的な研究に取り組もうというところです。
 BBIの設立当初予想していたのは、放射能標識製剤化のスタディと、それに付随する PETやCT、蛍光、オートラジオグラフィによるイメージングでした。例えば、あるクライアントが標識製剤を完成直前まで作成し、それをサイクロトロンで最後に標識だけを行い、動物用PETなどのイメージング機器で撮像するというような方法です。しかし実際には、こちらの想定を上回る多様なアイデアが持ち込まれ、大変驚きました。例えば、他では難しいような放射能関係の合成や動物の体内での薬物動態を見るといったスタディです。しかし、よくよく考えれば、こういった依頼があるのは当然のことです。動物用のイメージング装置は高価ですし、法律上の管理にも手間がかかり、きちんと扱える人材も限られていますので各方面からのニーズが高かったのではないかということです。われわれは、さまざまな放射性核種に対応できる体制を整えていますが、想定外の依頼にも対応するため、診療放射線技師のほかに獣医や理学物理士といった新たなスタッフが加わりました。また、動物用のMRIについては現在は所有していませんが、外部の施設と連携しておりますし、非常にニーズが高いSPECTについても、新たに導入することが決定しています。さらに、横浜市大は放射線医学総合研究所と包括協定を結ぶなど、外部の研究機関ともリンクしていますので、特殊な薬剤の標識合成については放医研ともリンクしていきますし、企業との共同研究開発を行ったり、こちらで研究したものをシーズとして発信していくことなども考えています。
 事業のもう1つの大きな柱として、ヒトに対する“アーリーフェーズワン”臨床研究があります。これについては、政府によるマイクロドーズ試験のガイドライン作りが急ピッチで進んでいることもあり、各製薬会社が非常に興味を示しています。かなり本格的な内容にまで話が進展しているものもありますので、近い将来、いよいよ具体的な研究がスタートできるものと期待しています。

電気泳動ゲルや、動物のスライス標本のタンパク質などを蛍光剤で標識し、高感度に検出するバリアブルイメージアナライザ「Typhoon 9400」

「IN Cell Analyzer 1000」について説明するBBIスタッフの三浦大作氏。IN Cell Analyzer 1000では、細胞内の現象を蛍光顕微鏡イメージとして取得し、解析することができる。

小動物用CT装置「eXplore Loucus Ultra」は、フラットパネルが搭載されており、約6〜10cmを約4〜16秒で1回で撮影することができる。寝台は動物用PET装置「eXplore Vista」でも使用可能で、CTとPETの画像をフュージョンをする際の位置合わせも容易に行うことができる。

高分解能な小動物用in vivo PET装置「eXplore Vista」

小動物用in vivo蛍光イメージングシステム「eXplore Optix」。蛍光製剤が投与されたラットやマウスの体内の情報を、生きたまま画像化することができる。

画像解析は人間用のAWワークステーションを使用。画像処理を行うBBIスタッフの松本和雄氏


実験動物用高速スキャンin vivoCTシステム「eXplore Loucus Ultra」
1スキャンあたり最速1秒という高速スキャンにより、形態学的情報をハイスループットで取得できるほか、生理学的な解析も可能。血流量や血管新生、壊死、免疫研究における組織変化、中枢神経研究における脳の灌流などを視覚化することができる。

実験動物用in vivoPETシステム「eXplore Vista」
18F-FDGなどの放射線標識物質により、生きたマウスやラットの生体内の情報を画像化し、機能解析することができる。position-sensitive PMT detectorを搭載し、周辺部の歪みの少ない画像を取得できるほか、1.2mm(3D-OSEM)、1.6mm(FWHM)という高分解能を実現している。
実験小動物用in vivo蛍光イメージングシステム「eXplore Optix」
蛍光標識物質を投与することで、ラットやマウスの体内の情報を生きたまま画像化することができるほか、ライフタイムを測定することにより、蛍光標識物質と内在性蛍光物質とを判別することもできる。また、蛍光標識したペプチドやタンパク質の動態解析や、細胞およびタンパク質の生体内局在解析も行うことができる。
バリアブルイメージアナライザ「Typhoon 9400」
マイクロアレイ解析からプロテオミクス二次元電気泳動解析まで、幅広いアプリケーションを1台でカバーすることが可能な画像解析システム。
顕微鏡による観察からイメージ解析までが可能なセルファンクションイメージャー「IN Cell Analyzer 1000」
細胞内での現象を蛍光顕微鏡イメージ画像として取得し、数値化することで、細胞機能解析を統計的かつ高速に行うことができる。


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