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別冊付録

SessionT:Advanced Technologies

時間分解能:心電同期撮影の時間分解能を考える

能登義幸(新潟大学医歯学総合病院 診療支援部放射線部門)

能登義幸(新潟大学医歯学総合病院 診療支援部放射線部門)

常に動いている心臓のCT検査において,時間分解能は特に重要なポイントである。当院で使用している「SOMATOM Definition Flash(以下,Definition Flash)」は,非分割式ハーフ再構成で75msという高い時間分解能を有し,心臓CTを行う上で,優位性の高い装置である。今回は,心臓CTの心電同期撮影における時間分解能について,その基礎とDefinition Flashの優位性を中心に報告する。

■時間分解能とは

時間分解能とは教科書によると,「1枚のCT画像に含まれる時間的要素」とある。すなわち,シャッタースピードのことであり,冠動脈CTにおいては,特に重要な要素の1つである。
図1は,rawデータから時間分解能を変えて再構成を行った画像である。140msの画像では冠動脈がボケてしまっているが,75msの画像では,しっかり静止した明瞭な画像を得ることができる。
また,時間分解能に影響する因子としては,画像再構成法,ガントリーの回転速度,X線管の数,ピッチ,心拍数などが挙げられる。

図1 時間分解能の比較
図1 時間分解能の比較

■時間分解能を向上させる方法

●再構成法
現在,一般的に用いられている,分割式ハーフ再構成は,複数の心拍から1枚の画像を得る方法で,各心位相からのデータを収集して画像の再構成を行う。この方法は,従来画像より見かけ上は時間分解能が上がるが,ガントリーの回転速度やピッチによって時間分解能が変化し,また,心拍数による冠動脈の位置ズレや,心拍変動による心位相の周期性が損なわれ,結果として画質の低下を招く(図2)。
これを解消するためには,1心拍から1画像を再構成する,非分割式ハーフ再構成が理想的な画像を得る方法であると言える。

図2 時間分解能の向上 分割式ハーフ再構成の利用
図2 時間分解能の向上
分割式ハーフ再構成の利用

●心拍数依存
分割式ハーフ再構成では,心拍数とガントリー回転速度,ピッチによって,得られる時間分解能は変わってくる。これは,撮影する診療放射線技師にとって大きなストレスになる。非分割式ハーフ再構成を用いるDefinition Flashは,心拍数に依存せず,常に75msという高い時間分解能を実現するため,非常に使いやすい装置と言える。

●回転速度の向上
回転速度を上げればシャッタースピードが上がり,時間分解能は向上するものの,view数の低下によって,心臓の描出能の低下や線量不足を生じることもある。回転速度を上げるためには,ハード的な問題をクリアしなければならない。
X線管の数を増やすことで,時間当たりのview数を担保し,短時間で大きな出力を確保できるため,2管球を持つDefinition Flashのメリットは大きい。

■Definition Flashにおける時間分解能

Definition Flashは,ガントリー回転速度0.28s,X線管は2管球搭載(Dual Source),画像再構成は非分割式ハーフ再構成法,ピッチはFlash Spiral Cardio3.4での撮影を可能としており,心拍数にも依存しないため,ストレスのない撮影が実施できる。

●Dual Source CT
2管球による撮影(Dual Source CT)は,90°回転するだけでデータ収集が可能であり,さらには時間当たりのview数の担保,短時間での大出力の確保,分割式ハーフ再構成によるアーチファクトからの開放により,1心拍から高時間分解能の画像を得ることができる。

●2つの撮影モードでの実験
Definition Flashの実際の時間分解能について,Flash Spiral CardioとFlash Cardio Sequenceの2つの撮影モードで実験を行った。
測定方法は,再構成画像ベースでモーションアーチファクトを利用し,心電図同期再構成画像の時間分解能を推定する方法とした1)
Flash Spiral Cardioのon-centerでは,理論値の75msより高い,66msという時間分解能を持っていることがわかった(図3)。
Flash Cardio Sequenceのon-centerでは77msと,ほぼ理論値と同等の時間分解能を有しているという結果であった(図4)。
すなわち,Definition Flashは,撮影モードに依存せず,常に75msという高い時間分解能が担保されていることが確認できた。Flash Spiral Cardioにおいては,ハイピッチスキャンにより,66msという,きわめて高い時間分解能が得られることは特筆できる。

図3 Flash Spiral Cardio(on-center)
図3 Flash Spiral Cardio(on-center)
図4 Flash Cardio Sequence(on-center)
図4 Flash Cardio Sequence(on-center)

図5は,Flash Spiral Cardioで撮影した画像である。心拍数60の1心拍で撮影しているが,高い時間分解能により,冠動脈が明瞭に描出されていることがわかる。

図5 Flash Spiral Cardioによる冠動脈CT(Low HR)
図5 Flash Spiral Cardioによる冠動脈CT(Low HR)

図6は,Flash Cardio Sequenceで撮影した画像である。高心拍数のHR90にもかかわらず,75msという高い時間分解能で,十分な精度をもった画像が得られている。

図6 Flash Cardio Sequenceによる冠動脈CT(High HR)
図6 Flash Cardio Sequenceによる冠動脈CT(High HR)

■off-centerにおける時間分解能

心臓CTについて,教科書には,空間分解能,時間分解能を考慮し,心臓が中心に来るようにセッティングすることと記載されている。空間分解能は理解できるが,時間分解能も本当に変化するのだろうか。
そこで,画像再構成における,on-centerとoff-centerについて検討した。on-centerでは,必要データは180°なので,時間分解能の回転時間は1/2となる。off-centerでは,ずれている位置により,180°以上のデータが必要になる場合と180°以下のデータでよい場合があり,時間分解能はそれぞれ異なる。off-centerでは,一般的には時間分解能は悪くなるが,場所によっては向上する場合もあるということを覚えておく必要がある。
しかし実際は,利用データの重み付けなどを行うことで,再構成画像においては,on-centerとoff-centerで時間分解能にあまり差が出ないのが,シーメンスCTの特徴でもある。
Flash Spiral Cardioを用いてoff-centerで10cmずらして計測すると,平均で67msとなり,on-centerとほとんど変わらない結果となった(図7)。
Flash Cardio Sequenceのoff-center10cmでは平均80msと,ほぼ理論値通りの結果であった(図8)。

図7 Flash Spiral Cardio(off-center 10cm)
図7 Flash Spiral Cardio(off-center 10cm)
図8 Flash Cardio Sequence(off-center 10cm)
図8 Flash Cardio Sequence(off-center 10cm)

■心臓CTにおけるDefinition Flashの優位性

Definition Flashは,撮影モード,撮影部位の面内位置に依存することなく,75msの時間分解能が担保されていることがわかった。
しかし,原則的には周辺部での撮影は,解像度の低下やBowtieフィルタによる線量不足の可能性もあるため,できる限りon-centerでの撮影が望ましい。
Definition Flashの75msという高い時間分解能は,心臓の弁の評価や,高心拍数である小児の循環器領域においても有用と考えられる。

■まとめ

非分割式ハーフ再構成で,75msという高い時間分解能を持つDefinition Flashは,心臓CTにおいて高い優位性を持つ。
さらに,高心拍症例においても,Flex paddingの設定により,Flash Cardio Sequenceでも撮影が可能になる。
今後は,Definition Flashの高い時間分解能を有効に活用し,さらに質の高い画像を提供できるよう努力していきたいと考えている。

●参考文献

1) 兼子武士・他 : Area Detector CTにおける心電図同期再構成画像の時間分解能の新しい測定法. 日本放射線技術学会雑誌, 68・3, 209〜215, 2011.

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