How to Signa - 幹部拡散強調画像 MR装置の特徴をとらえ、課題をヒントに真に有用な撮像法の確立をめざす。

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How to Signa 躯幹部拡散強調画像
Signaによる拡散強調画像の進め方
小林正人 氏
(財)長野市保健医療公社
長野市民病院診療技術部診療放射線科
小林正人 氏


 各地で行われるGE MR Signaユーザーズミーティングから選ばれた代表が発表を競い合う「Signa甲子園2007」。第3回目の今回、長野市民病院の小林正人氏が、「How to Signa 躯幹部拡散強調画像」と題して特別講演を行った。装置の特徴や課題への理解を深め、より優れた拡散強調画像を得るためのポイントを探る。

 長野市民病院は2007年8月、2台あるMRIのうちの1台を3.0Tに更新した。現在は"Signa HDx"の3.0Tと1.5Tが稼働している。本講演のテーマである拡散強調画像の撮像にあたっては、コイルの選択、脂肪抑制方法の決定、呼吸同期の有無など、非常に多くの組み合わせがある(図1)。そこで今回は、全身の撮像と腹部領域、特に肝臓にポイントを絞ってお話する。
図1
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ポイント1:最大撮像範囲の把握

 最大限の撮像領域を確保するためには、テーブルの最大移動距離を把握する必要がある。当院の場合は最大1464mmであり、最大撮像範囲は1944mmまで設定可能である。しかし、撮像範囲を最大にすると歪みが生じるため、実用範囲は1800mmと考えている。当院では、撮像時の目印となるよう、テーブル移動中心の732mmのところにマジックで線を引いている。また、頭尾方向の入力範囲は±1000mmまでということもきちんと把握して工夫すれば、途中でテーブルが止まることなく、全身の撮像を行うことができる。(図2)
図2
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ポイント2:呼吸によるクロストークの影響

 腹部の拡散強調画像においては、呼吸によるクロストークや不適切な脂肪抑制法、ゴムバンドの圧迫による磁場不均一などが問題となる。そこで、まずは呼吸によるクロストークの影響について述べる。
 当院のSignaで腹部拡散強調画像を撮像する際のGradient Duty Cycleは214msである。この場合、呼吸同期下、自由呼吸下のいずれにおいても、頭尾方向の撮像ではクロストークによるアーチファクトが発生し、SNRがかなり低下する。そこで、吸気速度によって撮像位置がどの程度移動するかを調べた。すると、平均移動距離は4.7mm、最大移動距離は8.7mmであり、5mmのギャップを開けたとしても、最大で3.7mmのオーバーラップがあることがわかった。つまり、呼吸同期を行う際はデータ収集が吸気にかからないように設定し、自由呼吸下では2Acquisitions以上で最大枚数を設定する必要がある。Gradient Duty Cycleとクロストークの関係をきちんと理解することが重要である。(図3)
図3
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ポイント3:適切な脂肪抑制

 図4は、脂肪抑制法のSSRF法とCHESS法の比較である。SSRF法では、横隔膜近傍の肝実質の信号が低下する。一方、CHESS法では、胸郭表層の脂肪抑制が不良になりやすいという問題があるが、当院では肝臓の撮像は必ずCHESS法を適用としている。
 ところで、CHESS法で問題となる胸郭表層の脂肪抑制の不良は、CHESS Pulseの中心周波数をシフトする機能(csf)を積極的に利用することで解決できる。当院で患者10名を対象に肝臓と骨盤部の脂肪抑制T2強調横断像を調べてみたところ、骨盤部の方が中心周波数が平均29.2Hz低いことがわかった。また、脂肪の共鳴周波数は、深部に比べて体表近くではやや値が低くなる。つまり、肝臓内部と胸郭表層では中心周波数にズレがあるため、その調整が必要になる。具体的には、Signa HDx 1.5TのCHESS Pulseは-220Hzを中心に±90Hzの脂肪抑制がかかっているが(図5)、肝臓の撮像では-20〜-40Hz程度シフトすることにより、胸郭表層の脂肪信号は抑制される(図6)。そのため当院では、肝臓撮像時にはシフト量は-40Hz程度までとし、全腹部の撮像では低い側の中心周波数を使用している。 (図4〜6)

図4
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図5
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図6
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全身拡散強調画像

 躯幹部の拡散強調画像を検診に取り入れる動きがあるが、診断能が向上するというエビデンスはいまだ確立していない。全身撮像と、ブレストコイルおよびボディコイルによる乳房と腹部の撮像の組み合わせはほぼ同じ時間内で行うことが可能であり、どちらが有効かを慎重に検討する必要がある。特に、専用コイルによる乳房拡散強調画像は、X線マンモグラフィや超音波検査に付加することにより、病変の拾い上げに非常に有用であると考えている。(図7)
図7
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3.0T MRIの拡散強調画像

 3.0T MRIには、T1強調像のコントラストの低下やRF磁場の不均一などさまざまな課題があると言われていたが、撮像条件を工夫することにより、実際にはそれほど問題にならないというのが実感である。ただし、拡散強調画像については歪みが大きな問題となる。そこで、高いSNRを利用し、位相方向の分解能を向上させることで、歪みを抑えて全身の撮像を行うことが可能になる。また、SNRを時間分解能に当てれば、1.5Tのb=1000mm2/sの画像取得時間(約2分)で、b=3000mm2/sの画像を得ることができる。さらに、ADC mapのノイズの低減と分解能の向上により、前立腺がんではきわめて明瞭な画像が得られている。
 3T MRIはまだまだ評価しなければならない点が多く、工夫が求められるが、アーチファクトなどの課題をヒントとしてとらえ、今後も検討を重ねていきたい。(図8)

図8
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*Signa甲子園2007(MR Signaユーザーズミーティング・全国大会)特別講演 (2007年12月8日)より抜粋

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