Vol. 9 体幹部におけるVolume MRの有用性 MRIはどこまでCTに迫れるか。最先端のVolumeアプリケーションが新たなるパラダイムを構築する。

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第22回腹部放射線研究会が6月6日、7日の2日間、つくば国際会議場で開催された。6日(金)に行われたGEYMS共催のサテライトセミナーでは、慶應義塾大学医学部放射線診断科の谷本伸弘氏が、「体幹部におけるVolume MRの有用性」と題して、Signa HDx 1.5Tの最新アプリケーションについて豊富な臨床画像を供覧しつつ紹介した。
谷本 伸弘 氏
慶應義塾大学医学部
放射線診断科准教授
谷本 伸弘 氏
角谷 眞澄 氏
座長:
信州大学医学部
画像診断学講座教授
角谷 眞澄 氏
  会場風景
会場風景

 MRIによる体幹部の撮像においては現在、3Dイメージングによる高分解能MRIと、拡散強調像(DWI)やMR Spectroscopy(MRS)などMRI固有の画像という2つの潮流がある。当院では、Signa HDx 1.5Tが稼働しているが、本講演ではこの2つをテーマに、体幹部で有用性を発揮するGE社MRIの最新アプリケーションを中心に紹介する。

 

 




体幹部イメージング
MRIは主役になりうるか?

 MRIには、被ばくがない、造影時の腎機能への負担が少ない、多彩なパラメータによる多彩なコントラストが得られる、血流や機能の情報が得られるなど、多くのメリットがある。被ばくがないため多時相撮像に適しており、空間分解能の向上や、スキャン時間の短縮、脂肪抑制の最適化が図られれば、体幹部では最強であるCTに迫ることができるかもしれない。


● LAVA

 T1強調GRE法は2DのFSPGRに始まり、“LAVA”の登場により3D再構成が可能になるまでの進歩を見せている。LAVAは、脂肪の共鳴周波数に最適化されたIRパルスを照射し、そのNull Point近傍で集中的にデータ収集を行うことで、広範囲の優れた脂肪抑制を実現している。多時相かつ高分解能な2D画像をはじめ、高精細な各種3D再構成画像が得られることが特長である(図1)

 さらに進化した“LAVA-XV”では、12chボディ・アレイ・コイルと、ASSETに代わるGEMという新しいパラレルイメージングを使用している。GEMでは位相方向とスライス方向の両方に加速できるほか、キャリブレーションスキャンが不要になり、撮像時間の大幅な短縮が可能となった。そのため、1回の呼吸停止で全腹部をカバーできるほか、約0.8mmのisotropic voxel imagingによって高分解能、高い画像コントラストが得られ、膵管や痔瘻などの非常に複雑な走行も3D再構成で明瞭に描出できる(図2)

 次に、“LAVA-DE”(3D Dual Echo)(W.I.P.)では、MEDAL(W.I.P.)という再構成法を用いて、1回の撮像でIn-Phase、Out-of-phase、水画像、脂肪画像を同時に得ることが可能となった。脂肪を含むHCC(図3)や、脂肪肝、副腎腺腫、皮様嚢種の診断、腎の微小なAMLの診断や脂肪量の測定にも有用である。

図1
図1
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図2
図2
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図3
図3
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●IDEAL(W. I. P.)

 “IDEAL”は3-Point Dixon法を用いた再構成法で、FSEとの組み合わせもでき る。LAVA-DE(W.I.P.)と同様に、1回の撮像でIn-Phase、Out-of-phase、水画像、脂肪画像を同時に得ることができる(図4)

図4
図4
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●Cube(W. I. P.)

 3D-T2強調像(FSE)は、isotropic voxel imagingが可能で、SNRがきわめて高く、T2強調とプロトン密度強調の2つのコントラストを得ることができる。

 新しいパラレルイメージングのARCを用いた3D-FSE法の“Cube”では、FOVを狭めることが可能である。また、エコーを得る際に、refocusing pulseを初めは小さく、後半は大きくすることで、信号強度が一定に保たれ、SARとblurringが減少した。図5のように、約5分の撮像時間で冠状断、矢状断の鮮明なT2強調像が得られる。またCubeは、骨盤領域への応用も可能である。

図5
図5
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● 3D FRFSE eMRCP (enhanced MRCP)

 “3D FRFSE eMRCP”では、Partial Kzを用いてスキャン時間を約25%短縮し、blurringを軽減する(図6)

図6
図6
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両側乳房イメージング:VIBRANT

 “VIBRANT”は、両側乳房を同時に3D撮像できるシーケンスであり、非常に高分解能な画像を得ることができる。両側多発病変の検出や、化学療法後の効果モニタリングなどで有用性を発揮している。

 さらに、“VIBRANT-XV”では、4chから8chのブレスト・アレイ・コイルとなり、空間分解能、時間分解能が向上したほか、乳腺のMR Spectroscopy(BREASE)も可能になった(図7)

図7
図7
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血管系3Dイメージング:TRICKS

 “TRICKS”は、3Dデータ収集領域を4つのセグメントに分け、コントラストに寄与する中心データを繰り返し収集することで時間分解能の高い3Dデータを収集するアプリケーションである。時間分解能が従来のMRAの4倍速、造影剤到達タイミングを計る必要がない、動脈相だけを取り出せる、flow dynamicsがわかる、コイルを選ばない、などのメリットがあり、四肢末梢や、呼吸停止のできない小児のMRAに有用である。

 また、“TRICKS-XV”では、ASSETを加えることで時間分解能が従来のMRAの 8倍になるほか、静止画との重ね合わせも可能となった(図8)

図8
図8
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これからの体幹部MRI

 今後は、高分解能、拡散強調像による機能評価、造影剤の進歩、さらに3Tの標準化が進むことで、CTの適応の多くがMRIに置き換えられていくのではないかと期待している。

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*第22回腹部放射線研究会 GE 横河メディカルシステム サテライトセミナー
(2008年6月6日)より抜粋

●お問い合わせ先
GE横河メディカルシステム株式会社
〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127 TEL 0120-202-021(カスタマー・コールセンター)
http://www.gehealthcare.co.jp