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Technical Note

2011年7月号
循環器部門システムの最新動向

「IDS7 PACS」(統合管理PACS)+「Xcelera」(CIS)によるヘルスケアインフォマティックスシステムの最新動向

池ノ内時宗
ヘルスケア事業部ヘルスケアインフォマティックス

近年,多くの施設では,デジタル化の流れによりPACS導入し,フィルムレス化が進んでいる。しかし,完全なフィルムレス化にまで対応している施設は少ないのが,現状ではないだろうか?
本稿では,循環器領域で評価されているフィリップスのヘルスケアインフォマティックスのシステムを紹介する。

■統合医用画像管理システムIDS7 PACS

「IDS7 PACS」は,各モダリティや非DICOM画像のさまざまなデータに対して,患者ごとにアクセスできる,堅牢なマルチモダリティ対応の画像情報管理/解析/レポート作成ソリューションである。また循環器総合情報管理ソリューションの「Xcelera」との組み合わせにより,1つのデータベース上でIDS7 PACSを統合管理できるため,真のシステム提供として放射線科を含む各臨床医にもクリニカルアプリケーションを利用することができる。

1.高速画像配信技術 “Rapid Connect”
IDS7 PACSは,マルチスライスCT検査など1万枚超スライスのスタック画像を数秒で,複数シリーズのDICOMクオリティ画像として同時表示することができる。これは,基本技術として高速配信機能“Rapid Connect”技術を採用しているからである。このRapid Connect技術は,効率的なhttpプロトコルや院外などと連携でき,その際にはセキュリティ面に優れた通信を利用する。

2.スタティックワークリスト・ダイナミックワークリストフォルダ管理
IDS7 PACSのワークリスト管理では,各自の運用環境で設定したフィルタリングフォルダ機能による一元管理ができる。これは,循環器領域にまつわる血管造影,超音波の動画,マルチスライスCT画像,心臓MRI画像などの時系列による一元管理はもちろん,限定公開機能を用いたカンファレンスフォルダ管理,あるいは学会発表向けなどのティーチングファイルも同様に利用できる。

3.クリニカルアプリケーション
IDS7 PACSは,多様な臨床ツールを利用し業務の効率化を実現できる。目的に応じた多彩なクリニカルアプリケーションツールで,さまざまな診療科医をサポートする。特に循環器分野においては,各種クリニカルアプリケーションを準備しており,世界的に心血管領域で定評のある血管解析機能(QCA,QVA),左心室解析機能(LVA,LVA Biplane),右心室解析機能(RVA)を提供している。またRSNA2010で発表された“IntelliSpace Portal(インテリスペース・ポータル)”は,ワークスペース上でCT,MRI,核医学(NM/PET)といった,マルチモダリティイメージングシステムを扱うことができる。すべてのPC上で高度な解析を臨床医に提供し,循環器領域においても,モダリティから複数の画像を利用することができる(図1)。

図1  IntelliSpace Portal(参考) 各モダリティで撮影した情報をもとに,循環器を含む各臨床科で,いつでも,どこでも高度な解析が可能である。
図1 IntelliSpace Portal(参考)
各モダリティで撮影した情報をもとに,循環器を含む各臨床科で,いつでも,どこでも高度な解析が可能である。

4.非DICOM画像の取り込みインターフェース
DICOMに対応していない内視鏡や超音波などからのJPEG等(静止画)や,MPEG(動画)画像をDICOM形式へ変換し,画像管理サーバへデータをアップロードするサービスにも対応している。また,紹介状や承諾書などの紙情報をスキャナーで取り込んでJPEG画像として保管してあれば,DICOM変換して検査画像とともに一元管理することができる。そのほか,病理,歯科の口腔内画像なども同様に利用することができる。

5.iReportシステム
「iReport」を組み合わせることにより,IDS7 PACSの画像診断用ワークステーション「IDS7ワークステーション」とシームレスに連携が可能になる。ワークステーションの操作と読影レポートシステムが一体化し,直観的な操作により,詳細かつわかりやすい読影レポートが短時間で作成できる。作成された読影レポートは,病院内だけでなく,病・病,病・診連携においても,デジタル化によって迅速に読影診断結果の配信が可能になり,遠隔地においても診断の効率化が図られることから,画像診断を強力にサポートできる。

■循環器総合情報管理ソリューションXcelera

Xceleraのプラグイン(オプション)は,多様な構成にも柔軟に対応し,スケーラビリティとカスタマイズ性に優れ,循環器系のX線検査,超音波検査,核医学検査,MR検査,生理学的検査などに対応している。さらに,システムを拡張することにより,一部の心電図マネジメントシステムからXceleraに心電図を取り込むことができる。検査結果と表示レビューに必要な機能も備えている。そのほかのオプションとして,さまざまな解析/定量化パッケージや,臨床レポート作成/アーカイブ保存機能も用意している。
フィリップスの循環器画像情報管理システムXceleraを構成する重要なコンポーネントの代表例の1つが,心血管エコー用モジュールである。ワークフローの効率化を目的とした心血管エコー用モジュールでは,画像・情報管理に対して,患者中心の包括的なアプローチが可能である。また,これまで以上に高い統合性と,臨床での検査効率の向上を重視した設計を備えている。

1.最新の心血管エコーにおける計測の効率化
Xceleraの高度な計測ツールを使用して,計測および結果,編集,削除ができる。また,既存の計測値や計算値のラベルを検査室の標準ラベルに変更でき,検査室ごとの正常範囲値を挿入することもできる。これらの情報は,自動的にXceleraのデータベースに反映され,結果が臨床レポートに表示される。Xcelera(最新QLAB 8.1)と「iE33」による先進の2D/3Dエコー評価データの統合は,レポート作成の効率をさらに高める。また,標準的な臨床のワークフローに先進のエコー評価が生かされるように,Xceleraは,QLABから画像クリップ,計測値,計算値を受け取り,保存する機能を備えている。事前に設定することで,QLABアプリケーションで実行された計測が,Xceleraのデータベースに自動転送され,ワークエリアや臨床レポートで使用できるようになる。この計測値の自動転送によって,レポート作成が効率化される。

2.最新のQLAB解析ソフトウェア
・2DQ Ultrasound Quantification:心臓用2D評価
・CMQ(Cardiac Motion/Mechanics):心臓機能解析評価
・IMT(Intima Media Thickness):内中膜壁厚評価
・ROI(Region of Interest):関心領域内輝度,カラー評価
・SQ(Strain Quantification):TDIによるStrain評価
・3DQ Ultrasound Quantification:心臓用3D評価
・3DQ(Cardiac 3D):心臓用3D評価のTrue Volume
・3DQA(Cardiac 3D Quantification Advanced):心臓用 3Dアドバンス
・MVQ(Mitral Valve Quantification):僧帽弁評価
・CMQ Stress Ultrasound Quantification:心臓機能ストレス解析評価

■導入メリット(図2)

図2 院内における統合管理ソリューションおよび地域連携サービス
図2 院内における統合管理ソリューションおよび地域連携サービス

1.連携
電子カルテ,オーダリング,RISなどから,一元管理されたデータを,院内のどこの他システム端末からでもデータ連携・参照が可能である。

2.効率化
デジタル化によるワークフロー改善はもちろん,IDS7 PACSやXcelera,iReportを組み込むことにより,画像データや紙などの情報をもとに数値化・統計化の管理ができ,いままで数値化しづらかった部分までさらなる改善をすることができる。

3.発展し続けるクリニカルサポート
フィリップスは,世界有数のモダリティメーカーである。IDS7 PACSを導入することにより,クリニカルアプリケーションインターフェースを利用し,複数の最新クリニカルアプリケーションと連携することで,臨床解析等が常に利用できる環境にもなる。

4.統合管理システム
PACSデータと統合し,さまざまな放射線科モダリティや眼底カメラなどのデータを1つのシステムとして一元管理ができる。多様な画像を一括管理することにより,院内の汎用画像管理が煩雑になることを防ぐことができる。また,さまざまな検査を時系列表示できる。

■今後の展開

医療分野における情報デジタル化の重要性はさらに高まるものと想定され,フィルムレス化により,ますます運用効率重視のシステムが必要不可欠な時代になる。
iReportは,オランダ本社から国内開発を許可されたシステムであり,今後の開発計画として,循環器領域をも見据えている。また,膨大なデータ量を持つ過去の患者データをみすみす捨てるわけにもいかない現状もある。現在フィリップスでは,最近話題のクラウドサービスに関しても,過去データの保管だけではなく,院内,院外問わず医療業務のさらなる運用効率化,システム高速化,セキュリティ強化面などでの課題解決をめざしている。