GEヘルスケア・ジャパン

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Technical Note

2011年8月号
超音波エラストグラフィの技術と特徴

US―Revised Direct Strain法によるエラストグラフィーの原理と特徴

谷川俊一郎
超音波研究開発部

GEヘルスケアが,現在製品化しているエラストグラフィーは,用手的にプローブを用いて組織を圧迫,弛緩することにより硬さを評価する静的(static)エラストグラフィーであり,変位前後の2枚のフレームを取得し,音線ごとの歪みを算出する。算出手法としては,GE中央研究所のC.R. HazardとF. Linらが独自に開発したRevised Direct Strain法1)を用いる。本手法の開発当初の目的は,肝臓領域において,HIFUによる焼灼領域などの硬さの変化を描出することであった(図1)。その後,特に乳腺領域での実用化をめざし,筆者を中心とする日本の技術陣が開発を継続した。具体的には,最大秒間30フレームでのリアルタイム化,空間分解能の改善,手技的,音響的な作用によるアーチファクト低減等の画質改善が検討され,2009年に「LOGIQ E9」に搭載して実用化するとともに,2011年には,アルゴリズムの改善,他機種への展開,計測機能の開発,腹部および前立腺を対象としたプローブへの展開を行った。

図1 開発初期のエラストグラフィー
図1 開発初期のエラストグラフィー

■Revised Direct Strain法の原理

図2 Revised Direct Strain法の原理
図2 Revised Direct Strain法の原理

弊社のエラストグラフィーの計算処理は,Revised Direct Strain法を含むストレイン計算処理部とポストプロセッシング部からなる。
まず,Revised Direct Strain法の概要を図2に示す。図2中には,組織を圧迫する前後のある音線上における2つの信号が示されており,それぞれのRF信号をIQ信号に変換して正規化したペアと考える。また,解析対象としては,周辺部に対し中心が軟らかい物質を仮定した。本手法では,双方の信号に対して単位領域を設定し,その領域中での波形の圧縮率を評価する。例えば,図2 (a)のように,単位領域における信号の圧縮がほとんど見られない場合は,圧迫による歪みがほぼないと判断し,図2 (b)のように,波形が圧縮されたケースでは,圧迫により歪みが生じたと考える。圧縮率の評価方法としては,双方の単位領域内に含まれる点群同士の相互相関関数における虚数項がゼロとなる前後では,その虚数項と局所の歪み量とが比例することを利用している。また,変位前の信号に対する単位領域は,ROI上端部より等間隔でスライドさせて逐次計算を行うが,それに対応する変位後の単位領域は可変とし,図2 (c)のように,それ以前に得られた歪み量の蓄積(事前遅延)をもとに決定する。この処理をROI上端部から下端部へ向け,またすべての音線について行うことで,フレーム内の歪み分布を計算する。
また,双方の単位領域内の波形に対し,パターンマッチング等で用いられる正規化相互相関法を使って類似度の評価も行う。類似度は1.0に近いほど,変位前後の波形の類似性が高いことを意味するので,手技的,音響的な問題により,変位前後の波形が異なってくると,その程度に応じて1.0より小さな値となる。ピクセルごとの類似度の取得は,後述するポストプロセッシング処理や取得信号の質評価において重要となる。

さて,ストレイン計算部で得た歪み分布は,圧迫(もしくは弛緩)速度,変位方向,変位前後の信号取得間隔などの情報が含まれたデータであり,フレームごとに,その平均値や分布が大きく変動する。したがって,これらを視覚的にわかりやすい2次元のカラー情報に変換するのがポストプロセッシング部となる。ここでは,歪み分布,歪みの絶対値,類似度等を用い,Revised Direct Strain法に特有の計算エラーやアーチファクトの検出と,その低減処理,時間方向や空間方向の平滑化処理,歪み分布の色データへの変換処理などを実施する。色データ変換処理では,得られた歪み分布の平均より,大きな歪みを持つピクセルには赤色系の色を,逆に,小さな歪みを持つピクセルには青色系の色を割り当てて出力し,Bモード上にカラー画像として重畳表示する(図3)。

■客観性を高める工夫

図3 エラストグラフィー画像表示例
図3 エラストグラフィー画像表示例

このように本手法は,リアルタイムで簡便に硬さに関する情報を提供できる反面,検査者の手技に依存する可能性,得られる画像にバラツキが生じる可能性も否定できない。したがって,より客観性を高めるための工夫を行っている。
1つ目は,取得フレームごとのquality(画像の質)を評価する点である。具体的には,前述した類似度等を利用し,変位前後の信号が,どの程度同一形状を保持したまま圧縮(もしくは伸長)したかを計算することで,どれだけ適切な圧迫(もしくは弛緩)が行われたかを評価している。表示方法としては,バーグラフと線グラフをサポートしており,どちらも値の高い方が,qualityが高いと判断されたフレームとなる(図3)。バーグラフは,視認性が高いことが特徴である。通常,検査者は,エラストグラフィー画像と並列表示されるBモード画像の断面が圧迫中にずれないよう注視しているが,それら2つの画像の間で,最も視角に入りやすい場所にバーを表示させることで,視点の移動を伴うことなく,live中にもqualityを確認することができる。一方,線グラフでは,数秒間のquality遷移が緑色のラインの高低で表現され,さらに,現在のフレームがその線上に赤いバーにて表示される。本表示法としては,一般的な超音波診断装置上でのECG信号の表示と同一の方法を採用した。例えば,ワークフローの一例として,live中に数秒間の動画像を取得してフリーズ,もしくは保存した後,cineループを用いて,複数フレームの動画像から任意の1断面を選択するという流れが考えられる。その際に,取得したすべての経緯がレベル表示されるので,その中からよりレベルの高い部分を選択すれば,より最適な画像(計算エラーの少ない画像)を容易に抽出することができる。
もう1つが,2011年より導入された解析機能である。これは得られた画像に対して,半定量的な数値情報(elasticity index)を付加する機能である。一般的に,エラストグラフィーにて悪性が疑われる腫瘤部の画像は,青色の単色,もしくは,緑色と青色の混合色となる。それらを分類,もしくは判定する際に,例えば,"軽度に緑色を含む"と言葉で定義するだけでは,“軽度”の程度は検査者の主観により異なる可能性もある。そのようなケースにおいても,本解析機能を用いて,歪み画像(もしくは並列表示されたBモード画像)の腫瘤部に計測ROIを設定すれば,歪み画像上の色分布を数値化したelasticity indexを記録することができ,画像に対してより客観性の高い情報を付加することが可能となる。
解析機能には,検査者のさまざまな用途やワークフローに対応できるよう,取得画像上に直接ROIを設定する簡便な手法と,解析画面に入り時系列表示を行う手法(図4)の2種を用意した。どちらもelasticity indexを表示でき,また,2か所のindexの比を計測することもできる。さらに時系列表示では,複数個所のindexとそれらの比を同時に表示する機能も有するほか,同時相のECG信号やqualityの遷移の同時表示も可能とした。また,解析画面立ち上げ時に,qualityの低いフレーム(例えば,圧迫と弛緩の狭間に相当する時相)の情報を自動的に抽出して,解析対象外とする機能(Disable Frame)も加えた。どちらの計測手法もrawデータに対応しているため,検査終了後の解析や再測定も可能となっている。

図4 解析画面表示例
図4 解析画面表示例

●参考文献
1) Hazard, C.R., Hiltawsky, K., Lin, F., et al. : Iterative direct strain estimation for HIFU lesion detection. Proceedings of the Sixth International Conference on the Ultrasonic Measurement and Imaging of the Tissue Elasticity, 31, 2007.

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