Vol.10 新世代のSPECT-PET装置の導入 越谷市立病院放射線科 真野 聡

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 当院では、新しい世代のSPECT-PET装置「Infinia8 Hawkeye4」(図1)を2009年3月に導入しました。
 装置導入にあたり、当院で検討した背景から機器導入後の状況までを含めてご紹介します。
 これからSPECT装置の更新を検討されているご施設の参考になれば幸いです。

越谷市立病院放射線科
真野 聡

図1 装置外観
図1 装置外観
s 当院の現状

  越谷市は埼玉の南東部に位置し、古くは日光街道の宿場町として栄えた町です。戦後の高度経済成長の中、東京のベッドタウンとして発展しました。現在、人口は32万人となり、埼玉南東部の中心的な役割を果たしています。

  当院は、1976年(昭和51年)にオープンし、病床数は481床、内科、外科、脳神経外科など18の診療科を持つ総合病院で、市内だけでなく、周囲の5市1町の患者様を受け入れています。地域の中核病院として地元医師会と手を携えて、地域医療の発展に寄与することをめざしています。昨今の公的病院では財政難が伝えられていますが、当院もその例外ではなく、大型装置の更新は遅れているのが現状です。

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s 装置更新前の放射線科の状況

 当院の放射線科は、医師2名、診療放射線技師19名、事務・タイピスト9名です。装置は一般・救急撮影装置4 台、マンモグラフィ1台、透視・IP撮影装置3台、CT 2台、MRI 2台、血管撮影装置2台、放射線治療装置1台となっています。

  RI装置は、前回の装置更新が1990年に行われ、全身用と頭部専用SPECT装置の2台が稼働していました。2003〜2007年の検査状況(図2)は、骨シンチが40%、脳血流シンチと心筋シンチが20%、ガリウムシンチが7%程度と、検査の傾向はほぼ同じでした。ここ数年は検査件数が徐々に減少し、特に2008年7月から始まったDPCにより、全盛期の約20%減となっていました。

図2  当院におけるSPECT装置の稼働状況
図2 当院におけるSPECT装置の稼働状況

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s 装置更新に当たっての条件

 SPECT の更新に当たり、装置の選択肢は大きく3つでした。
  (1) ガンマカメラのみの装置
  (2) 吸収補正用CTを備えたガンマカメラ
  (3) 診断用CTを備えたガンマカメラ

 前回更新から18年目にしてやっと訪れた更新のチャンスであり、次の更新までも同様の期間になるものと考え、約8か月かけて慎重に機種の選定を行いました。その際、放射線科と事務部からは以下のような要望がありました。
 ●放射線科の要望
  ・ CT付きの装置がほしい(診断能を上げたい)
  ・ 放射線科医の仕事量の増加は極力抑えたい
 ●事務部の要望
  ・検査件数を増加したい
  ・初期導入コスト、ランニングコストの低減
  ・装置は1台

 第1に考えたのは、やはり“CT付きであること”でした。RI の機能診断にCT の形態診断が加わることで、確実に診断能が向上すると考えました。併せて、CTによる吸収補正マップを用いて吸収補正ができるので、画質の向上にもつながります。“診断用CTの搭載”も検討しましたが、被ばくの面と放射線科医の仕事量の増加を考えると、“吸収補正用CT”が第一候補になりました。吸収補正用CTの画像(140kV、2.5mA、14sec/slice)は低線量ながら満足のいくもので、位置確認をするには十分なものでした。CT の管球の負担が少なく長持ちするということで、ランニングコストの面もクリアされました。

 第2に考えたのは、検査件数を増やすことです。装置が2台から1台になりますが、タイムスケジュールを変更することで、いままで行っていた検査数はこなせると考えていました。その上で、いままでできなかった新しい検査がで可能になれば、検査数は増加するはずです。特に、件数の落ち込みが大きかった腫瘍領域の検査の増加につなげることを考えたときに、選択肢として上がったのが「Infinia8 Hawkeye4」でした。


 この装置は、1インチのStarBriteクリスタル(図3)と95本のPMT(光電子増倍管)を搭載し、“PET 画像”が撮像できるハイブリッド装置です。一番心配だったのは“画質”です。十数年前に登場したSPECT-PET装置は、511keVを収集できるだけで画像にならず、SPECT側にも悪影響がありましたが、それでは困ります。そこで、導入前にこの装置が実際に稼働している病院の画像を見せてもらいました。この装置では、SPECT とPETの収集モジュールが分かれており、StarBriteクリスタルの効果もあって、SPECT、PETともに満足のいく画質が得られていました。また、PET 画像では、CT による吸収補正の効果が顕著に出ていました(図4)。

図3 StarBrite クリスタルの構造
図3 StarBrite クリスタルの構造

図4 PETの臨床画像 a:CT吸収補正あり b:CT吸収補正なし
図4 PETの臨床画像
a:CT吸収補正あり
b:CT吸収補正なし

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s 装置導入後の状況と今後の課題

 装置は1台になりましたが、装置2台を設置していた広いフロアを、検査室、操作室、多目的スペースに分け、念願だった更衣室も作ることができました。新しい装置になって、骨シンチとガリウムシンチはホールボディの撮像だけでなく、SPECT を多く施行するようになったので、1人当たりの検査時間が少し延長しました。心筋シンチでは、QGS(quantitative gated SPECT)解析や応答関数補正(Evolution)などを導入し、いままで以上の情報を医師に提供しています。また今後は、Volumetrix Suite(図5)という、外部CT のデータを使用した自動重ね合わせソフトの臨床応用など、さまざまな最新のソフトウェアを使いこなし、診断に役立てていくことが課題です。

図5 Volumetrix Suite
図5 Volumetrix Suite

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s おわりに

 装置に関していいことずくめのように書きましたが、実際に、当院のような低コストで幅広く、かつ質の高い医療が望まれている施設には、まさに“ちょうどいい”装置だと思います。院内で発生した検査は院内で処理していくことが、当院のような中規模病院にできる最大限の働きであり、患者様にとってやさしい医療だと思います。準備が整い、8月からはPET検査も始まりました。今後も核医学検査から診断に有益な多くの画像情報を提供するべく、検討を重ねていきたいと思います。


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GE社のSPECTについてはこちらをご参照ください。

●お問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
(2009年8月1日より社名が変更になりました)
〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127 TEL 0120-202-021(カスタマー・コールセンター)
http://www.gehealthcare.co.jp