日立メディコ

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Technical Note

2009年1月号
シリーズ特集 scene vol.2−rt-PA時代における急性期脳梗塞の画像診断:標準化に向けて

CT−日立CT「ECLOS」におけるCT Perfusion解析と標準化への取り組み

萩原 久哉
CT戦略本部

1996年に欧米で登場して以来,rt-PAは,脳卒中治療に大きな影響を及ぼしてきた。2005年秋には,ようやく日本でも脳梗塞急性期治療薬としてアルテプラーゼが承認され,脳卒中急性期治療は大きく変わろうとしている1)。rt-PAの適応が発症3時間以内であることや,脳卒中患者の出血の有無を確認するためにまずCT装置が使われることが多いため,CT Perfusion(CTP)による急性期脳梗塞の画像診断の期待も高まっている。


CTPの撮影方法

非イオン性ヨード造影剤をボーラス注入しながら,頭部の特定断面をダイナミックスキャンするため,CTPでは被ばく線量が問題になることが多い。
CTP開発当初は,高線量の連続ダイナミック撮影が行われていたが,解析アルゴリズムの進歩や図1に示す非線形ノイズ低減フィルタ(Adaptive Filter)の開発により,現在は10mmスライス厚,50〜100mA,1秒/回転の間歇ダイナミック撮影を使用しているユーザーが多い。また,maximum slope法に比べて,造影剤の注入速度が抑えられるdeconvolution法の採用により,注入速度4mL/sを実現している。


図1 非線形ノイズ低減フィルタ
図1 非線形ノイズ低減フィルタ
SDやノイズ成分などの統計量に応じて,フィルタのマトリックスサイズや重み関数を最適化し,画像のノイズ成分だけを効果的に低減できる。

CTPの解析方法

CTPの解析アルゴリズムとして,現在主流になりつつあるdeconvolution法だが,実は多くのバリエーションが存在し,その違いが解析画像に影響を与えていた。
日立のCTPは,標準化ガイドラインで推奨されている造影剤遅延効果の影響を受けにくいアルゴリズムを用いている。また,撮影中に患者の頭部が動いてしまった場合は,自動的にソフトウエアが患者の体動を検出し,動き補正を行うことで解析精度の低下を防止する。

CTPの表示方法

本ソフトウエアでは,局所脳血流量(CBF),局所脳血液量(CBV),局所平均通過時間(MTT)の3つのパラメータをカラー表示可能である。この表示色は,従来のモノクロ・カラーだけでなく,ASIST-Japanで推奨されている灌流画像カラーマップ表示用標準LUTも使用している。また,MTT画像に関しては,ユーザーの好みに応じて赤⇔青の表示色を反転することも可能である。
また日立のCTPは,CBF,CBV,MTTそれぞれの血流異常領域(任意の閾値を設定)を抽出し,CT画像上に投影表示可能なMT-View(Multi Transparency View)機能も搭載し,今後の臨床応用が期待される。

CTPの評価方法

CTPのカラーマップを作成し,その色調から,健側と患側の灌流異常や虚血の範囲を定性的に評価する場合が多い。WW/WLの値によって評価結果が変わることもあるため,現在標準化されたWW/WLが推奨されているが,まだ観察者の主観が影響する部分も多い。一方,CTP画像上にROIを設定し,左右差を定量的に評価する方法もあるが,その定量値や半定量値(対側比)の信頼性に対する十分なエビデンスはない。また,ROIの設定の煩雑さや,ROI設定者の主観などの問題も残る。
そこで図2に示すように,CT画像の中心線を決定することで,重心および分割線を自動設定し,健側と患側に左右対称にROIを設定する自動対側比評価法を開発した。しかも,左右のROIの対側比が,ある閾値以上(設定値は任意)の領域を強調表示することで,観察者やROI設定者の主観が入らず,かつ,設定が簡便なCTPの定量評価が期待される。


図2 CTPの自動対側比評価法
図2 CTPの自動対側比評価法
中心線を決定することで,重心および分割線を自動設定する。黒く表示されたROIが,ある閾値以上(設定値は任意)の領域である。

●参考文献
1) Vladimir Hachinski : “ブレイン・アタック”をどうとらえ どうアプローチすべきか. WellVAS, 14, 2〜5, 2006.