GEヘルスケア・ジャパン

ホーム の中の inNavi Suiteの中の GEヘルスケア・ジャパンの中の Technical Noteの中の超音波造影技術の最新動向 ─ LOGIQ E9/S8の造影モードを中心に

Technical Note

2012年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

US−超音波造影技術の最新動向 ─ LOGIQ E9/S8の造影モードを中心に

橋本 浩
超音波技術開発部

現在,各国で市販されている各種の超音波用造影剤は,いずれも微小気泡を含む懸濁液を静注するものである。2007年に,わが国で販売が開始された超音波造影剤Sonazoidも,難溶性のガス(ペルフルブタン)を脂質膜のシェルで覆った2〜3μm径の気泡で構成されており,肝腫瘍の鑑別,肝小病変の検出,RFAなど局所治療のガイドおよび治療効果判定に用いられている1)〜3)
従来のLevovistは,超音波照射によって気泡を崩壊させ,その際に発生する信号を画像化していたが,Sonazoidは,通常のイメージング用より低い音圧の超音波照射によって気泡が膨張・収縮する性質があり,その反射信号の非線形成分を画像化することで,長時間の連続した観察が可能である。
本稿では,弊社汎用超音波診断装置「LOGIQ E9」あるいは「LOGIQ S8」に搭載されている造影モード,および最近の技術動向について解説する。

■造影モード

LOGIQ E9/S8は,目的に応じて3つの造影モードが選択可能である。

1.AM(Amplitude Modulation)
AMは,超音波出力が小さいときの反射信号振幅が,生体組織に関しては線形であり,超音波造影剤の気泡に関しては非線形になることを利用してイメージングを行っている(図1 a)。次項のPhase Inversionに比べ,組織からの信号の抑制が効くことが特長である。

2.PI(Phase Inversion)
PIは,多くの装置に搭載されている造影手法である。超音波照射による気泡振動で反射信号が歪み,受信信号では,主に二次高調波成分として検出される。PIも改善が進み,フレームレートや分解能という点においては,AMより優れている場合がある(図1 b)。

3.CHA(Coded Harmonic Angio)
Levovistのころから高い評価をいただいていた“Coded Harmonic Angio(CHA)”は,Sonazoidでも同様に利用可能である。高音圧信号を照射し,気泡を破壊して信号を得るため,低音圧送受を行うAMよりさらに強力に組織からの信号を抑制し,気泡の有無を描出することが可能である。CHAは,早期相における血管走行の観察や,後期相におけるwashout,治療効果判定のための造影欠損像の描出に用いられている(図1 c)。

図1 LOGIQに搭載されている造影モード
図1 LOGIQに搭載されている造影モード

■Volume Navigationとの組み合わせ

“Volume Navigation(V-Nav)”は,磁気センサーを用いてプローブの位置情報を取得し,事前に取得していたCT/MR/USのボリュームデータと位置合わせをすることによって,実時間でスキャンしている面と同じ座標の断面をリアルタイム表示するアプリケーションである。CTやMRを参照して造影検査を行うことも可能である(図2)。

図2 Volume Navigation時のSonazoid造影
図2 Volume Navigation時のSonazoid造影

■新しい造影モードのヒント

Sonazoidは投与後,比較的短時間で実質染影が顕著になり,造影効果が長時間継続するため,血管像との区別が困難であると言われることがある。この対策として,2011年に,高安らが“B-Flow Color”の応用を提案し,発表している4)。発表では,B-Flow Colorの背景のBモードをPIに設定し,両者のMI値を0.2前後にすると,背景側の画像では従来どおりに観察でき,実質が染影されて血管像が不明瞭になった後でも,B-Flow Color画像によって血管像を描出することができたと報告されている(図3)。

図3 B-Flow Colorを用いた Sonazoid造影
図3 B-Flow Colorを用いたSonazoid造影

B-Flowとは,Coded Excitationという送受信技術を用いて微小信号を検出し,組織からの信号を抑制することによって血流を描出するアプリケーションであり,カラードプラやパワードプラに比べ,高フレームレートかつ高分解能を実現している5)。一方,B-Flow Colorはその領域を限定し,カラードプラと同様にBモード上に色付けをして血流を重畳表示するものである6),7)
このようなアイデアは,われわれメーカーの技術者にとって非常に貴重な情報であり,今後の造影アプリケーションの開発に役立てていきたいと考えている。

以上,弊社の汎用超音波診断装置LOGIQ E9,LOGIQ S8の造影モードおよび最近の技術動向の概要について紹介した。Sonazoidが使用できるのは,現在,わが国のみであり,今後も日本の先生方のご意見やご要望を取り入れて,装置やアプリケーションの開発を進めていきたい。

*汎用超音波画像診断装置 LOGIQ E9 医療機器認証番号:220ABBZX00177000号
*汎用超音波画像診断装置 LOGIQ S8 医療機器認証番号:222ABBZX00199000号
*販売名:ソナゾイド−注射用 16μL 薬事承認番号:22000AMX01571
*製造販売:第一三共株式会社
*「ソナゾイドR」はジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ(GE Healthcare AS)が所有する登録商標です。

●参考文献
1) ソナゾイド注射用16μL 医薬品インタビューフォーム. 第一三共株式会社, 2011年8月改訂(第7版).
2) 森安史典・他 : 超音波医学最前線. INNERVISION, 22・10, 2〜72, 2007.
3) 森安史典・他 : ソナゾイド造影超音波検査の適応のひろがり. INNERVISION, 24・6, 44〜87, 2009.
4) 高安賢太郎・他 : Sonazoidを用いた造影超音波検査におけるB-Flow使用の意義. 日本超音波医学会 関東甲信越地方会第23回学術集会 抄録集, 63, 2011.
5) Chiao, R.Y., et al. : B-Mode Blood Flow (B-Flow)Imaging, IEEE Ultrasonics Symposium, 2000.
6) 橋本 浩 : USコラム 今さら聞けない"音"知識 その19. GE Today, 32, 64, 2009.
7) 佐藤直人 : B-Flow Colorとその臨床画像. Neurosonology, 19, 1〜3, 2006.
   
【問い合わせ先】 超音波本部  TEL 042-585-3671