GEヘルスケア・ジャパン

ホーム の中の inNavi Suiteの中の GEヘルスケア・ジャパンの中の Technical Noteの中のHigh Definition CT 「Discovery CT750 HD」

Technical Note

2011年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

CT−High Definition CT 「Discovery CT750 HD」

平本卓也
CTセールス&マーケティング部

64列CTが登場して以来,心臓CT検査は加速度を増すように普及し,いまでは一般的に行われる検査の1つになったと考えられる。これは,2008年の診療報酬改定において,冠動脈CT加算が設けられたことからもうかがい知ることができる。心臓CT検査は,血管造影検査と比較して侵襲性が少なく,3次元的な立体把握が簡便であり,そして,患者様においては経済的なメリットがあると報告されている。特に,NPV(negative predict value:陰性適中率)が非常に高いことから,これまで冠動脈狭窄病変の除外診断を目的としたスクリーニング検査として用いられることが多かった心臓CT検査ではあるが,最近では,精密検査やフォローアップなど多岐にわたって応用されるようになってきた。
しかし,依然として限界もある。高度石灰化病変における狭窄率評価,ステント内再狭窄の評価,CT値計測などの精度は,まだまだ改善の余地があるとされている。これらの問題の根本的な原因は,CT値の高い高吸収体の“blurring”によるボケの影響である。言い換えれば,空間分解能が向上すれば,これら複数の問題点を克服することができる。
2008年の北米放射線学会(RSNA)で発表した「Discovery CT750 HD」*1(以下,CT750 HD:図1)は,弊社64列ボリュームCT「LightSpeed VCT」*2の性能を単純に拡張したものではなく,CTの構成要素であるX線管球,検出器,サンプリング技術を新たに開発,製品化することで,長年改善されることのなかった空間分解能の向上を実現している。

図1 High Definition CT「Discovery CT750 HD」
図1 High Definition CT「Discovery CT750 HD」

CT750 HDは,ガーネットの結晶構造を利用した新しいX線検出器“Gemstoneディテクタ”を搭載している。この検出器は,従来のX線検出器と比較して,X線応答速度(Primary Speed)が約100倍*4の0.03μsec,40msec後残光特性(after grow)が1/4*4の0.001%まで改善しており,高速応答性が大きな特長の1つとなっている。この特長により,1回転中におけるサンプリング数の増加を可能とし,サンプリングを高密度化することで高分解能化を実現している。従来の64列CTと比較してサンプリング数が2.5倍*4となり,通常の撮影においては2496ビュー/回転,心臓撮影において1662ビュー/回転に増加したことで,面内空間分解能が33%*3向上した(図2)。

図2 スリットファントムによる空間分解能の比較
図2 スリットファントムによる空間分解能の比較

一般的に空間分解能が向上すると,そのトレードオフの関係からノイズ成分が増え,その程度は空間分解能の改善率の3/2乗におよそ比例すると言われている。一例として,CT750 HDのある再構成条件においては,従来と比較して空間分解能が23%向上*4するが,このときのノイズ成分は36%増える。この場合,ノイズ成分を従来CTと同程度に抑えるために必要な管電流は,従来CTの約1.9倍も必要となり,せっかくの高分解能による価値が被ばくの増加によって半減してしまう。これに対しCT750 HDでは,被ばくを増加することなく高分解能とノイズ成分をバランス良く両立するために,新しい画像再構成法“ASiR(Adaptive Statistical iterative Reconstruction)”を搭載している。ASiRは,逐次近似法を応用し,空間分解能を劣化させることなく統計的なノイズパターンを逐次的に再計算することで,ノイズ成分を大幅に削減する新しい画像再構成法である(図3)。

図3 従来型画像再構成法とASiRの違い
図3 従来型画像再構成法とASiRの違い

心臓CT検査の課題の1つとされている被ばく線量の低減に関して,CT750 HDは解決策を提供している。GEが世界に先駆けて発表・製品化を実現した心臓撮影法“SnapShot Pulse”と,逐次近似法を応用した新しい画像再構成法ASiRを併用することで,心臓CT検査における大幅な被ばく低減を実現している。SnapShot Pulseは,プロスペクティブゲーティング法を用いることで,従来の一般的な心臓CT検査で受ける被ばく線量と比較して,最大83%の被ばく線量を低減*4する。また,ASiRを用いれば,従来の方式と比較し,最大50%の管電流で撮影しても従来と同等の画像ノイズの再構成画像が得られる*4。これにより,従来の心臓CT検査と比較して,最大95%被ばく線量を低減*4することを可能としている(図4)。

図4 低被ばく心臓撮影ケース SnapShot Pulse/ASiR/100kVp/275mA/0.35sec
図4 低被ばく心臓撮影ケース
SnapShot Pulse/ASiR/100kVp/275mA/0.35sec

高度石灰化病変を除去する新しいアプローチとして,新しい撮影技術であるデュアルエナジーが注目されている。対象物を低い電圧(80kV)と高い電圧(140kV)で撮影し,X線のエネルギーによって各物質の線減弱係数が異なるという性質を利用することで任意の物質を弁別するのが,デュアルエナジー撮影における物質弁別(Material Decomposition)の基本的な考え方である。
CT750 HDのデュアルエナジースキャンは,GSI(Gemstone Spectral Imaging)と呼ばれ,前述のGemstoneディテクタと,1回転中に80kVと140kVを高速に切り替える“Fast kVスイッチング”により,一対のX線管球と検出器でありながら,1回転でのデュアルエネルギー撮影を実現している。この方式は多様な優位性を持ち,2つの電圧データの時間差がほとんどないため,より正確かつ精細なデュアルエナジー画像を得ることができる。Fast kVスイッチングは,従来CTの2.5倍のビュー数を得ることのできるハードウェアがあるからこそ可能となった方式であり,すべての技術が密接にかかわり合い,CT750 HDの性能を実現している。現在GSIを使って,心臓以外の体幹部血管における石灰化除去の精度,有用性の評価が各施設で行われている。将来的には,冠動脈の高度石灰化病変に適用されるよう研究・開発が進められている(図5)。

図5 GSI臨床例:CTA右頸動脈石灰化除去 MD:Material Decomposition
図5 GSI臨床例:CTA右頸動脈石灰化除去
MD:Material Decomposition

*1 マルチスライスCTスキャナ LightSpeed 医療機器薬事承認番号 21100BZY00104000号 類型 Discovery CT750 HD
*2 マルチスライスCTスキャナ LightSpeed 医療機器薬事承認番号 21100BZY00104000号 類型 VCT
*3 当社比(撮影の状況,条件によって向上率は異なります。平均的に33%程度の分解能の向上を実現しています)
*4 当社比

モダリティEXPOへ

【問い合わせ先】 CTセールス&マーケティング部  TEL 0120-202-021