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RSNA 2009 Booth Report "be[unlimited]"をテーマにMRIは高磁場装置2機種を展示

Hitachi Medical Corpは,2009年11月29日(日)〜12月3日(木)の5日間にわたってシカゴで開催された北米放射線学会(RSNA 2009)のTECHNICAL EXHIBITSに出展した。“be[unlimited]”─あなたの医療環境改善の取り組みに,どこまでも貢献し続けます─をテーマに,MRI,MDCT,超音波診断装置,X線テレビの展示が行われ,医療者の使いやすさや患者さんへのやさしさに配慮した,同社ならではの優れた製品デザインをアピール。また,最も注目を集めたMRIでは,臨床に貢献するさまざまな新技術が発表された。

●北米では“Bore-Less MRI”としてOASISの“磁遊空間”をアピール

1.2TオープンMRI「OASIS」
1.2TオープンMRI「OASIS」

MRIコーナーでは,1.5T MRI「ECHELON」(国内ではECHELON Vega)1台と1.2T 超電導型オープンMRI「OASIS」2台の計3台が展示された。
2008年に米国内,2009年には日本国内での販売が開始されたOASISは,超電導型オープンMRIとしては世界最高の静磁場強度を誇る。アプリケーションは1.5TのECHELONと同じものをすべてカバーしているほか,270°という開放性を実現しつつも,垂直磁場方式により頭部はもちろん,腹部や四肢,関節においてもきわめて高画質が得られる。米国ではオープンタイプの装置でありながら,1.5T MRIに匹敵する優れた検査性能が高く評価され,販売実績を伸ばしている。体格の大きな患者さんから高齢者,小児まで,フリースタイルでの“磁遊撮像”が可能なため,米国では今後,“Bore-Less High Field MRI”を新たなキャッチコピーとして掲げ,強力にアピールしていく方針だ。
また現在,OASISでは患者さんへのアクセス性の良さを生かし,ガントリ内でのMRIガイド下乳腺生検を行うための研究が進められているほか,ガントリ内コイルによる下肢や頭頸部のコイルレス撮像の可能性も検討されており,今後の臨床応用が期待されている。

●最先端技術とやさしさが融合し拡張性に優れたECHELON

1.5T MRI「ECHELON」
1.5T MRI「ECHELON」

ECHELONは,ガントリ長160cmのショートボア,強力な傾斜磁場性能(33mT/m,150T/m/s),高機能撮像シーケンスに対応した基本性能,さまざまなアプリケーション,優れた拡張性などによって,患者さんにやさしい検査環境と高画質画像の提供を実現している。Windowsベースのコンソールは,MRIの操作経験が少なくてもストレスなく操作可能で,実臨床での使いやすさが高く評価されており,世界ではすでに80台以上が稼働している。


●臨床に貢献する最新アプリケーションを発表

両足同時撮像が可能なコイルやLarge Flexible Coil,ソレノイドコイルを用いたJoint Coilなどで幅広い撮像に対応
両足同時撮像が可能なコイルやLarge Flexible Coil,ソレノイドコイルを用いたJoint Coilなどで幅広い撮像に対応

さらに,ECHELONでは,新たにリリースされた4つのアプリケーションが紹介された。非造影MRA専用シーケンスの“VASC-ASL”では,IRパルスを用いて血流などの流体をラベリングし,3D BASGを用いて撮像した上で,ラベリングあり/なしの画像を差分することで,血流の多い腎動脈や門脈を造影剤を使わずに描出することができる。ワンボタンでの解析が可能なクリニカルMRSである“CSI(Chemical Shift Imaging)”では,CSI計測によって取得したデータを,代謝物マップにより二次元的に可視化することが可能で,同時に,指定したボクセルのスペクトルが表示できる。また,高精細頭部MRA“NewFITT”は,3D TOFシーケンスの画質改良により,末梢血管などの描出能が大幅に改善されたほか,微小出血描出能に優れた“VASC-EPI”が搭載された。
このほか,ブース内に設置されたパネルでは,共同研究サイトである東京慈恵会医科大学附属柏病院,神戸大学医学部附属病院,岩手医科大学附属病院で現在開発中の新技術なども紹介され,今後の機能向上に強い期待感を抱かせる展示となっていた。

(2009年11月30日取材:文責 編集部)


米国MRI市場の現状と日立MRIの未来 中畑潤一 氏

医療費抑制に取り組む米国では,MRI市場が大きく変化しようとしている。米国MRI市場の現状と,その中における日立MRIの位置づけや評価,展望について,日立メディコ本社国際部から最大販社のHitachi Medical System America(HMSA)に駐在し,本社との緊密な連携によってMRIのシェア拡大に取り組む中畑潤一氏にお話をうかがった。

■ 米国におけるMRI市場の現状

米国では,以前は民間の小規模なイメージングセンターが非常に多かったのですが,財政赤字削減法(The Deficit Reduction Act:DRA)による医療費削減の影響によってMRI検査の利益率が減少し,現在は,病院や大手のイメージングセンターへの統合が進んでいます。当社の顧客も病院が増加しており,同時に,MRIへの要求もより高画質へと変化してきました。また,保険会社によっては磁場強度によって保険適用額を変えています(高磁場装置の保険適用額の方が大きい)。そのため必然的に病院などに高磁場のECHELONやOASISを販売する状況になっています。
こうした現状や経済不況の影響を受けて,米国のMRI市場は全体として下降傾向にありますが,現政権が進めている保険制度改革によって,市場の動向が変化する可能性があります。いずれにしても,現在稼働しているMRIは10年に1回程度は更新されますので,たとえ一時的に市場が縮小しても,また伸びる時期は必ず来ると考えています。

■ 世界初の1.2TオープンMRI「OASIS」に対する米国市場の評価

当社では以前,オープンMRIについては“Open-Midfield(OMF)”というキャッチコピーを掲げていましたが,OASISでは,“Open High Field(OHF)”とし,1.2Tでありながら1.5Tと同等の高画質が得られる装置として強くアピールしています。従来のMRI市場にはOHFがなかったことを考えると,これはまったく新しい市場と言えますし,特に整形外科などには大変好評で,ニーズは非常に大きいと言えます。実際に,OASISが稼働しているフィラデルフィアのセントメアリーメディカルセンターの医師をはじめとした顧客からは,「1.5T装置と同等の高画質でありながらオープンを実現しており,非常に有益である」とのコメントをいただいています。

■ OASISとECHELONの販売戦略

OASISとECHELONが同程度の画質であっても,中にはクローズドの装置にこだわる施設もありますし,予算の問題でECHELONが選ばれることもあります。一方,米国では日本と比べて閉所恐怖症の患者さんが非常に多いので,以前からオープンMRIを使用していた施設は,やはりOASISを導入することが多いようです。当社としては,特にどちらかに力を入れるのではなく,どちらも同じ技術を持っていて,同程度の画質が出せるスタンダードとオープンの装置ということで提案しています。

■ MRI販売における今後の抱負

MRIについては,今後ますます高画質が求められると思いますが,単に高磁場化すればよいということではないと思います。やはり,患者さんの要求に合ったソフトウエアやコイルを開発するなど,特徴を出していくことが必要であり,われわれが行っていかなければならないことです。それを,米国から日本にしっかりと伝えていきたいと考えています。


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