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別冊付録

User's Report:Discovery MR750 3.0T
千葉大学医学部附属病院における使用経験
頭頸部領域における初期使用経験とFLEX,IDEALによる脂肪抑制効果の評価

本折 健(千葉大学大学院医学研究院放射線医学教室)
桝田喜正(千葉大学医学部附属病院放射線部)

3T MRIの登場により,われわれはS/Nの上昇という利益を簡単に享受できるようになった。1.5T MRIが登場した当時,“1.5Tは頭部に,頭頸部および体幹部は1.0T以下のMRI装置”と言われていたように,3T MRIのメリットも頭部領域で先行してきた。しかし,全身のどの領域の検査においても1.5T MRIが標準となった歴史が,再び3T MRIでも起こると確信できる装置としてGE社製「Discovery MR750」が登場した。3T MRIの解説で幾度となく目にしてきたネガティブ評価,具体的にはSARの問題によるパラメータの制限,磁化率効果によるアーチファクトの増大や画像の歪み,磁場の不均一性による脂肪抑制の問題,SE法におけるT1強調画像のコントラスト低下などがあるが,これらはいまや過去のものになりつつある。よく指摘されてきた,体幹部におけるB1不均一の問題もそれほど意識するレベルではなく,まさに,いままでの1.5T MRIと同じように,3T MRIを使用できる。その画像は,身近なテレビに例えるなら,地上デジタル画像を見た後に昔のアナログ画像には戻れないといった衝撃である。そこで本稿では,Discovery MR750の当院における初期臨床使用経験を,頭頸部領域を中心に報告する。

千葉大学医学部附属病院

Discovery MR750の特長

1.頭部領域への臨床応用

すでに多くの施設で3T MRIが使用されているが,それらの装置との違いがわかるような画像を提示したいと考え,今回はあえて拡散テンソルトラクトグラフィやファンクション画像など,ある程度作り込む画像は避けた。
最も基礎的な画像として知られるSpin Echo(SE)法のT1強調画像は,3T MRIでの頭部検査では白質/灰白質コントラストが不良となるため,SPGR法やT1 FLAIR法などが用いられる。3T MRIにおいては,1.5T MRIよりも1.5倍ほどT1緩和時間が延長することが原因と言われている。しかし,Discovery MR750では,良好な白質/灰白質コントラストをつけたSE法T1強調画像の撮像が可能となっている。脳腫瘍の経過観察を行っている症例における1.5T MRIとDiscovery MR750のSE法T1強調画像を供覧する(図1)。十分なコントラストとともに,高いS/Nを一目で実感できることと思われる。また,TOF(time of flight)法を用いたMR Angiography(MRA)は,T1緩和時間延長による制止部の信号抑制効果とS/Nの向上から,3T MRIが有利とされており,そういった従来言われている3T MRIの長所も,もちろん体感できる(図2)。

図1 3Tと1.5TにおけるSE法T1強調画像の比較
図1 3Tと1.5TにおけるSE法T1強調画像の比較
a:(1.5T)TR/TE 400/10,マトリックス320×256,NEX1,撮像時間 1分51秒
b:(3T)TR/TE 580/9,マトリックス320×256,NEX1,撮像時間 1分43秒

図2 3Tと1.5TにおけるTOF法を用いたMRAの比較
図2 3Tと1.5TにおけるTOF法を用いたMRAの比較
a:(1.5T)TR/TE 29/6.9,マトリックス256×256,NEX1,撮像時間 5分01秒
b:(3T)TR/TE 22/2.8,マトリックス384×224,NEX1,撮像時間 4分46秒

2.耳鼻科領域への応用

頭頸部領域では,副鼻腔や体表の凹凸などから磁場の均一性が問題となり,3T MRIでの報告はあまり見かけない。しかし当院では,耳鼻科領域においてもDiscovery MR750で数多くの検査を施行しており,その中からあくまでもルーチン検査として行われた症例をいくつか供覧したい。
まずは,耳下腺下極のワルチン腫瘍である(図3)。STIR,SE法T1強調画像,拡散強調画像,T2強調画像,脂肪抑制Gd-DTPAダイナミック造影検査が行われている。下顎周囲においても均一な脂肪抑制効果が得られており,拡散強調画像も高画質である。造影検査における脂肪抑制は,本検査時にはLAVA-FLEXを選択している。LAVA-FLEXは,体幹部で有用とされているシーケンスであるが,その他の領域にも広く応用可能であることがわかる。FLEX(LAVA-FLEX,VIBRANT-FLEX)も後述するIDEALも,フィールドマップを利用してピクセルごとの局所磁場不均一を計算し再構成するアプリケーションであり,FLEXの場合,ダイナミック撮像はもちろん,息止め時や乳腺領域にも使用可能である。
次に,上顎洞腫瘤(図4)であるが,上顎洞周囲の信号が均一であり,眼窩の脂肪抑制効果も非常に良い。本症例では,脂肪抑制Gd-DTPAダイナミック造影検査はIDEALで行っている。矢状断にて3Dでデータ収集を行っており,図4に提示している軸位断像・冠状断像はともに,矢状断で収集したデータからの再構成画像である。IDEALはFSEシーケンスや3D-GRE/SPGRで使用可能であり,局所磁場不均一を克服し,全身制覇を達成したとするGE社の自信にも納得できる画像である。
図5に,口腔底腫瘍の画像を供覧する。STIR,T1強調画像,CHESS法による脂肪抑制Gd-DTPAダイナミック造影画像であるが,画質はどれも申し分ないと思われる。CHESS法においても均一な脂肪抑制を示すあたりは,Discovery MR750の底力を感じる。

図3 左耳下腺下極のワルチン腫瘍
図3 左耳下腺下極のワルチン腫瘍
a:STIR軸位断像 / b:T1強調画像軸位断像 / c:拡散強調画像軸位断像(b値1000)
d:ADC map / e:T2強調画像冠状断像 / f:LAVA-FLEXによる脂肪抑制造影T1強調画像軸位断像

図4 左上顎洞血瘤腫
図4 左上顎洞血瘤腫
a:STIR軸位断像 / b:T1強調画像軸位断像
c:IDEALによる脂肪抑制造影T1強調画像軸位断像(矢状断像からの再構成画像)
d:IDEALによる脂肪抑制造影T1強調画像冠状断像(矢状断像からの再構成画像)

図5 口腔底腫瘍
図5 口腔底腫瘍
a:STIR軸位断像 b:T1強調画像軸位断像
c:T1強調画像冠状断像
d:CHESS法による脂肪抑制T1強調画像軸位断像

3.MRAへの応用

当院は,1.5T MRIで4D-TRACK(4D time-resolved angiography using keyhole)法によって時間分解能を大幅に改善するMRAを行っていたが,Discovery MR750においてはTRICKS(time-resolved imaging of contrast kinetics)で施行可能となっている。
図6に,左足背の血管奇形の描出能を比較提示する。本来は,時間分解能が比較できるため動画が良いのだが,ここでは静止画であることが残念である。
また従来,3T MRIではRF磁場の均一性の問題からほとんど行われることのなかった本体内蔵ボディコイルでの検査であるが,Discovery MR750では可能である。大動脈縮窄症の胸腹部4D MRAを,ボディコイルとTRICKSの組み合わせで施行した画像を提示する(図7)。こちらも動画を提示できないのは非常に残念である。

図6 3Tと1.5Tにおける左足背の血管奇形の描出能の比較(4D MRA)
図6 3Tと1.5Tにおける左足背の血管奇形の描出能の比較(4D MRA)
a:(1.5T)TR/TE 4/1.5,FA 35°,スライス厚 1.6mm,NEX1
b:(3T)TR/TE 3/1.7,FA 20°,スライス厚 1.6mm,NEX0.5

図7 本体内蔵のボディコイルとTRICKSによる大動脈縮窄症の胸腹部4D MRA(Volume Rendering表示)
図7 本体内蔵のボディコイルとTRICKSによる大動脈縮窄症の胸腹部4D MRA(Volume Rendering表示)
a〜f:TR/TE 3/1.1,FA 12°,スライス厚 3mm,マトリックス320×224,NEX0.5,FOV 420mm
*fはbの時相のMIP像

まとめ

以上,はなはだ簡単ではあるが,当院で行っているDiscovery MR750によるルーチン検査およびシーケンスの一部を紹介した。Discovery MR750が,誰でも普通に使える優れた臨床機であることがご理解いただけたと思う。そして,ここでは紹介していない研究装置としての使用においても,底知れぬ可能性があることも事実だと感じている。

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