vol.9 骨軟部疾患と闘う。

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2008年6月に新病棟が開院予定
(進化を続ける長崎大学医学部・歯学部附属病院)

 長崎大学医学部・歯学部附属病院の歴史は,1857(安政4)年,長崎奉行所西役所内に設けられた西洋医学伝習所から始まる。長崎海軍伝習所の医学教授として来日したオランダ人医師ヨハネス・ポンペ・ファン・メーデルフォールトがここで医学教育を行った。1861(文久元)年には,日本で初めてとなる約120床のベッドを持つ西洋式病院である長崎養生所が開設され,その後1865(慶応元)年に精得館と改称した。明治以降,公立の医学校・病院として変遷し,1923(大正12)年には,長崎医科大学附属病院となった。昭和に入ると,第二次世界大戦で広島とともに原子爆弾により被災。爆心地に近い同院では,医学部の教職員,学生約850名の命が失われた。
 戦後,1949(昭和24)年に,国立大学設置法の施行により長崎大学医学部附属病院となり,翌年には現在の場所に移転。以後,大学病院の使命を果たしつつ,規模を拡大している。2003年には,別々だった医学部附属病院と歯学部附属病院を統合し,長崎大学医学部・歯学部附属病院に名称を変更。翌年には独立行政法人化により,新たなスタートを切った。現在,同院は,新病棟の建築が進んでいる。新病棟は2008年6月に開院予定。地下1階,地上14階建てで,臓器別にフロアを構成するほか,臨床研究のスペースを確保し,実践的な教育に取り組めるような環境になるという。
 同院の歴史の中で,放射線科は1930(昭和5)年11月に末次逸馬氏が助教授に就任したことに遡る。その後,『長崎の鐘』,『この子を残して』などの著者でも知られる永井隆氏などが教授となり,1953年には病院の診療科として放射線科が設置された。また,1967年には放射線部が開設されている。2007年6月現在,上谷雅孝教授の下,20名の医師が所属。放射線部には30名の診療放射線技師が勤務している。
 MRIは今年,GE社製1.5T装置からSigna HDx 1.5Tに更新した。この装置は,新しいパラレルイメージング法であるGEMにより腹部の広範囲撮像を可能にしたほか,XVREリコンエンジンの採用で従来機種より検査効率を向上させている。同院では,現在,パラメータを調整しながら撮像を行っており,診療放射線技師3名がローテーションで検査を担当している。検査数を部位別に見ると,最も多いのが頭部領域で,その後に腹部領域,整形領域と続く。また,救急での検査も多く,夜間だけでも月12件ほどの撮像を行っている。
 さらに同院では,本年9月,GE社製3T MRIを導入した。これによりMRIは2台体制となり,1日30件の検査枠となった。今後は,1.5T装置との使い分けなども検討しながら運用していくことにしている。放射線科の森川 実講師は,Signa HDx 1.5Tのメリットについて,FLAIR,T2*強調像の画質が非常に良くなったことと撮像時間の短縮化を挙げた上で,3T装置について,次のように述べている。
 「Signa HDx 1.5Tでは,多くのシーケンスが搭載されて使いやすく,特にBRAVOなどは非常に重宝しています。3T装置が稼働すれば,分解能が上がることで画質が向上し,MR Spectroscopy(MRS)やトラクトグラフィでも,より詳細な情報が得られるようになると期待しています」
 放射線科ではさらに,新病棟のオープンに合わせ,64列MDCTを導入する。PACSについても現在,放射線科内だけで運用してきたものを更新し,病院全体でフィルムレス運用に移行する予定だ。大きく生まれ変わろうとしている同院において,放射線科もモダリティやシステムを更新し,進化を続けている。

放射線部スタッフ
前列左から、医療技術部放射線部門・稲富信之放射線技師、放射線科・上谷雅孝教授、 放射線科・井手口怜子医師。後列左から医療技術部放射線部門MR受付・栗山ゆかりさん、医療技術部放射線部門・和氣(わけ)史洋放射線技師、医療技術部放射線部門・中田朋子放射線技師、看護部救急放射線部門・南はるみ看護師


●長崎大学医学部・歯学部附属病院
 〒852-8501 長崎県長崎市坂本1-7-1
 TEL 095-849-7200(代)
 URL http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/

外観
外観



















森川 実 講師
森川 実 講師


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早期関節リウマチのMR画像診断への取り組み
両手同時撮像による負担の少ない検査

稲富信之技師
稲富信之技師



両手同時撮像のために作成された固定器具とバンド。
両手同時撮像のために作成された固定器具とバンド。
バンドは,固定しても被検者に痛みがないようにするため,ネオプレインを素材に採用した。



フットスイッチ
フットスイッチ。
ちょうつがいにも被磁性体のものを使用している。両手が自由にならないため,被検者にはフットスイッチの使い方を十分説明することが,安心感を与えることにつながる。

 長崎大学医学部・歯学部附属病院放射線科では,厚生労働科学研究「関節リウマチの早期診断法の確立及び臨床経過の予測に関する研究」(主任研究者・江口勝美長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・制御講座教授/病院長)において,早期関節リウマチの診断基準づくりのためのMR画像診断に取り組んでいる。これは,「関節リウマチにおける骨変化に関する研究:MRIとX線所見の比較」という研究目的で,分担研究者である上谷雅孝教授の下,行われている。研究方法は,関節痛を発症した症例を対象に,両手を同時にMRIで撮像し,関節リウマチと確定診断された症例を対象に,単純X線撮影で経過観察を行う。
 両手同時にMRIを撮像するという検査方法は国内でも非常に少なく,ほとんどの施設で片手ずつで行っていると上谷教授は説明する。両手同時に撮像する理由は,1回の検査ですむため,造影剤量が少なく,被検者の負担を軽減することができるほか,位置ズレを防げることが挙げられる。撮像には膝用のコイルを使用し,木製の専用固定具の両面に左右の手のひらを密着させ,ネオプレインという素材でできたバンドで固定する。当初は紙を両手で挟むようにして撮像していたが,不安定だったのでこの方法が考案された。固定具とバンドを独自に作成した放射線部の稲富信之技師は,ホームセンターで材料を探し求めたという。
 「ダイナミックMRIでは,撮像時間が2分30秒にも及ぶため,被検者の方が緊張して手の位置がずれてしまいやすくなります。上谷教授からも,両手の位置ズレがあったり,手が浮いてしまうという指摘があったことから,固定具とバンドを作成することにしました。製作にあたっては,被検者の手掌の長さと高さを測定してデータを集めました。また,素材選びでは,磁石を持ってホームセンターに行き,非磁性体のものを探しました」
 撮像に際しては,テーブル上で仰臥位になった被検者の足首から22G留置針でルート確保を行う。その後,被検者に側臥位になってもらい固定具とバンドで両手を固定し,コイルの中心部にセッティングする。T1強調横断像,STIR冠状断像を造影前に撮像した上で,造影剤0.2mL/kgを2.5mL/秒で注入し,50mLの生理食塩水でフラッシュする。撮像は1フェーズ4.4秒で,150秒間行う。検査時間は20〜30分程度である。
 この検査法により,位置ズレのない撮像ができるようになったが,被検者は固定具とバンドで両手が固定されてしまうため,気分が悪くなったときなどにナースコールのボタンを押すことができない。そこで放射線部では,フットスイッチタイプのナースコールボタンを自作した。撮像時には,被検者が事前にフットスイッチを押すテストを行うことにしている。これにより,被検者が安心して検査に臨めるようになった。
 同院では,これまで250例にこの検査法を行ってきた。3T MRIでは両手撮像専用コイルが開発されるとのことで,より精度の高い画像が得られることが期待されている。

Signa HDx 1.5T本体とコンソール

骨軟部領域の検査は週2日検査枠を用意し,放射線科医が立ち会って行われる
Signa HDx 1.5T本体とコンソール。
骨軟部領域の検査は週2日検査枠を用意し,放射線科医が立ち会って行われる。


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世界で唯一のTwin Gradientを搭載した「SIGNA EXCITE 3.0T」
2005年に日本で初めて薬事承認された3.0T MR「SIGNA EXCITE 3.0T」。世界で唯一の2組(Twin)の傾斜磁場システムを搭載することで、高傾斜磁場強度・高S/Nで、局所精査だけでなく、全身広範囲撮影が可能となった。3.0T装置でありながら、最新型1.5T装置とほぼ同サイズを実現している。

「SIGNA EXCITE 3.0T」
Signaシリーズの最上位機種「Signa HDx3.0T/1.5T」
SIGNA EXCITE HDシリーズの性能をさらに強化・拡張した、Signaシリーズの最上位機種。簡単な操作で高画質を実現し、3D撮像で使用される新たなパラレルイメージング法であるGEM(Generalized Encoding Matrix)によって、撮像時間を延長することなくS/Nを向上させる。
「SIGNA EXCITE HD 1.5T」


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