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Technical Note

2011年7月号
トモシンセシスの技術と特徴

DR−Discovery XR650におけるトモシンセシスの技術と特長 ─一般撮影室でのトモシンセシス“VolumeRAD”

植田智子
X線営業部
図1 Discovery XR650のVolumeRAD
図1 Discovery XR650のVolumeRAD

現在GEヘルスケアでは,“VolumeRAD”というトモシンセシス機能を,一般撮影装置である「Discovery XR650」に搭載し販売している。VolumeRADを製品化したのは,2006年である。CTやMRIなどの設備が充実する中,VolumeRADは,1回の断層走行で撮影(約12秒)が可能であることなどから,検査フロー全体の改善や受診者の負担軽減が期待でき,現在では導入施設も増え,さまざまな部位に用いられている。本稿では,本機能の技術と特長について述べる(図1)。

■VolumeRADを実現させる要素

1.FPD
GEヘルスケアでは,自社でフラットパネルディテクタ(FPD)の設計・開発・製造を行っている。ヨウ化セシウムを用いた間接変換方式を採用し,ピクセルサイズは200μmとしている。このピクセルサイズは,VolumeRAD撮影時においてもpixel binningすることなく,同サイズの200μmで行っている。データ収集は,ラインごとにA/D変換を行うことで,ノイズの発生を抑え,高速動作を可能にするparallel processing方式としており,1回の走行で最大60照射まで行うが,そのデータを高速で収集することを可能にしている。

2.X線発生装置と一体型FPD
トモシンセシスを一般撮影装置に搭載したことにより,一般撮影ならではの情報,例えば,立位負荷状態,機能位といった自由なポジショニングで行うことができる。また,X線管球のsweep方向は,長軸(上下)方向撮影だけでなく,クロスラテラル(左右)方向撮影を選択して実施できるなど,関節面や,体軸,患者さんの状態などを考慮した撮影が可能となっている(図2)。これは,立位システムのみならず,臥位のシステムでも可能である。単純X線画像と同じ体位のまま,プロトコールの設定のみですぐに検査を実施できることから,救急など臨床の場面に応じた幅広い対応が可能である。

図2 sweep方向:立位システムでの撮影の場合
図2 sweep方向:立位システムでの撮影の場合

3.画像再構成アルゴリズム
GEヘルスケアでは,一般撮影装置に搭載するトモシンセシスの再構成アルゴリズムとして,さまざまな手法の研究開発を行い,比較検討の結果,Specialized Filtered Backprojection法(SFBP:GE特許2007)を開発し,最善のアルゴリズムとして搭載している(図3)。これは,FBP法の迅速な演算処理などの良い点を生かしつつ,アーチファクトなど画質課題の解決をするためのフィルタファイリング技術を改善したものである。本法では,フィルタとして,linear-ramp関数,windowing関数,4次多項式関数の3種類を組み合わせる特別な空間周波数フィルタを設計し,これを用いてfiltered backprojectionを行い,三次元画像再構成を実現している。

図3  SFBP(Specialized Filtered Backprojection:GE特許)
図3 SFBP(Specialized Filtered Backprojection:GE特許)

■撮影室におけるVolumeRADの手順

VolumeRAD撮影の手順を,以下に示す(図4)。
Step(1):ポジショニング
Step(2):スカウト撮影
Step(3):トモシンセシス撮影
Step(4):必要に応じて画像再構成
このように,非常にシンプルな手順であることから,追加撮影の1つとして実施されている。

図4  トモシンセシスの流れ
図4 トモシンセシスの流れ

■臨床アプリケーションとして

現在,VolumeRADは種々の部位において利用されている。

1.胸部領域
胸部領域は,対象疾患の特性が多彩で,疾患が,その複雑な構造により,観察が難しいとされていることから,VolumeRADの有用性が期待されている。図5は,単純X線撮影において,右上肺野で第1肋骨と第2肋骨との間で肋軟骨の石灰化に隣接する部分の小結節影を認め,VolumeRADで明瞭に観察できたケースである。

図5 胸部領域の臨床画像比較 (画像ご提供:聖隷沼津健康診断センター様)
図5 胸部領域の臨床画像比較
(画像ご提供:聖隷沼津健康診断センター様)

2.整形外科領域
整形外科領域は,VolumeRADが高く評価されている領域であり,特に関節疾患は関心を集めている。メタルアーチファクトなどの影響を受けやすいと言われるインプラント症例の撮影についても関心が高い。立位荷重撮影やX線管sweep方向の選択などを工夫しながら使用されている(図6)。

図6 整形外科領域の臨床画像比較 (画像ご提供:東京女子医科大学東医療センター様)
図6 整形外科領域の臨床画像比較
(画像ご提供:東京女子医科大学東医療センター様)

3.その他の領域
腹部や泌尿器分野において運用されているケースもある(図7)。

図7  腹部領域の臨床画像比較 (画像ご提供:Dr. Sian Phillips, Princess of Wales Hospital Bridgend, Wales, UK)
図7 腹部領域の臨床画像比較
(画像ご提供:Dr. Sian Phillips, Princess of Wales Hospital Bridgend, Wales, UK)

GEヘルスケアでは,トモシンセシスの機能を,一般撮影装置に搭載することにより,予約を必要とせず,検査時の追加撮影の1つとして簡単に取り入れられることを考えている。VolumeRADは,広く認知されてきたと思われるが,検査までの待ち時間を削減し,検査時間そのものを短く,また,被ばく線量はできるかぎり抑えるなど,患者さん,医療従事者が負担なく導入できることが大切な要素と考える。今後,より多くの施設で,VolumeRADを運用いただき,臨床において,効果的に使用していただきたいと考えている。