シーメンス・ジャパン株式会社

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特別企画

Images, my way.

画像診断ワークフローを新境地へと導くsyngo.viaのさらなる進化
ボリュームデータをスマートに有効活用するためのシーメンスの答え

iPad

●“Auto Processing”“Accessibility” “Anytime, Anywhere”がコンセプト

新しい発想から生まれた画像解析処理システムとして,2009年の北米放射線学会(以下,RSNA)で話題をさらった,シーメンスの「syngo.via」。日本では,2010年の国際医用画像総合展でお披露目され,来場者の注目を大いに集めた。それから1年,着実に国内のユーザー数を増やしており,画像診断のワークフローを大きく変えようとしている。さらに,ユーザーからの声を反映しつつ機能の強化を図り,2010年のRSNAでは,新しい機能であるWeb Optionが紹介された。本レポートでは,syngo.viaのさらなる進化に迫った。

マルチスライスCTやMRIの多チャンネルコイルの実装と高分解能化により,画像診断におけるデータ量は飛躍的に増大している。それに伴い検査・読影などの業務量も増えており,スタッフの業務負担を軽減し,より快適な作業環境を提供することが医療機関にとって課題となっている。一方で,フィルムレス化の進展によって,施設内の読影・参照環境は様変わりし,医療機関には効率的かつ速やかに画像データやレポートを配信することが求められている。
このような課題に対する答えとしてシーメンスが世に送り出したのが画像解析処理システムのsyngo.viaだ。RSNA 2009で大々的に発表され,参加者の注目を集めたこのシステムは,“Auto Processing” “Accessibility” “Anytime, Anywhere”をコンセプトに,検査オーダの発行から読影,そしてレポートと画像の配信までの一連のターン・アラウンド・タイムを最短にすることをめざして開発された。まさに3つの頭文字をとった“トリプルA”,つまり最高ランクのシステムになりうる可能性を持っている。

1.Auto Processing
“Auto Processing”とは,さまざまなモダリティの画像処理アプリケーションを集約して管理するサーバ側で,検査オーダや画像受信のタイミングに合わせて自動的に解析処理を行い,最適な画像を瞬時に表示させることを意味する。具体的にはIHEのPost Processing Workflowに基づいてRISと連携させることで,検査オーダを受けるとサーバ上で画像解析処理の準備を始める。そして,検査後に画像データを受信すると直ちに,割り当てられた最適な処理アルゴリズムによって,画像解析が行われるというロジックである。
これによって,ユーザーは複雑な作業でかなりの時間をかけずとも,クリックだけで求めていた画像を容易に得ることが可能となり,業務効率を大幅に向上できる。

2.Accessibility
“Accessibility”は,モダリティや医療情報システムとの親和性の良さを表している。syngo.viaではシーメンスのモダリティに対応した撮影プロトコルを事前登録する機能に加え,"Direct Image Transfer"技術によって膨大なボリュームデータであっても,高速な画像受信が可能である。
さらに,検査内容に応じたレポートテンプレートが用意されているため,RECISTやWHOのガイドラインに沿った腫瘍などの計測結果が自動入力され,それがDICOM SRやHL7メッセージによって,電子カルテシステムやDWH(データウエアハウス)などとシームレスに連携して参照できるようになっている。これにより,読影効率を上げるだけでなく,情報の共有化や臨床研究のための情報検索を行える環境に貢献できる。

3.Anytime, Anywhere
“Anytime, Anywhere”は,まさに,いつでも,どこでも読影・参照が可能なことである。syngo.viaはDICOM,HL7など業界標準規格に準拠しているため,CT,MRI,PET・CTから生成される画像は,当日検査のみならず過去やほかのモダリティの画像とボリュームデータを使って比較読影ができる。当然,PACSと連携して,PACS側のさまざまな画像データとの比較も可能だ。
また,IHEのPIR(Patient Information Reconciliation)にも対応しており,電子カルテシステム側からの患者情報の更新に対しても,即時対応可能となる。これにより,電子カルテシステムやRISなどの端末をシンクライアントとして利用し,必要なときに,すぐに施設内のどこから*1でも,正確な情報をもとにsyngo.viaで自動処理された画像を表示可能にしている。放射線科医や診療科の医師はすぐに必要な画像が得られるだけでなく,診療放射線技師にとっても適切に3D解析処理が行えているかをスピーディに確認できるようになった。これらは業務効率を上げるために非常に有効である。

syngo.viaを活用した画像診断ワークフローイメージ
syngo.viaを活用した画像診断ワークフローイメージ

●増大する検査・診断の業務負担を軽減

山本宣治 氏 PACSとも3Dワークステーションとも異なる新しいカテゴリのシステムとして位置づけられるsyngo.viaは,具体的にこれらのシステムとはどう違うのか。シーメンス・ジャパン(株)イメージング&セラピー事業本部SYNGOビジネスマネージメント部部長の山本宣治氏は,次のように説明する。
syngo.viaは,thin sliceデータなどの臨床的に優位性のあるボリュームデータの最適な解析処理とナビゲーション操作を提供することにフォーカスしたシステムです。他システムと連携することを前提にOn-Line Short Term Storageシステムとしてサーバサイドで画像データとその処理を行うアプリケーションとをハンドリングする点が,電子保存の3原則に基づいて画像を管理するPACSとは根本的に異なります。また,3Dワークステーションとの違いは,極力マニュアル操作を省き,精度が高く最適化された画像を自動的に解析処理する点です。これにより,診療放射線技師や一部医師の業務負担を軽減し,ボトルネックとなりうる画像解析処理時間の短縮を図るところにねらいがあります。もちろんすべての自動処理がパーフェクトということはあり得えませんから,マニュアルによる高度な編集操作が必要なケースは残ります。しかし,全体業務の90%以上が自動化されるとなると,相当な業務軽減になることは間違いありません。また,syngo.viaはDICOMのほとんどのSOPクラスに対応しているため,一般撮影,血管造影や超音波などのsyngo.viaに直接関係のなさそうな画像であってもPACSから取得して表示できますから,まさにマルチモダリティ対応のシステムとなります」
このように,PACSと3Dワークステーションを補うシステムとしての一面を持つのがsyngo.viaの特徴でもある。そのため,既存のPACSや3Dワークステーションをリプレイスするのではなく,これらのシステムに追加する形で導入し,組み合わせて使用することで,画像診断ワークフローの効率化を実現するものだと言える。

RSNA 2010でも大々的にsyngo.viaがPRされ,iPadでのデモンストレーション(右上)やタッチディスプレイでのコンセプト説明(右下)が行われた。
RSNA 2010でも大々的にsyngo.viaがPRされ,iPadでのデモンストレーション(右上)やタッチディスプレイでのコンセプト説明(右下)が行われた。

RSNA 2009での発表以降,全世界ですでに600を超える医療機関から受注があり,syngo.viaによる画像診断ワークフローの変化に期待を持っている,あるいは体感しているという。日本国内でも導入施設は増え続けており,大学病院などの大規模病院から中小規模病院に至るまで幅広く採用されている。
山本氏は,「syngo.viaを特に高く評価してくださるのが,検査件数,読影件数が増加しており,画像解析処理を待つ時間の余裕があまりないご施設です。読影する放射線科医はもちろんのこと,循環器科をはじめとした各診療科の医師からも満足していただいています。さらに,長年3D画像の作成にたずさわっている診療放射線技師からも,“syngo.CT Coronary Analysis”“syngo.CT Vascular Analysis”などのアプリケーションが高精度で,高画質に自動処理を行っていると,高い評価をいただいています」と述べている。また,山本氏は,ターン・アラウンド・タイムを短くするというsyngo.viaのメリットが,救急領域でも生かされていると説明する。検査から診断,治療までを速やかに行わなければならない救急医療の現場だけに,導入施設の中では,検査後すぐに3D画像が自動的に作成されることから,重要な役割を担うツールとして欠かせない存在になりつつあるという。
このように,画像診断ワークフローを変える力を持つsyngo.viaであるが,経営の観点からも効果を期待できる。2008年度の診療報酬改定では画像診断管理加算2の大幅な増点と,冠動脈CT加算,心臓MRI加算が設けられ,2010年度改定では救急領域での全身外傷CT加算が新設されている。医療機関は,syngo.viaを上手に活用していくことによって,放射線科医や診療放射線技師の業務負担を極力抑えつつ,これらの加算を算定することが可能になる。

●クラウドを見据えた2つの新機能 WebReport とWebViewer

医療機関への導入が進むsyngo.viaであるが,シーメンスは開発の手を緩めない。RSNA 2010では,これまでのユーザーの声を生かすとともに,クラウドやモバイルデバイスなどのICTの技術進歩に合わせて機能を強化し,2つの新たなアプリケーションが発表された。
その1つが,“syngo.via WebReport”である。これは画像参照ソリューションとして位置づけられるもので,syngo.viaで画像解析処理された画像や放射線科医が作成した読影レポートのみならず,対象画像をサーバサイドで再度MIP,MPR,VRといった3D処理をさせることで,ネットワーク上にある汎用のノートPCやアップルのiPad,iPhoneなどのデバイスから参照する*2ことが可能になる。
もう1つは,“syngo.via WebViewer”と呼ばれる放射線科医に向けたアプリケーションである。これは,syngo.viaの画像解析処理画像を,離れた場所にいる放射線科医が読影や参照するためのもので,前者のWebReportよりビューワ機能を強化している。
両アプリケーションともWeb技術を用いており,端末やOSに依存せずに使用可能である。また,無線LANや第3世代(3G)携帯電話回線といった通信環境にも対応し,まさにいつでも,どこでもの“Anytime, Anywhere”を発展させている。ユーザーは,syngo.viaに保存されている画像やレポートにアクセスし,iPadなどのデバイスでデータをダウンロードすることなく,サーバサイドで処理させることで読影や参照を行う。そのため,施設の内外から,ストレスを感じることなく速やかにデータを利用できる*1。また,デバイス側にデータを保存する必要がないことから,秘匿性の高い患者情報のセキュアな運用を実現できる。
この2つのアプリケーションを利用するには,syngo.viaの導入が前提となる。導入施設では,ライセンス契約した上で,iPadやiPhoneの場合,アップルのiTunes Storeからアプリケーションをダウンロードして利用することになる。
すでにRSNA 2010で新機能を体感した日本からの参加者から,高い評価を得ている。山本氏は,「iPadに表示しても高画質であり,表示スピードも満足できるという声をいただきました。また,自宅で業務を行いたい場合に便利だといった感想や,出産・育児により休職中の女性医師の人材活用にもつなげられるといった意見もありました」と述べている。IT戦略本部の「新しい情報通信技術戦略」に盛り込まれた「シームレスな地域連携医療の実現」などの施策や,地域医療再生計画が進む中,遠隔画像診断や地域医療連携の場でも,syngo.viaが活用される場面が増えていくことが予想される。

iPadとiPhone用のsyngo.via WebReportの画面例。タッチ操作で直感的に扱え,画像表示スピードのストレスもない。
iPadとiPhone用のsyngo.via WebReportの画面例。タッチ操作で直感的に扱え,画像表示スピードのストレスもない。

●Integrated Healthcareをめざす

今後シーメンスでは,syngo.viaを前面に押し出してビジネスを展開し,同社のモダリティを横断的にカバーして, Integrated Healthcareをめざすとしている。特に近年,同社はオンコロジー領域に注力していることもあり,検査,診断,治療という全プロセスの中で欠かせない存在になっていくだろう。
新たな機能を手に入れたことで,さらに活用の場が広がったsyngo.via。これからも画像診断や画像参照ワークフローを新境地へと導くに違いない。

(2011年2月16日取材)

*1 施設のセキュリティポリシーに則ったネットワーク環境での使用が前提。
*2 iPad,iPhoneなどのモバイル端末は,各医療機関の責任のもとでの使用が前提。

(インナービジョン 2011年4月号転載)