CTによる心臓検査の有用性と可能性

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心臓CTの有用性と限界
(演者:古賀久士氏)
古賀久士氏
医療法人天神会 新古賀病院
心臓血管センター内科
古賀 久士 氏
平山篤志 氏
座長: 日本大学医学部循環器内科教授
平山 篤志 氏
Coronary CTAの新たな展開
(演者:陣崎雅弘氏)
陣崎雅弘氏
慶應義塾大学医学部
放射線診断科
陣崎 雅弘 氏
会場風景
会場風景

 第72回日本循環器学会総会が3月28〜30日の3日間にわたって開催された。30日のランチョンセミナーでは、医療法人天神会 新古賀病院心臓血管センター内科の古賀久士氏と慶應義塾大学医学部放射線診断科の陣崎雅弘氏が、注目のCardiac CTをテーマに講演を行った




心臓CTの有用性と限界 (演者:古賀久士氏)

 新古賀病院心臓血管センター内科の古賀久士氏は、「心臓CTの有用性と限界」と題して講演を行った。

 同院では、2005年に16列から64列MDCTに更新し、現在は1日平均7件の心臓CTを行っている。CTの多列化によって心臓CTの診断能は飛躍的に向上し、特に64列MDCTでは、陰性病変的中率はほぼ100%と非常に高く、胸痛症例においては、心臓CTで冠動脈に異常がなければ狭心症は完全に否定できる。そのため、古賀氏は、心臓CT施行後はリスク分類を行うことなく、すぐに次の検査に進むことが可能になり、診断効率の向上につながると述べた(図1)。さらに、臨床上のメリットとして、(1)冠動脈の形態異常を、ACS発症前に発見できる、(2)冠動脈狭窄では、近位、遠位の対照血管径を計測し,かつ病変長を測ることで心臓CTを擬似QCA(定量的冠動脈造影法)として使用できるほか、狭窄部位のCT値を測ることで擬似IVUSとしても使用できる、(3)狭窄度評価が可能なほか、CT値とリモデリング・インデックスとを併せて評価することでプラーク性状診断が可能である、(4)プラークの形状変化やステント内腔の評価が可能なため、PCI後のフォローアップにも活用できる、などを挙げ、多くの臨床画像を提示した。

 一方、心臓CTには、機能評価に限界があるなどの課題もある。2007年に“JACC”(米国心臓病学会誌)に発表された、胸痛患者の中等度狭窄症例の診断に関する論文では、心臓CTを施行した100例中24例で確定診断に至らず、核医学検査が必要であったと報告された。そこで古賀氏は、核医学検査と心臓CTが互いに補完し合う必要があるとし、SPECTとCTの画像データをフュージョンするGE社のソフトウエア、「CardIQ Fusion」について紹介した。

 67歳、男性、維持透析症例では、胸痛の精査で心臓CTを施行したが、非常に強い石灰化があるため血管内腔の評価はできなかった(図2)。またSPECTでは、後壁から下壁にかけて広い範囲で虚血が認められ(図3)、CAGでも右冠動脈近位部に90%狭窄、回旋枝には造影遅延を伴った99%狭窄が認められた。これらの結果だけで梗塞部位を判定することは困難だが、SPECTとCTのフュージョン画像では、右冠動脈は血流の再分布があり心筋へのダメージはなく、回旋枝領域については、一部で再分布が認められないことから、小梗塞を生じていることがわかった(図4)

 古賀氏は、他の症例でもフュージョン画像によって診断能が向上しており、臨床的有用性は高いと評価した。

図1
図1
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図2
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図3
図3
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図4
図4
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Coronary CTAの新たな展開 (演者:陣崎雅弘氏)

 慶應義塾大学医学部放射線診断科の陣崎雅弘氏は、「Coronary CTAの新たな展開」と題して画像表示の観点から講演を行った。

 冠動脈CTで評価可能なこととしては、冠動脈狭窄の検出、プラークボリュームの評価、プラーク性状診断の3つが大きく挙げられる。64列MDCT(図5)では、冠動脈狭窄の診断能は約95%ときわめて高い。しかし、重度石灰化病変では、アーチファクトによって血管内腔が評価できないことが多い。プラークボリュームの評価についてはIVUSとよく相関するデータが出されているが、計測精度はまだ十分ではなく、また、非石灰化プラークの検出能は十分とは言えない。プラーク性状評価については最も期待されていることであるが、診断精度に疑問が残る。さらに、2.5mm以下のステントではアーチファクトによって内腔が評価できないことや、64列MDCTでは被ばく量が多いなどの問題もある。そこで陣崎氏は、これらの課題を解決するための新しい手法について、画像を示しながら紹介した。

 被ばく低減に対して、GE社ではStep and Shoot法を用い、拡張期に合わせてデータ収集することで、被ばく線量を従来の約30%にまで低減化することが可能になった(図6)。この手法は、高心拍患者に対してもβブロッカーを投与すれば適用可能であり、陣崎氏は、画質が低下することなく被ばく低減が図れる画期的な手法であると評価した。

 次に、重度石灰化への対策として、Dual Energy CTが紹介された。これは、80kVと140kVで2回撮影し、CT値の変化率から物質を特定する手法である。GE社では現在、80kVで撮影後、0.23秒で140kVに切り替え、もう一度撮影する方法を採用している。冠動脈の摘出標本を用いた検討では、重度石灰化症例でもヨードとカルシウムが分離でき、狭窄がないことが評価できた。実際、末梢動脈病変の患者さんではヨードと石灰化の分離が可能なことより(図7)、近い将来、心臓への応用が可能になれば、重度石灰化の影響の少ない冠動脈内腔の評価が期待できる可能性があると、陣崎氏は述べた。

 また、冠動脈病変の新たな表示法として、従来のAngiographic ViewにプラークをのせたPlaque Loaded Angiographic Viewという表示法が提唱された(図8)。前述した高分解能CTによりプラークの診断精度が向上すれば、1枚の画像でプラークの局在診断と治療効果判定が同時に可能になると予測される。

 最後に、GE社が開発中の高分解能CTが紹介された。高分解能CTは、理論的には従来のCTの2倍の分解能を持つ。ステント内腔や冠動脈狭窄、プラーク性状の診断能の向上が期待されている。

図5
図5
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図6
図6
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図7
図7
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図8
図8
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*第72回日本循環器学会総会 GE横河メディカルシステムランチョンセミナー(2008年3月30日)より抜粋

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GE横河メディカルシステム株式会社
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