Vol.11 人々の健康のために闘う。

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世界の人々のQOLを向上するEarly Health
形態診断の限界を超える分子イメージングへの期待

熊谷 GE社ではいま、グローバルビジョンとして“Early Health”を掲げています。Early Health、すなわち病気の予知および早期発見は、世界中の人々のQOLの向上につながるものであり、われわれが行う製品開発やサービスの提供などのすべてが、このビジョンに基づいたものです。例えば、これまでとらえることができなかった病変を可視化し、より早期発見につながるような機器開発が挙げられます。また、新たなビジネスを取り込んでEarly Healthを推進し、成果を挙げています。バイオテクノロジーの技術とGEのPET-CTなどの技術を組み合わせることで、早期発見につながるテクノロジーをより効果的に開発することが可能になりました。
中島 われわれの立場から見たEarly Healthは、プレクリニカルな二次予防を指すと考えます。当然、早く、見つかれば治療効果も高く、生存率が向上し、患者さんのQOLも損ないません。これは、がんでは特に顕著です。ただし、早期発見が予後の改善に必ずしもつながらない場合もあります。例えば、進行がきわめて早く、治療が追いつかないがんなどです。逆に、治療の必要のない境界領域の病変などを見つけてしまうこともあります。これは、形態診断を中心とする画像診断の限界と言えるでしょう。そこで期待されるのが、分子イメージングです。個々の細胞の分子の特性から病変の将来像が予測できれば、病理診断を上回る予後判定の可能性があり、その有用性が期待されます。

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Early Healthがもたらす経済的効果
リスクファクターを明確化し、診断効率を高める

中島 予防や早期発見によって医療費が抑制されるなどの経済的な効果は、確かにあると思います。ただ、それが必ず個人の幸せにつながるかということについては疑問もあります。例えば、境界領域の病変が見つかって「様子を見ましょう」と言われた患者さんははたして幸せでしょうか。先端医療はきわめて重要ですが、患者さんに逆にストレスを与えてしまう側面があることも理解する必要があります。
 一方、経済の専門家の方たちには医療についてもっとしっかり研究していただき、われわれが提供する医療がどのくらい意味のあるものかをデータとして示してほしいと思います。医療費はどんどん削減されていますが、社会的貢献度をきっちり評価していただければ逆に、もっと投資すべきかもしれません。そういうことをグローバルな視点で考えるために客観的なデータが必要であり、画像診断はその意味でも重要なデータになりうると思います。

熊谷 たしかに、現状ではまだまだデータ不足ですので、さらに検証を重ねていく必要があると思います。しかし、われわれは社会全体として考えたときに、Early Healthは必ず生存率の向上やQOL、医療費の抑制につながるという信念を持って研究開発に取り組んでいます。
 分子イメージングに関しては、いま、アルツハイマーの早期発見を目指す世界的な研究プロジェクトにGEも参加しています。アルツハイマー診断に役立つ、形態と機能の両方を追究するイメージング技術の開発に、全社を挙げて取り組んでいます。また、遺伝子診断の分野では、例えば乳がんにおけるBRCA1、BRCA2のような家族性遺伝子によるがんについては診断可能な時代になってきました。そこで、バイオサイエンスと画像診断の技術を応用し、こうした遺伝子を可視化するための、形態診断を超えた新しい診断法の開発を目指しています。

中島 リスクファクターは一人ひとり違いますので、テーラーメイドの遺伝子診断は大変重要です。例えば乳がんでは、ハイリスクな人はX線マンモグラフィによる検診ではなく、MRマンモグラフィも含めたより精度の高い診断が望ましく、それ以外の人は検診の間隔が延びてもいいかもしれません。また、冠動脈疾患、肺気腫、肺がんでは喫煙者のリスクが高いので、非喫煙者には検診は必要ないかもしれません。いずれにしても、個人のリスクファクターが明確になれば、Early Healthにおいても画像診断技術はもっと有効に効率良く活用できるはずです。

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Women’s Healthcare,
特に乳がん検診の現状と課題
受診率の増加がもたらす明暗

中島 乳がんの早期発見に有効なマンモグラフィ検診への関心は、近年非常に高まっており、受診者も増加しています。しかし、受診率はまだ十数%ですので、欧米の70%以上にはまだまだ追いついていないのが現状です。その理由には、自分は大丈夫という意識があることが第一位ですが、がんと言われたらどうしようという恐怖、マンモグラフィ検査は痛いのではないかという恐怖、そして、本当に見つかるのかという医療に対する不信感もあると思います。
 実施する側の医療現場にも問題が山積しています。検診マンモグラフィの読影はいま、医療従事者のボランティア精神でなんとかもっているという状況です。そのために、受診率が仮に50%になったとしたら、このシステムは崩壊してしまうのではないかと危惧しています。そうならないために読影医へのインセンティブを上げるなど、何らかの対策が必要です。技術的には、効率化のためにCADを活用するという方法がありますが、まだコンセンサスは得られていません。CADの機能をもっと単純化して、石灰化検出マシーンとしての機能だけでも、読影医の役に立つ使い方ができると思います。
 いずれにしても、検診は受診率と発見率の向上、死亡率の減少はもちろん、費用対効果と医療資源の効率的な使い方が重要です。Early Healthのメリットを実現化するためには、解決すべき課題はたくさんあります。

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平成20年度診療報酬改定へ向けて
ソフト面の差別化や先端医療の評価を要求

中島 平成18年度の診療報酬改定では、(1) 画像診断管理加算が非包括化された、(2) CTとMRIが性能差別化され、高性能装置では若干の増点があった、(3) マンモグラフィの撮影料が増点された、(4) PACS加算が新設されたことなどが成果として挙げられます。特に(1)はドクターフィーに当たるもので、放射線科医が認められたものとして最も大きな成果です。また、(2)と(3)については、画像診断にも質があるということを社会にアピールできたという意味では評価していますが、残念なのは専門医や専門技師がいるかどうかというソフト面も含めた施設基準が採用されなかったことです。さらに、CTとMRIの月2回目以降の減額は、大きな反省点と言わざるを得ません。次の改定では、こうした反省点はもちろん、放射線治療への増点などを要求していきます。
熊谷 診療報酬はわれわれのビジネスにも大きな影響がありますが、日本は高い技術力を求められる非常に大きな市場であることは確かです。世界の中の日本市場の重要性を強調し続けていくことが、われわれの使命と考えています。

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放射線科医、医療機器メーカーが展望する
画像診断の未来

中島 私は未来はとても明るいと思っています。画像診断を含むこの領域は医療の質そのものです。そして、日本人は医療の質に対してさらに厳しく意識していくことは間違いないでしょう。そういう意味では、診療報酬改定でCTやMRIが性能差別化されたことは画期的なことでした。これを進めていけば、最先端医療への国民の理解も深まり、優秀な放射線科医や機器の必要性も理解されるでしょう。これからの時代は医療者側の論理だけでは物事は進みません。国民的なコンセンサスを得ながら進めていくために、メーカーとも協力して啓発活動を行っていく必要があると思います。
熊谷 私も、未来は明るいと思います。医療産業界は非常に厳しい状況にありますが、こういうときこそチャンスだと言えます。新しい技術を次々と生み出すことで他社との差別化を図り、新しい成長の基盤を作るための重要なステップと考えています。Early Healthというビジョンの下、お客様のニーズ、その先にいる患者様のニーズを正確につかみ、それを常に先取りして開発へとつなげていく。そのために、GEが持つ総合力を駆使し、トータルソリューションプロバイダであることを大きな戦略かつ武器にして、最新のニーズに応えるサプライヤーになりたいと考えています。

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中島 康雄 先生
聖マリアンナ医科大学放射線医学教室教授 :
中島 康雄 先生
1977年横浜市立大学医学部卒業。82年聖マリアンナ医科大学放射線医学教室入局。米国スタンフォード大学、アイオワ大学留学を経て、99年に聖マリアンナ医科大学放射線医学教室教授就任。同大学病院医療情報部部長を兼任。2003年から日本放射線科専門医会・医会理事長。2004年から日本乳癌検診学会理事。



熊谷 昭彦 氏 GE横河メディカルシステム株式会社代表取締役兼CEO :
熊谷 昭彦 氏
1984年GEに入社。日本GEプラスチックス(株)代表取締役社長、GE東芝シリコーン(株)代表取締役兼CEOを歴任後、2006年2月に現GEコンシューマー・ファイナンス(株)代表取締役社長兼CEO、およびGE本社のカンパニー・オフィサー(本社役員)に就任し、2007年6月から現職。


熊谷昭彦氏/中島康雄先生

●お問い合わせ先
聖マリアンナ医科大学病院
〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1 TEL 044-977-8111(代)
http://www.marianna-u.ac.jp/hospital/(病院)
http://www.mariannarad.jp/top.html(放射線医学教室)
GE横河メディカルシステム株式会社
〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127 TEL 0120-202-021(カスタマー・コールセンター)
http://www.gehealthcare.co.jp