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別冊付録

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【ECHELON Vega/医療法人社団浅ノ川 金沢脳神経外科病院】
ECHELON VegaによるMRIファーストの診断で石川県の脳神経疾患治療の最前線を担う
1.5Tと3TのMRIで月間約870件の検査を実施

医療法人社団浅ノ川 金沢脳神経外科病院は2008年11月,病院の新築移転に合わせて日立メディコの超電導型1.5T MRI「ECHELON Vega」と3T MRIを導入し,2台のMRIによる診療を開始した。先進的な医療技術を積極的に取り入れ,石川県加賀地区の脳神経領域における急性期医療の最前線を担う同院では,迅速に検査を行うための体制作りと撮像法などの工夫によって,救急時においてもCTではなく,MRIファーストの診断が行われている。同院の診療の現状と,その中でECHELON Vegaが担う役割について,佐藤秀次院長,山本信孝副院長,放射線部の前田利之技師長,山田 浩副技師長にお話をうかがった。

佐藤秀次 院長
佐藤秀次 院長
山本信孝 副院長
山本信孝 副院長
前田利之 技師長
前田利之 技師長
山田 浩 副技師長
山田 浩 副技師長

高い治療実績で県内外に知られる金沢脳神経外科病院

脊椎疾患の低侵襲手術(顕微鏡下ヘルニア摘出術:MD法)の様子
脊椎疾患の低侵襲手術(顕微鏡下ヘルニア摘出術:MD法)の様子
切開部が約2cmですみ,早期離床が可能

1980年に石川県内初の脳神経外科専門病院として設立された医療法人社団浅ノ川 金沢脳神経外科病院は,脳神経外科,神経内科,内科,麻酔科,リハビリテーション科を標榜し,開院以来,地域における脳神経領域の診療の中心を担ってきた。脊椎領域では,顕微鏡下に行う椎間板ヘルニアの低侵襲手術(顕微鏡下ヘルニア摘出術:MD法)件数が年間約400件という優れた実績で県内外に広く知られているほか,頭部領域においても,急性期から回復期,維持期,医療依存度の高い重症患者の療養まで幅広く対応している。また,2007年10月には県内唯一の脳卒中ケアユニット(SCU)6床を設置。さらに,2005年10月に薬事承認された血栓溶解剤“tPA”(組織プラスミノゲン活性化因子)の急性期脳梗塞症例への使用を全国でもいち早く開始し,日本経済新聞社が2006年に行った,426施設を対象とした調査では,2005年10月〜2006年11月までの使用実績が全国20位となるなど,救急時の診療体制の充実にも力を注いできた。そのため近年では,金沢市のみならず,能美市や小松市,加賀市近郊からの救急搬送が増加傾向にあり,年間600件を超えている。
しかし,開院から30年近くが経過した同院は建物の老朽化が進み,患者サービスという点では十分な対応が行えない状況になっていた。そこで,建物を新築移転して診療・療養環境の改善を図り,同時に,診療体制をより充実させることが計画された。

病院の新築移転により診療体制のさらなる充実を図る

回復期リハビリテーション

回復期リハビリテーション
回復期リハビリテーション
脳卒中,脊髄損傷などの患者さんを対象に,自宅復帰に向けての早期リハビリテーションを実施

「病院の新築移転にあたり,いくつかの大きな目的がありました。それは,患者サービスの向上,医療スタッフの労働環境の改善,センター化による診療・研究体制の強化,MR検査体制の強化です」と佐藤院長は語る。
その実現に向け,同院では各部署から選出されたメンバーによる新病院設立委員会を発足し,設計士も交えてさまざまな意見交換が行われた。十分な事前検討を経て着工した新病院は,地域の大きな期待に応えるべく,2008年11月に開院した。
●内装は明るさと開放感を重視
新病院の内装は,患者さんの緊張や不安をできるだけ緩和するよう,病院らしさを払拭することが重視された。エントランスホールは広々と開放感があり,滝を模した壁面には水が流れ,側面の大きな窓からは明るい日差しが降り注いでいる。待合いソファや受付カウンターなどは落ち着いた色合いで統一され,同フロアには売店や喫茶コーナーも設けられた。病室も窓を大きく取り,療養環境の大幅な改善が図られている。また,医療スタッフの職場環境についても,各部署で実際の仕事の流れを十分に検証したことが功を奏し,スムーズな動線が実現した。
●3つのセンターで診療体制を強化
病床数220床(一般60床,療養160床)を有する同院では,移転に伴い,一般病床のうち以前は6床だったSCUが9床に増床された。療養病床についても,回復期リハビリテーション病床が,今年5月に54床から106床になる予定である。また,診療面においては,今年4月から脳卒中センター,脊椎センター,リハビリセンターを設置し,センター長を中心に,診療体制がより強化されることが予定されている。特に,脳卒中および脊椎センターについては,日常診療だけでなく,豊富な症例を生かして新しい治療法の開発を行うなど,研究機関としての役割も担っていきたいと佐藤院長は考えている。
●2台のMRIによる診療を開始
画像診断装置については,8列マルチスライスCT「ECLOS 8」が稼働するなど,最先端機器の充実に力を入れているが,特にMRI検査体制が強化された。同院では,旧病院時代から即日検査,即日診断を心がけており,1台の1.5T MRIで月間600件以上の撮像を行っていた。しかし,実際には撮像が追いつかず,即日には検査が行えないことも多かった。そこで,移転に併せて以前の1.5T MRIを日立メディコの超電導型1.5T MRIのECHELON Vegaに更新し,さらに,3T MRIも導入して,2台のMRIによる診療を開始した。

画質・操作性・経済性に優れたECHELON Vegaを選定

MRIが常にフル稼働している同院にとって,その果たす役割はきわめて大きい。新たに導入する装置に対する期待も大きく,選定にあたっては医師と診療放射線技師による選定委員会を組織し,慎重な検討が行われた。
同院では当初,新しいMRIは検査スループットや価格を考慮し,2台の1.5T MRIの導入が検討されていた。しかし最近は,日本脳神経外科学会などにおける3T MRIの発表が増加し,臨床評価も高まってきている。加えて,ハイスペックな1.5T MRIとの価格差が予想していたほど大きくなかったこともあり,将来性を考慮して,まずは3T MRIの導入が決定された。
また,1.5T MRIの選定について,前田技師長は,「山田副技師長にいくつかの病院を訪問してもらい,各メーカーのMRIの実際の画質や使い勝手を確認した上で,価格なども踏まえて選定委員会で総合的に評価しました」と述べている。その結果,経済性に優れ,後発の装置ながら他に劣らない高画質が得られる点や優れた操作性が高く評価され,ECHELON Vegaが選定された。

脊椎検査と救急で威力を発揮するECHELON Vega

同院では現在,頭部領域は主に3T MRIで,脊椎領域は主に1.5T MRIで撮像を行っている。MRIの使い分けについて,前田技師長は,「基本的にはどちらの装置でも頭部と脊椎の両方を撮像できる体制にはしています。ただ,1.5Tの方が30〜40cmの広いFOVで撮像しても,磁場均一性に優れ,3Tのような感度ムラがないので,脊椎のスクリーニングは1.5Tで行っています。また,3Tは体内金属に対する禁忌があるため,確認の難しい救急時には,必ず1.5Tを使用します」と説明している。
このほか同院では,造影T1強調像については,頭部領域でも3Tではなく1.5T MRIで撮像している。さらに,アルツハイマーの早期診断についても,早期アルツハイマー診断支援ソフトウエアの“VSRAD”(エーザイ提供)が3T MRIに対応していないため,ECHELON Vegaを用いて行っている。ただし,同院のMRI撮像件数は1日40件前後になるため,撮像がどちらかの装置に偏らないよう配慮しているという。
また,MRI検査は,脳ドックについては週4件に限定し予約制で行っているが,それ以外には予約枠や検査枠は設けておらず,1検査あたり10分を目安に順次撮像を行っている。これは,検査数が多いこともさることながら,腰痛などで受診した患者さんは,10分以上同じ姿勢を保っていることが困難な場合が多いことも大きな理由となっている。
しかし,一般的には,10分という検査時間はずいぶん短いように思われる。それについて,山本副院長は,「当院の場合,検査前にかなり詳細な問診を行って検査目的を絞り込んでいるため,撮像条件を絞り込んでも必要な診断は十分に行えています」と述べている。
また撮像法についても,検査時間を短縮するための工夫を行っている。通常,MRIには各メーカーが推奨する撮像時間が設定されているが,同院では,ECHELON Vegaの各プロトコールの撮像時間を1シーケンスあたり約1〜2分と,かなり短くして撮像を行っている。当然,画質の低下が危惧されるが,山田副技師長は,「画質はまったく問題なく,診断に必要なレベルは保てています」と評価する。
山本副院長も,「むしろ,MRAではECHELON Vegaの方が3T装置よりもアーチファクトが少ない場合もあり,診断に有用な画像が得られています」と高く評価しており,安定した実績を上げていることがうかがえる。

MRIファーストの診療で高いtPA使用実績を誇る

同院におけるMRIの具体的な撮像法は以下のとおりだ。まず,脊椎では,T2強調像3方向のみを撮像し,腫瘍については造影のT1強調像を追加する。頭部では,脳ドックはT2強調像,T2*強調像,FLAIR,頭頸部MRAを施行するが,脳動脈瘤の早期発見の観点から,特にMRAについては少し時間をかけて撮像するようにしている。脳梗塞についてはT2強調像,拡散強調像,MRAを基本とし,出血が見られる場合はT2*強調像を追加する。また,外傷の急性期については,脳挫傷や硬膜下血腫,クモ膜下出血などはCTが優先されるが,やや時間が経過した症例で,血腫や脳挫傷の状態確認を行う場合はMRIを優先する。いずれにしても,同院ではほとんどの症例で,MRIがファーストチョイスとなる。
さらに,同院には1日に2〜5件の救急搬送があるが,救急時においては,基本的に1.5T MRIがファーストチョイスとなっている。これは,「脳梗塞発症から3時間以内の投与」という厳しい制限のあるtPAの対象症例についても同様であり,山本副院長はその理由について,次のように述べている。
「tPAが使用できるのは,脳梗塞症例のせいぜい5%です。そのため,いかに早く検査を行うかが重要ですが,多くの施設では夜間のMRI撮像が困難なため,血栓溶解療法の適応を決めるための標準検査は単純CTとなります。しかし,急性期脳梗塞の診断には,MRIの拡散強調像が非常に有用です。そこで当院では,24時間いつでもMRI検査が行え,かつ,脳神経外科医が常に待機しているという体制を整えることで,救急時においても速やかなMRI撮像を可能にしました。その結果,必然的にtPAの症例数が伸びています」
こうした取り組みによって,同院ではこれまでに,約50症例にtPAが使用されている。このうち,2008年の使用実績を見ると,救急搬送の脳梗塞患者111名中10名にtPAを投与しており,その全員が救命されるなど,優れた成績を挙げている。

症例1:脳梗塞
症例1:脳梗塞
86歳,男性。起床してこないため家人が見に行くと倒れていた。右片麻痺の状態だった。拡散強調像で左中大脳動脈領域に新しい梗塞が認められ,T2強調像で,左後大脳動脈領域と左中大脳動脈領域に陳旧性脳梗塞を認めた。MRAでは,左中大脳動脈の閉塞が認められた。すでに発症から3時間以上経過していたため,tPAは使用せず,エダラボンの投与を行い,早期リハビリテーションを開始,日常生活が可能となった。
a:DWI,DW-EPI,TR/TE:3000/87,FOV:230mm,スライス厚:5.0mm
b:T2WI,FSE,TR/TE:5000/108,FOV:230mm,スライス厚:5.0mm
c:FLAIR,FIR,TR/TE:8000/108,FOV:230mm,スライス厚:5.0mm
d:MRA,TOF,TR/TE:21/6.9,FOV:170mm,スライス厚:1.2mm

症例2:破裂脳動脈瘤
症例2:破裂脳動脈瘤
71歳,女性。意識消失し,倒れているところを発見された。CTにて広範なクモ膜下出血を認め,MRAにて左内頸動脈後交通動脈分岐部動脈瘤が確認された。
MRA,TOF ,TR/TE:21/6.9,FOV:170mm,スライス厚:1.2mm

症例3:頸髄腫瘍
症例3:頸髄腫瘍
70歳,女性。4年ほど前から歩行障害が進行。下肢に強い四肢麻痺の状態があり,T1強調像にて第6,7頸椎間に造影増強される腫瘤を認めた。左第7頸神経から発生した神経鞘腫と診断した。
T1WI,FSE,TR/TE:450/12,FOV:250mm,スライス厚:4.0mm

症例4:胸椎後縦靭帯骨化症
症例3:未破裂動脈瘤右頸部から頭部にかけて痛みがあり,MRIを撮像。
55歳,男性。数年前から下肢のしびれ感と脱力が進行した。第5,6胸椎レベルで後縦靭帯の骨化が認められ,胸髄が強く圧迫されていた。
T2WI,FSE,TR/TE:3500/117,FOV:350mm,スライス厚:4.0mm

症例5:腰椎椎間板ヘルニア
症例5:腰椎椎間板ヘルニア
37歳,女性。1年ほど前から腰痛と左下肢痛が続いた。左第1仙神経領域の根性疼痛が見られ,MRIで,第4,5腰椎間で外側陥凹狭窄と,第5腰椎/第1仙椎間に椎間板ヘルニアを認めた。後者が責任病変と思われた。
a:T2WI,FSE,SAG,TR/TE:4233/120,FOV:300mm,スライス厚:4.0mm
b:T2WI,FSE,AX,TR/TE:4500/104,FOV:180mm,スライス厚:5.0mm
c:T2WI,FSE,COR,TR/TE:3500/96,FOV:200mm,スライス厚:2.0mm

Windowsベースのコンソールが検査効率の向上に貢献

コンソール
コンソール
Windowsベースのため操作性が良く,導入してすぐに使いこなせるようになったほか,患者さんの撮像中に次の患者さんのプロトコールが設定できるため,時間のロスがなく次々と撮像できる点がとても助かっていると,山田副技師長は高く評価している。

MRIが稼働し始めてからまだ約3か月だが,2月末現在,2台のMRIですでに2922件もの撮像が行われており,1か月の検査件数は平均で870件以上にものぼる。効率良く多くの検査を行うことが求められる同院では,新しい装置が2台同時に導入されたことは,診療放射線技師の大きな負担になったと思われるが,山田副技師長は,「ECHELON VegaのコンソールはWindowsベースで,表示も日本語のため,スタッフは皆すんなりと操作を覚えることができました」と述べており,操作者にやさしい装置であることがうかがえる。また,患者さんの撮像中に,別のウインドウで次の患者さんのプロトコールをセットしておくことができるため,間隔を空けずに次々と検査が行える点が,非常に助かっているという。
さらに,山田副技師長は,「ECHELON Vegaはガントリ長が短いため,特に撮像件数の多い腰椎の撮像では,患者さんの頭がほぼ外に出ます。また,コイルを逆向きにセットして,足からガントリに入っていただくこともできますので,狭いところが苦手な患者さんでも,問題なく撮像が行えています」と話す。
ECHELON Vegaは,診療に関するあらゆる場面で,すでに欠かせない存在となっている。

地域連携を積極的に推進し専門病院としての責任を果たす

新築移転によって新しい歴史を刻み始めた同院は,その診療に向かう姿勢が,地域からこれまで以上に高く支持され始めている。以前から,医療の機能分化を目的に地域連携に力を注ぎ,登録医療機関制度を設けて,350以上の医療機関と連携しているが,現在,1日約100名の外来患者のうち,新患が30名以上を占めている。紹介患者が占める割合も多く,開院前の予想を大きく上回っていると,山本副院長は話す。
しかし,本当の改革はこれから始まると,佐藤院長は明言する。同院では現在,県内にある2つの大学病院や県立病院等と協力し,脳卒中に関する医療連携パスの構築に取り組んでいる。それにより,各医療機関の役割をより明確にし,互いに協力し合うことで,地域住民が安心して生活できる体制作りを行っていきたいとしている。これが実現すれば,地域から同院に寄せられる期待と注目度はますます大きくなることが予想されるが,その期待に応えるために,MRIが果たすべき役割もさらに大きくなると,佐藤院長は語る。
「MRIが画像診断の中心を占めている当院にとって,ECHELON Vegaは,まさにわれわれの期待を背負った診断機器なのです」

(2009年1月28日取材)

医療法人社団浅ノ川 金沢脳神経外科病院
〒921-8841 石川県石川郡野々市町郷町262-2
TEL 076-246-5600 FAX 076-246-3914
http://www.nouge.net/
診療科目:脳神経外科,神経内科,循環器内科,リハビリテーション科
病床数:220床(一般60床,療養160床)
スタッフ:医師19名(常勤10名),診療放射線技師6名ほか,計251名

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