日立メディコ

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Technical Note

2008年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

DR/DA−オフセットオープン式多目的イメージングシステムCUREVISTAの新技術と臨床的有用性

小田 和幸
マーケティング統括本部XR戦略本部

透視撮影装置は,主に造影剤による上部・下部消化管検査を行うための装置として開発され,その原型および基本機能は約30年前から変わっていなかった。ところが,臨床側から見ると透視撮影装置の使用目的は臨床技術の進歩とともに多用途化してきており,各科でさまざまな検査に使われるようになった。その結果,臨床スタッフが検査方式を道具である装置に合わせなければならなく,無理な体勢を強いられることもあった。
当社のオフセットオープン式多目的イメージングシステム「CUREVISTA」は,透視撮影装置に望まれる機能・性能を根本から見直し,VOC(Voice of Customer)調査によりまとめ,新しいコンセプトのもとで開発した多目的イメージングシステムである(図1)。
本稿では,CUREVISTAだけが持つ特徴的な新技術の紹介,およびその技術が各種の臨床をとおしてどのように有用であるかについて報告する。


図1 CUREVISTAの外観
図1 CUREVISTAの外観

■ CUREVISTAの新技術

1.2ウェイアーム
任意方向の視野移動を映像系(X線管球とFPD)の動きのみで実現できる。通常の装置では,縦方向の視野移動は映像系の動きで対応するが,横方向は天板,すなわち被検者を動かしている。
また,映像系の稼働範囲が広く,天板の上端・下端より10cmの位置から透視像・撮影像を表示できる。

2.オフセットオープンスタイル
テーブルのシフト機構とオフセットアーム支柱の組み合わせにより,テーブルの奥側に広いワークスペースを確保した(図2)。通常の装置では,テーブルの上下動や起倒動を制御する駆動スタンドと,X線管球を支持する支柱により,テーブル奥側に実用的なワークスペースがほとんどない。

3.Q/R(Query/Retrieve)機能
CUREVISTAと画像サーバシステムを直接ネットワークで接続することにより,CT画像やMR画像をCUREVISTAの参照モニタに表示し,透視像と並列表示できる。通常は,画像サーバシステムに接続される専用の画像ビューワを透視撮影装置のモニタと並列配置していたため,画像ビューワの設置スペースとコストを要していた。

4.詳細透視
撮影画像と同等の空間解像度を持つ透視像を表示できる。すなわち,FPD上の1画素がモニタ上の1画素に対応して透視像を表示できる。通常の透視像は,SNRを上げるために隣接する複数画素を加算平均してモニタ上の1画素として表示している。そのため,透視像の空間解像度は撮影像の1/2以下となっている。

5.被ばく管理
被検者ごとに,透視と撮影*1の積算線量概算値を表示する機能を搭載した。通常は面積線量計を搭載し,単位面積あたりの被ばく線量を計測・表示している。


図2 オフセットオープンスタイル
図2 オフセットオープンスタイル

■ 臨床的な有用性

1.ERCP,PTCDなどの治療を伴うX線検査
内視鏡装置や超音波装置などの器材を併用する検査では,テーブルの周囲にワークスペースが必要となる。また,被検者が体位変換を行うとき,被検者の背中や腰からサポートできれば被検者,臨床スタッフともに安心である。CUREVISTAはオフセットオープンスタイルを採用しているため,テーブルの奥側にも広いワークスペースを確保でき,被検者体幹部へのサポートが容易に行える。
また,被検者の体内に内視鏡やガイドワイヤなどを挿入または穿刺している状態で視野移動を行うとき,2ウェイアームにより,天板すなわち被検者を動かさないため術者は安心して検査を遂行できる。同様に,看護師も安心して点滴の準備を行える。一方,ステントなど治療に使用されるマイクロデバイスは年々細くなり,X線に対する視認性が低下する傾向にある。しかし,詳細透視による透視像は撮影像と同等の空間解像度であるため,ステントなどの描出能を向上することができる。
さらにQ/R機能により,画像サーバシステムから読み込んだCT画像やMR画像をCUREVISTAの参照モニタに表示できるため,治療時に患部を同定しやすい。特に,透視モニタと参照モニタが並列して配置されていることで,術者は目の移動が少なくてすみ,検査効率が良好である。
このほか,透視時間が長くなると被ばく線量も増える。被検者ごとの積算被ばく線量概算値を確認できるため,術者に定量的な注意を促すことができる。

2.嚥下造影
嚥下造影検査では,一般にテーブルを立位にして車椅子に乗った被検者を透視する。このとき,CUREVISTAは2ウェイアームにより,視野移動を遠隔操作のみで実施でき,位置決めを迅速かつ確実に行える。位置決めが短時間ですむため,被検者への被ばくも低減できる。

3.IVH(中心静脈栄養法)
オフセットオープンスタイルによりテーブルの奥側が広いため,カテーテルを刺すとき被検者の左右からアクセスできる。右からのアクセスがしにくいとき,被検者の頭足を反転させることなくそのままの状態で,術者が移動するだけで左からアクセスできる。

4.その他
1)泌尿器/婦人科
泌尿器/婦人科検査では,テーブルの上端・下端に近い位置に被検者を載せて行う。CUREVISTAは,テーブルの上端・下端より10cmの位置から透視像・撮影像を表示できるため,術者は楽な姿勢で検査を行うことができる。
2)被検者乗降
テーブルの奥側から被検者体幹部にアクセスして被検者を支えることができるため,ストレッチャーからの乗せ換えが楽に行える。また,被検者はテーブルの奥側からでも乗り降りできる。特に被検者がリハビリ中のときは乗り降りの援助ができないため,天板の手前,奥のどちらからでも乗り降りが可能であることは有用である。

オフセットオープン式多目的イメージングシステムCUREVISTAは,透視撮影装置に望まれる機能を臨床スタッフの視点で見直し,新しく開発されたさまざまな特徴的な機能により,安全性,検査効率などの点から通常の装置では実現できなかったことを可能にした。
本稿で述べたこと以外にも,臨床上の新しい有用性についてユーザーから次々に報告されることを期待したい。


*1 撮影時の被ばく線量概算値はNDD法を使用して算出している。NDD法は茨城県放射線技師会被曝低減委員会(班長:森 剛彦氏)が提案した方法であり,茨城県立医療大学の佐藤 斉氏が係数を導き,ソフトウエアを開発したものである。


【問い合わせ先】 XRマーケティング本部  TEL 03-3526-8303